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浄弓の巫女サクヤ 〜里の因習なんて無理なので御神力を使って鬼を倒しに行きます〜  作者: 一角獣
第2部 進化〜進撃の巫女姫〜

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大社の宮司

おはようございます

 翌日からは鬼防寮全員で馬の稽古に励んだ。

 サクヤは龍馬に跨り稽古に勤しむ。龍馬はサクヤの上達ペースに合わせることができる、優秀な馬だった。

 

「流石サクヤ様ですね。あっという間に普通に乗れるようになりました。これなら普通の移動なら問題ありません。」

「蒼衣殿の指導がよいのでしょう。あと、龍馬が上手く導いてくれています。」

「相性が良かったのでしょうね。」


 鬼防寮の他の面々も3日もすれば移動する程度には乗りこなすことができるようになっていた。

 一番悪戦苦闘していたのは伊都だったが、なんとか速足程度なら乗れるようになった。



 乗馬を習い始めて数日経った頃、将軍からの使いがやって来た。


「会合は国府だそうです。全員で行くこともないでしょうから、私と藤十郎殿で良いでしょう。」


 情報収集も兼ねて猿丸もついてくることになり、残りの者は引き続き乗馬の稽古となった。



 稽古も兼ねてサクヤ達は国府まで馬で行くことにした。会合には蒼衣と蒼士郎も同行する。


「上達が早いな。」

「まだまだです。騎乗弓ができるようになるのが目標ですから。」

「それはまた…。だが、其方ならやってのけるだろう。まだ若いしな。」

「年寄のような物言いですね。蒼士郎殿もまだ若いでしょう?」

「いや、始めるのは早い方がいいというだけの話だ。」

「その通りですな。にも関わらず、私にまでやらせるのは…。流石にキツいぞ、サクヤ。」

「藤十郎殿もまだまだ若いですよ。随分上達されてます。」

「煽てないでくだされ蒼衣殿。サクヤが真に受けて無理をさせるのです。」

「藤十郎殿も大変ですね…。」

「胃の臓だけでなく、腰にもきそうです…。」



 藤十郎の愚痴を聞きながら、国府へと辿り着いた。


「船も早かったが、馬も早いですね。徒歩の旅しかしてこなかったので、新鮮です。」


 馬から降りたところに右近が迎えに出てきた。


「中々様になっておるではないか、サクヤ殿。」

「右近様。態々出迎えなどしていただかなくても…。」

「いやいや、神々に愛されておられる姫巫女殿への最低限の敬意だよ。」

「ひ、姫巫女って…。右近様、気持ちが悪いのでおやめください。」

「ははは、慎み深いものだ。馬は其の者達に任せておけばよいので入られよ。」

「では、お願いします。」


 龍馬達は引かれて厩へ向う。



 応接室に入ると輔殿と見たことのない男が待っていた。


「紹介しよう。日輪大社の宮司で健平たけひら殿だ。」

「はじめまして、健平です。宜しくお願いします。」


 紹介された健平は、細身中背の少し頼りなさげな二十代半ばといった感じの宮司としては若い男だった。


「乾のサクヤです。こちらは同じく藤十郎、宮守の猿丸です。宜しくお願いします。」

「頭と聞いていましたが、随分お若いのですね。そして美しい方だ。」

「巽の蒼衣と、同じく蒼士郎です。」

「宜しくお願いします。どこの社も鬼退治の担当はお若い方に任せられているのですね。」

「いえ、この2社が偶々そうなだけで、他の社の事情は存じません。」

「そうなのですか。社間で連携を取ったりはしていないのですね。」

「まだそこまでは…。これからの課題かもしれませんが、朝廷側が態度を改めなければ表立って動く事も難しいでしょう。」

「いやいや、相変わらずサクヤ殿は厳しいな。まぁ、そういうことも含めて話をするために健平殿もお呼びしたんだ。今日は腹を割って話そうや。」



 其々が座に着くと、少将が会議の開会を宣言する。


「堅苦しいのはいいや。取り敢えず調査の報告を少将から頼むわ。」

「はっ。サクヤ殿の処置のお陰で、あれ以降は感染者も出ていません。襲われた村はまだ食い散らかされた骸が残っていましたが、国府兵により埋葬しました。今日現在までに鬼が現れたという情報は入っておらず、大きな動きはございません。」

「村の浄めは済んでいますか?」

「いえ、できる者がおりませんし、人が立ち入ることもないので、後回しになっています。」

「わかりました。私からもよろしいですか?」

「なんだい?」

「国府に入る前、国境の北にある小さな祠に呪物が置かれているという事柄がありました。処分はすんだのですが、先日も龍神の社の奥宮でも同様の事が起きています。鬼が御神域に入ることはできませんので、人が運び込んだものと思われます。少々作為的なものを感じますので、他にも似たような事例がないか、調べて貰うわけにはいかないでしょうか?」

「ほぅ、そんなことが。因みにそれはどのような影響があるのかな?」

「小さな祠であれば、その御神域の神様が祟神になる恐れがあります。龍神の社ほどの強い神様なら直ぐ様ということはありませんが、決して良いことではありません。」

「なるほどねぇ。しかし、国境の北の山の祠など、よく気付いたねぇ。」

「はい、お導きによるものです。」


 サクヤはわざとらしく笑顔で返した。


「ははは、サクヤ殿には敵わんな。まあ、よいでしょう。手配しよう。輔殿もよいかな?」

「はい。国内の祠については調査します。ただ、兵が見て呪物と判るものなのでしょうか?」

「それは難しいかもしれませんが、これまで見た2件は、それと判り難いよう、お供え物の器として置かれていました。それを加味して不審なものがあれば、私を含めた社の者を向かわせて貰えばと。」

「待て、サクヤ殿。呪物の判定はできるかもしれぬが、封印まではできんぞ。」

「その時は私に知らせてください。」

「おや?サクヤ様は結界術がお使いになれるので?」


 健平がサクヤに笑顔で問う。


「呪物を封印する程度の小さいものならなんとか。」

「ほう、それは凄い。私の一族以外で結界術を使う者に初めて会いました。西国には結界師を多く輩出する社があると聞きますが、元々そのような御力をお持ちなのですか?」

「…それは秘密です。」


 サクヤも微笑で返すが、目は笑っていなかった。


「日輪大社の方が結界術を使えるなら私ひとりがやらなくてもよいですね。健平殿にもご協力を頂きましょう。」

「それは勿論、協力させていただきますとも。」


 お互いに笑顔だが、交差する目線に火花が散っているように周囲には見えた。


「さて、そちらの話はソロソロよいか?白銀童子討伐の具体的な方策を検討したいのだが。サクヤ殿は少数精鋭がよいと言っておったな。」

「はい。1足す1が必ずしも2にならないのが、集団での戦いですから。数がいればいいというものではありません。死ぬだけなら兎も角、相手の糧になられたり、人質にされたら困ります。」

「なるほどな。だが、白銀童子の軍勢も一匹ではあるまい。数が不足しては厳しいのではないか?」

「相手の戦力は正直わかりません。一度撤退を前提に潜り込んでみたいですね。迎え撃つ鬼の数で、ある程度戦力が読めそうです。できれば複数の経路から同時に侵攻して、どの程度分散しているかも判れば申し分ないですが。」

「かなり命懸けの挑発だな。先日村を襲ったのが10匹前後と言っていたが、総動員した時の戦力は判らんし、撤退も楽ではなかろう?」

「逃げるだけなら手はあります。」

「ほう、それは?」




 会議を終えたサクヤ達は部屋を後にする。

 決まったことは以下による。

・決行は1月後。

・一度に4つの経路から侵攻する。

・部隊は湖の国府軍、将軍直轄軍、龍神社軍、そして鬼防寮軍(馳遊馬を含む)で構成する。

・1部隊に5〜6人程度の精鋭部隊とする。

・1月後までにサクヤが秘密兵器を用意する。

・決行までに社に呪物が供えられてないか調査を行う。


 以上の6点だった。



 会議を終えた応接室には、右近、少将と健平が残された。


「ご苦労様でした、健平殿。」

「中々興味深い御方でした。来た甲斐がありました。」

「ほう、どのようなところが興味をそそりましたかな?」

「先ずは何といっても結界術を使えることでしょうね。」

「あれって、本当に日輪大社の宮司一族だけしか使えないのかね?」

「以前は帝の一族も使えたはずです。元は同族ですから。あとは各地の社の宮司のうち、一部の者は使えるかもしれません。先程言ったように西国には多く輩出する社もあります。この辺りについては、今ある結界の全てを日輪大社の者が施したわけではありませんし、御神域がそもそも結界です。ただ、あれは神が施したものとされているので、宮司にできるのかはわかりません。」

「でもサクヤ殿は使えると…。」

「そこなのです。サクヤ殿が赤犬の里の者だというのが気になります。」

「ほう、それはまた何故かな。」

「『霊徳の乱』のとき、宮司の娘が赤犬の里に匿われたという伝承がありまして、もしかすると、その末裔ではないかと…。」

「そんな話は初めて聞いたな。どのような方なのかね?」

「皇弟の婚約者だったとか。日輪神宮の初代宮司の弟を殺して逃亡したと言われていますが、真意の程は定かではありません。」

「そりゃまた…。中々に強い巫女さんだな。サクヤ殿を彷彿とさせるじゃないか。」

「女だてら山兵になるような逞しい方ではないと思いますが。どのような方法で殺害したのかもわかりませんし…。毒殺であればか弱き女子でも可能でしょう。」

「それもそうだな。結界術以外に気になったことはあるかね?」

「禊祓ができて、一目で呪物や穢れの判定ができるというのは社の宮司の娘故なのでしょうが、サクヤ殿は養女と聞いてます。どこでそのような御力を得たのか?」

「サクヤ殿は一度に多くの者に行使できるしな。あの弓の腕といい、本当に規格外過ぎるんだよなぁ。」

「恐らく、あれ程の力量で多様な御力を使いこなす人は他にいないでしょう。そして、それをどうやって得たのか?謎が多過ぎますね。」

「味方なら頼もしいが、敵に回すと厄介この上ない。なので、余りサクヤ殿とぶつからないで欲しいんだがね。」

「はは、それは不味かったですね。次お会いすることがあれば何かしらの方法でご機嫌をとらねばなりませんね。」

「頼んだよぉ。私もどことなく警戒されてるようだしね。取り敢えずはサクヤ殿の言ったように準備していこう。少将、手配を頼む。」

「はっ。」


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