表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹の婚約者がどう見ても被害者なので、逃げ道だけ教えておきました  作者: ちょこだいふく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/11

5.エドガーは謝るのが癖

エドガーが自宅の屋敷へ戻ると、ちょうど父が応接間から出てきたところだった。


「おかえり」


「ただいま戻りました」


「今日はどうだった?」


いつもの問いだった。

エドガーは反射的に答えようとする、だが


「……はい」


ほんの一瞬だけ、言葉が止まった。


「うまくやっています」


父がわずかに眉を上げる。


「ん?どうかしたのか…?」


「いえ、なんでもありません、大丈夫です」


父は数秒だけエドガーを見つめ、それから笑った。


「そうか」


肩を軽く叩く。


「伯爵家との縁は大事にしなさい。」


「……はい」


「波風を立てないことだ。」


「……はい」


「お前なら大丈夫だ。」


その言葉を残し、父は仕事部屋へと戻っていった。



廊下を歩くと、今度は母と鉢合わせた。


「あら、お帰りなさい。」


「ただいま戻りました。」


「リリア様はお元気?」


「はい、お元気そうでした。」


母はほっと胸を撫で下ろした。


「良かったわ。」


「繊細で可愛らしいお嬢様ですもの。」


「大切になさいね。」


「……はい。」


「女の子を泣かせちゃ駄目よ。」


「……はい。」


母は満足そうに微笑んだ。


「頑張るのよ。」



部屋へ戻ろうとすると、今度は兄が壁にもたれていた。


「おー、お帰り。」


「兄上。」


「どうよ、伯爵家」


「問題ありませんよ。」


「いいなぁ。」


兄は笑う。


「実質玉の輿じゃん。」


「格上貴族に婿入りなんて大出世だな。」


エドガーは曖昧に笑った。


「うまくやれよ。」


「……はい。」



自室へ戻り扉を閉める。

静かだった。

ようやく一人になれた。


机へ向かい、領地収支の報告書を開く。

数字を追うが頭に入らない。

ページをめくるがやはり入らない。


その代わりに


「貴方が謝る必要はどこにありました?」


あの声だけが、何度も頭の中で繰り返されていた。


——自分が謝れば、その場は収まる。


そう思ってきた。

だからすぐに謝ってきた。

悪いか悪くないかなど、考えたこともなかった。

いや、考える必要がないと思っていた。

そうしてきた方が丸く収まる。

そう教えられてきたから。

それでいいのだと、疑いもしなかった。


なのに。


『貴方が謝る必要はどこにありました?』


たった一つの問いが、頭から離れない。

答えようとするけれど答えられない。

なぜだろう…なぜ。今まで、一度も考えたことがなかったからだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ