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浄弓の巫女サクヤ 〜里の因習なんて無理なので御神力を使って鬼を倒しに行きます〜  作者: 一角獣
第2部 進化〜進撃の巫女姫〜

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御力の付与

おはようございます

 鬼防寮の中にあって、最も馬術が上達したのはサクヤではなく左馬介だった。

 何より左馬介は馬術が好きだった。

 赤犬の社では馬を扱うことがないため、旅先で見かけた時は羨望の眼差しで見つめていたこともある。


 左馬介にとって最高の機会を得たこともあり、好きが高じて兎に角練習した。当然馬の疲労も考慮して乗り換えながらであったが、ずっと憧れだった乗馬ができる喜びの方が勝り、自身の尻の皮が剥けるのも気にしなかった。


「そろそろやめてやれ。馬が可哀想だ。」

「そうですね。」

「しかし、そんなに楽しいか?ずっと顔がニヤけてるぞ。」

「えっ?!そんな顔してますか?」

「ああ、千代が「キモい」って言ってた。」

「うっ…。」

「冗談だ。千代も負けまいと精を出してるよ。」

「小平太さん…。」

「悪い悪い。しかし、好きこそものの上手なれとはよく言ったものだな。本当に上達が早い。」

「ずっと憧れていたんです。まさか自分が馬に乗れる日が来るなんて思っていなかったので、サクヤさんの好奇心と行動力には感謝しかありませんよ。」

「そうか、俺は程々にして欲しいがな。」

「出た!程々ジジイ。」

「おい!」

「すみません。でも気持ちはわかります。サクヤさんの移動能力が上がるということは、俺達に求められることも増えますからね。でも、やり甲斐がありますよ。」

「そうか。俺だって結局はほっておけないんだから、とことん付き合うしかないからな。俺も負けてられないな。」

「じゃあ、目標は騎乗槍ですね。」

「ぐっ…。この短期間でできるようになるとは思えんが…。」

「流石にそこまでは。あくまで将来的にですよ。」

「…あぁ、がんばるよ…。」




 サクヤ達が龍神社に戻ってきた。サクヤがいつになく緊張した顔をしていたので、出迎えた方にも緊張が走る。


「随分険しい顔をしているが、何かあったのか?」

「いや…、サクヤがな。日輪大社の宮司が気に入らなかったようで、機嫌が悪い。」

「また喧嘩を売ったのか!?」

「いや、お互い笑顔で睨み合っていただけで、どうということはないのだが。まぁ、相性が悪いのだろう。」

「そんなことはどうでもいい。左馬介、ちょっとひとっ走り赤犬の里まで戻って、浄化薬をあるだけ貰ってきてくれないか?今乗っている馬は買い取るから乗っていけばいい。」

「いいんですか?わかりました。」

「あぁ、どうせ全員分手配するつもりだ。ついでに国府に寄ってこないだの礼に馬を寄越せと言ってこい。」

「そ、それはちょっと…。」

「左馬介、気にするな。今のサクヤは機嫌が悪いから適当なことを言っているたけだ。」

「わ、わかりました。では行ってきます。」

「あっ、そうだ。社に伝言がある。こちらの滞在が白銀童子討伐まで延びることと、馳遊馬が訪ねてきたらコチラに来るよう伝えてほしい。」

「委細承知しました。」


 左馬介は馬を買って貰えた喜びでニヤけたまま出発した。


「キモ…。」

「千代…、それは酷くないか…。」



「さて、蒼衣殿。社に火薬はありますか?」

「はい。12個分あればいいでしょうか?」

「そうですね。調合と製造はお任せしても?」

「はい。得意な者達がいますので。お任せください。」

「火薬って、今度は何をやらかす気だ?」

「鬼から逃げる為の道具だ。有効なら退治にも使えるだろう。」

「鬼から逃げるのに…火薬?焙烙玉でも作る気か?」

「似たようなものさ。さて、後は職人達に任せて、我々も鍛錬に励もう。」



 その後数日間サクヤ達は馬や集団戦術の稽古に励んだ。時々龍神社の山兵と模擬戦などもしたが、同数対戦ならほぼ負けなしだったので、龍神社側がかなりムキになっていた。


 その合間に輔殿と社とから馬を各2頭と3頭を譲り受けることが決り、左馬介に買った1頭と、事前にサクヤが貰った龍馬と合わせて6頭(社から貰った3頭のうちの1頭が龍馬)にもう1頭追加で購入して鬼防寮全員分を確保した。


「予算超過だ…。宮司になんと言い訳するか…。」


 頭を抱える藤十郎にサクヤが声をかけた。


「そこは心配いらないさ、藤十郎殿。今から私と千代とで龍神社の山兵の武具に御力を籠める。有料でやるのでそれなりの利益になるはずです。模擬戦でコテンパンになった原因を、それとなく武具の御力のお陰と宣伝しておいたので、希望者が殺到するでしょう。」

「…そんなことが…。いや、背に腹は代えられぬか。しかし、力量は大丈夫なのか?」

「数日間に分けてやればどうということはありません。私も千代も力量は多いですし、どうせ夕餉前には使い切るようにしているのですから。籠める先が変わるだけで、黒曜石を用意しなくていいぶん助かるくらいです。」

「…其方といると、御力がなんとも軽い扱いになるのだな…。」

「力量の増やし方を御存知なのですから、言わんとせんことはお判りになるはずですが。」

「いや、判っていてもこれまでの常識から中々抜け出せぬのでな。」

「私に言わせれば、破魔の矢に籠めるのも武具に籠めるのも同じですから。試しに藤十郎殿もやってみたらいかがです?まずは御自分の脇差にでも。やり方は破魔の矢と同じです。」

「…やってみるか…。」


 藤十郎は脇差を抜くと刀身の背側に手を当て、御力を籠めてみた。


「できると信じてくださいね。なんなら目を瞑って破魔の矢と思い込んでみたらいいと思います。」

「破魔の矢…これは破魔の矢…。」


 藤十郎は目を瞑り、呪文のように唱える。


「そうです、籠まってますよ。その調子です。」


 藤十郎は脂汗を流しながら籠め続ける。


「そのくらいで十分でしょう。ほら、できたじゃないですか。」

「本当に出来たのか…。確かに力量は減ったが。破魔の矢とは比べものにならないくらい疲れた。」

「それは鏃と刀身では大きさがかなり違いますからね。それでも空になっていないのは、力量が増えている証拠です。」

「そうか…。増えているのだな。この歳でも本当に増えるのか…。不思議なものだな。」

「では、馬代稼ぎには藤十郎殿と伊都にも参加して貰いましょう。いや、今の要領なら全員参加でもいいかもしれませんね。」


 サクヤが不敵に笑うのを見て、藤十郎はこの先数日はこき使われることを覚悟した。


 結局、猿丸も含めて全員にやり方を教えて、全員できるようになった。



「納得が行きません。」


 千代が不貞腐れている。


「千代には、何か考えておくよ。正直、こんなに上手くいくとは思わなかったんだ。」

「でしたら、サクヤ様が私に何かを授けてください。」

「…あのねぇ、私は神様じゃないんだけど。」

「…サクヤ様ならできそうな気がしますし、サクヤ様に授けたと言われれば、なんでもできる気がします。」

「そんな無茶な…。」


(…千代は御力の理に気付いているんじゃないだろうか?いや、自分で悟ることができるかも…。)


「千代の言うこともわからないではないな。サクヤにかかれば御力なんて全部一緒って言って、何でもできそうな気がするもんな。」

「無茶を言うな。」


(武具への御力籠めは破魔の矢と変わらないっていうのは、何となく言わんとせんことが分かるから皆抵抗なかったのと、実際にできているのを見せられたことが大きいのだろう。いくら私が出来ると言っても、流石に空は飛べないだろうなぁ。そう考えると、千代は私が言えば頭から信じてやってしまいそうだな…。なんせ、あの高さから落ちて助かったという経験をしているのだから…。)


「因みにだが、千代はどのような御力を身に着けたいのだ?」

「はい!私も禊祓ができればと思っています。」

「禊祓か…。千代は穢れや邪気、呪力は感知できるか?」

「いえ。ですからそれも含めてできたらいいなと思っています。」


(これは難しい…。私でも理屈が判っていない。感知できるできないは感覚的なもので、説明のしようがない。禊祓だけなら…いや、これもどうだろう?訓練次第で移動させるくらいはできるか?)


「う〜ん、ちょっと考えてみる。少し時間をくれ。」

「分かりました。」


(これは神様に血の記憶として刷り込んでもらうしかないんじゃないか…。そうなると何方に頼むかが問題だな。ハクリ様…は流石に図々しいか…。

 

 そういえば、コトハ様からの御礼を貰っていない。私の代わりに千代に授けて貰うってありなのかなぁ?)



「よし、聞いてみよう。」

「誰に何を聞かれるので?」

「ん、あ、いや何でもない。」

「なんだか変ですよ、サクヤ様。」

「サクヤが変なのはいつもだろう。」

「…小平太、今日は力量が空っぽになるまで籠めてもらうからな。」

「す、すみません!」


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