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個営小隊-ランペイジ  作者: カイガラ商店
一章 合流
1/12

1-1、鳥瞰図

のんびりまったり更新していきます。

同じ名前で渋やってましたが、現在失踪中ですのでお気になさらず。

ユーリア、旧大陸の西側の地方を指す。

近世から現在まで文化や経済の中心の地方として君臨している。

豊かな印象からは以外で、秋口から氷点下を記録するほど寒い。

今私が居るのはユーリアの中の覇権国家、ドリズランド帝国北部。風も雪も無いが寒い。

分かるのはこれだけ。

何でここに居るのか、誰かに聴こうとも誰も居ない。○○○○○に話しかけても応えない。

寒い。服が欲しい。○○○や○○○○があるといい。

今できることは歩くこと。遠くに散らばる光に向かって歩くこと。そこには何かがあるだろう。

光のところに町があるなら服を手に入れよう。それから食事だ。ジャガイモを沢山食べよう。あれは現在の市場価格なら相当安く買えるはずだ。なにより調味料で誤魔化しがきくのがいい。

光が近づいてきた。

私の目指していた光は警察車両のフォックスG12、同社の雪原用タイヤのMトールハンマーをつけていた車で、決して町ではなかった。

車が私の近くで止まる。○○○。


「君、○○○○○○○?」


車から青黒い服を着た男が降りてきた。

何かを話しているみたいだけど、わからない。


『こちらノーズ8、放浪しているらしき少女を発見。これより保護する。』


「……保護…」


「○?○○○○○○?」


「………私は…自由………」


そうだ、もう一つ分かることがあった。私は自由なんだ。


「……………君?」


そして、自由を脅かす者は


「………死ね…」



黒い○○○、臭くて大きいけど、あったかい。



「………この値段じゃ、卸すことは無理ね。」


木の箱の上に紙とペンを投げ、対面する男を睨む。それだけで男は肩を震わせておどおどしはじめる。最初の威勢はどこに行ったのやら。

老舗?由緒ある?共和国一?ここは市場だ。価格交渉は当たり前だし、この程度で脅えていてはまともな買い物なんて出来やしない。特に初めての者はふっかけられて当然、そんな真剣勝負の世界だ。

とどめに、この市場の人間は権力を嫌い、特に他人の威を借りてるような奴は医師でも投げつけんばかりに敵視する。

このびくびくした男は自分のキャリア位しか自慢できる物も無いのだろう。それならそれだが、この男の場合それすらも怪しい。


「こっちだってねえ、商売なの。生きるためにやってるのよ。あんたと違ってプライドを守るためにやってる訳じゃ無いの。」


ハーカープ=ロンケネス=アリーシャ。一応貴族の血は引いているのだが、その家系が舞踏会より農作業といった、どちらかというと富農な家計である。国家から正式な貴族の認定もされているのに、こうして当主が農作物を市場で売りさばいている。


「ぷ…プライドなど………それに、我々へ提供していただく事はあなた方へのメリットに…」


ドンッ!


「ひいっ?!」


突如市場に響く轟音。男は飛び跳ね驚くが、市場内にはどよめきすら生まれていない。

その音はアリーシャが床を蹴りつけることで生まれた音で、よく見ればコンクリートの床にひびが入っているのが確認できる。


「あらー?何か言ったかしら。気のせいかしらー?」


「おいおい、老朽化してるから力加減には気をつけろよ!」


市場に響く下品な笑い声。市場のあらゆる方向から、男を蔑むように、わざとらしく大きく笑う。

男は死人のような白い顔になり、後ずさる。


「アリーシャ!!持ってきたよ!」


女性にしては大柄な、ガテン系で髪を後ろに流したウルフヘアの女性が、突然横からアリーシャに飛びついてき来た。犬のように頬を擦り付け引き剝がそうにも離れようとしない。


「あらありがとう。今週は根菜が主食ね。」


抱き着く彼女のポッケから紙を抜き取り買ってきた食材のリストを確認するアリーシャ、この市場での買い物の記録だ。達人の一筆のような字で書かれており、目の肥えていない者では理解できないだろう。


「ところで………さっきまで話していた人は?」


「帰ってもらったわ。そんなことより手伝ってちょうだい。」


どうせ我慢が出来なくなり、尻尾を巻いて逃げたに違いない。軟弱者が。



落ち着いた白塗りの小さな店。この国の伝統的な家屋の作り方で、構造の柱が壁に浮き見えるのが特徴的だ。

店内の食事用の机には淹れたてのコーヒーと、棒状の見慣れない菓子が皿に置かれている。

長さ二十センチ、缶コーヒー程の太さの棒状のそれに大きくかぶりつく。香ばしくも甘い香りは鼻腔から食欲を掻き立て続ける。その食欲に抗いもせずに歯を立てる。

クッキーのような表面の生地はその下の柔らかなガトーショコラの層を咀嚼するときにほどよい食感を残す。サクサクとした食感の後にはしっとりとした深い甘みのチョコの味が広がり、頬を緩めるのを止められない。


「どうだい?俺の自信作だぜ。」


店のレジの斜め前に用意されたテーブルに座り身の丈ほどの長髪をポニーテールで纏めている女性が、ロングスカートのいわゆる正統派メイド服のショートヘアの少女にドヤ顔で話しかける。少女は無邪気な満面の笑みでそれに答える。


「…クレイスの作る物は食べる人への創意工夫がなされていて、おいしいだけでなく楽しいです。」

「ん…ありがとな。」


向けられた笑みとベタ褒めの言葉に一抹の羞恥を覚えて、頬をかく。自分からどや顔して自慢しておいてべた褒めされて照れるならしなければいいだろう。

カウンターとテーブル越しだが、二人の黒髪と黒目のせいか姉妹のようにも見える。エプロンとメイド服というどちらも家事のための服装をしているせいかもしれない。

しかし、二人の間にあるむせ返りそうな甘い空気がそれを感じさせない。


「これは新商品になるのですか?」


「いいや。これはハークのために作った物だから……その…あまり………なあ?」


だから照れるならやらなければいいのに。


「…………好きですよ。」


「っ~~………」


案の定精神的な攻撃を食らっている。ただダメージは痛み分けのようだが。

二人とも互いの顔を直視できず、ただ顔をうつむかせるだけで、時計の秒針だけが空気を支配していた。


「……開店準備、しましょうか?」


「お…おう。」


二人とも顔を赤くしながら無言でテーブルの清掃など開店準備を進める。時折、ほほえみを交わしながら。

リア充爆発しろ。




大きく息を吸い、ゆっくりと吐き出す。

自然の氣を全身に、指先、毛先の一端にいたるまでに張り巡らせる。吹き付ける風と同化を目指す。

何度も繰り返し……

大地の氣が乱れた。


「っせあ!!」


刀を発現し、手のひらに収まる鞘から白銀の刀身を波打つ風に逆らう。

─風を統べる燕の詩─燕詩

振り切った切っ先から空気が巻き、とぐろを巻き目の前の木に巻き付く。


「………お見事。」


「お粗末様です。剣舞は見よう見まねですが合ってますかね?」


巻き付いた空気は霧散し、木の幹に蛇の這う跡を残していった。あたりには飛び散った木の皮が

その技を繰り出した彼女は理解していないが、横から見ていた同胞の少女はあきれていた。


「魔剣とはいえ技術だけで遠距離の攻撃は凄いね。」


白銀に輝く刀身からは湯気のように空中に霧散する白い靄。魔剣特有の特徴で使用者の魔力を刀身に宿し、魔法のような現象でこの世界に干渉することができる。しかしそれ以外にも絵会を構成する力は存在し、今の技にはその一つの氣を使用している。


「遠回しに剣舞のことを否定しましたね…。」


「どう見ても攻撃手段でしょ。そもそも剣『舞』だからね?躍らないの?」


横から見ていた少女はその場で適当に踊るが、刀を持つ少女は俯くだけで動かない。鞘に納めた刀を真っ赤になって抱きしめている。


「義輝、壊滅的にへぢってるんだっけ?」


「へぢっ…?!」


「たしかー?踊ろうとしたらころんでー?その時のにー?」「尚美!!からかわないでください!!」


狭い森の中で刀を振り回そうが、枝葉に邪魔をされてからかうその姿に一撃を叩き込むことはできない。

二人は鬼ごっこをするように、森の闇へと消えていった。




───ああ、この町はとても愉快だ。

市場で、町外れで、森で、とても愉快なことが起きている。リア充も居るけどな。

それ以外にもお客さんや、他の住民達が様々な物語を描いていく。

私は空からそれを眺め、楽しんでいる。

私は長いこと生きているがこれほど愉快な事はそうそうない。

さて、次はどうやって楽しませてくれるのかな?


シャリシャリ

なんの音だろう、リンゴをかじる音のような気がする。

それにほのかに甘い香りも……ん、本当にリンゴだ。

シャリシャリ、シャリシャリ

目の前は真っ暗なのにどこから聞こえるんだろう。もしかして夢か?体も動かないし、うん夢だ。

ユメニチガイナイ。


「残念、夢は夢でも正夢よ。……あれ、ちょっと意味が違うかしら。」


正夢だって、じゃあ目が覚めた後にこの体験が現実の物になるのか。少し怖いな。

さっきだって醜態を晒したばかりだというのに、次は怖い目に合わされるのか。


「あら、怖いのかしら?」


ああ、暗闇の中で動けないのは怖いな。今は夢だからそこまでではないが、実際に起きたらこうして話していられないぐらい震えていたと思う。


「なら目を開けなさい。」


目を開けたくても開けれないんだ。縫い合わされたみたいにびくともしないんだ。


「そう、なら開けられるようにしてあげる。」


目に多少の痛みが走るが、瞼が開くようになる。

が、かすんで目の前がよく見えない。暗い、森の中か?あの町の近くに森があるようだが、もしかしたらそこかもしれない。


「こっちよ。」


声のする方に目を動かすと、黒いマントと褐色の肌をのぞかせる際どい水着のような女性が立っていた。その手にはかじりかけのリンゴがあり、今も食べているようだ。さっきの音は彼女のリンゴを食べる音だったか。


「食べてみる?美味しいわよ。」


みずみずしい果肉に艶のある皮、何より辺りに漂う甘い香りから食べずにもその美味しさは伝わってくる。

そうだ、再来週は新料理の開発会議があったな。それの試作用に数個持って帰ってもいいかな?


「ええ、採れるのなら、ね。」


なるほど、これはまた。

ああ、愉快だ。


誤字脱字はあると思いますが、脳内保管お願いします。

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