サクヤに学ぶ
おはようございます
「ご無沙汰しております、サクヤ様。」
「蒼衣様。それに蒼士郎殿。お元気そうですね。しかし、何故このような所に?」
「赤犬の社にサクヤ様をお迎えにあがろうとしたところ、ここの祭に赤犬の社の神楽団が来ると聞きまして、是非鑑賞させていただこうという話なりまして。」
「話になったって…、お前が言い張っただけじゃないか。」
「兄上は黙ってて!」
「そ、そうでしたか。楽しんでいただけましたか?」
「はい!ともて素晴らしかったです。特にサクヤ様の神が本当に凛々しくて、思わず魅入ってしまいました。」
「それは良かったです。では、これから里に?」
「はい。ご同行させていただいても宜しいでしょうか?」
「勿論です。」
「ねぇ、伊都。あのかっこいい殿方は誰?」
「いえ、存じません。」
「あの方は龍神の社の宮司の次男で蒼士郎殿といいます。以前の疫病騒ぎの前に、サクヤ様の命を狙った不届き者です。」
護衛で来ていた千代が2人に教えた。
「えっ!?そうなの?でも、なんだか仲良さそうに話してるけど…。」
「サクヤ様は慈悲深く寛容でいらっしゃるので。ただ、あの蒼衣という女は危険なので、サクヤ様に近づけたくありません。」
「え?サクヤと再会したことを凄く喜んでいるように見えるけど?」
「だからです。サクヤ様のお側に仕えるのは私の役割です。あのような者を側に置くわけにはいきません!」
「…。伊都、これはどういう状況なのかしら?」
「私に聞かれても…。」
サクヤ達は宿場町から里に帰ってきた。
「なんとか野分で受けた被害もある程度復旧できました。その節はご支援いただきありがとうございました。そのことも含めて、延期になっていた龍神の社へお招きにあがりました。」
「いえ、大した事もできなかったのに、ご招待いただきありがとうございます。」
「疫病の件も含めて、宮司が礼を申したいと。何時頃ならサクヤ様のご都合がよろしいでしょうか?」
「私は何時でもかまいません。宮司、どうでしょうか?」
「いや、これといって予定はないな。社の祭祀はサクヤがおらずとも問題はないしな。誰を連れて行くのだ?」
「鬼防寮の者達です。」
「そうか。では伊都も…?」
「勿論です。」
「そうか…心配だな。」
「そろそろ叔父離れされてはどうでしょうか?」
「そうはいうてもなぁ、其方と一緒だから余計に心配なのだ。」
「失敬な…。」
「さ、サクヤ様と宮司様は随分仲がよろしいのですね。うちでは考えられないような会話です。」
「龍神の社の宮司は厳しい御方なので?」
「そうですね…。おいそれと声を掛けれるような相手ではありません。」
「蒼衣様の父上ですよね?」
「そうですが…。」
「宮司はヌシ様と唯一対話をされる最も神に近い存在だ。気安く話しかけてよい相手ではない。」
蒼士郎が説明する。
「龍神の社の宮司はヌシ様と対話できるのですか?」
「御告げを授かるのが宮司の役目ですが、対話というよりは、一方的に通達されると言ったほうが適切かもしれません。」
(う〜ん、うちのヌシ様とは結構違うな。いや、宮司はそれすらしていないだろうから、龍神様の方が人に近い存在なのかもそれない。)
アカイヌヌシを撫で回している時のことを思い出したサクヤは微妙な顔になる。
「如何されました?」
「いえ、なんでもありません。うちの宮司がヌシ様と対話しているという話を聞いたことがなかったので、随分人に近い存在であられると思っただけです。」
「え?人に近い存在ですか…?サクヤ様は神様の存在を心から信じておられるのですね。」
「それは、まぁ…。」
(駄目だ、どうしても撫で回されて腹を見せるヌシ様が頭に浮かんでくる…。)
「御神域から初めて出たとき、今まで神に守られてきたのだと実感しました。私にとっては神がおわすことは当然のことです。でなければ人が御力を使う事などできないではないですか。御力は本来、人が持てる力ではありませんから。」
「確かに仰られる通りですね。私は御力をそのように考えたことがありませんでした。やはりサクヤ様から学ぶことは沢山あるようです。」
「そのような大層な話では…。」
「いえ!いっぱい学ばせて貰います。やっと宮司から留学の許可が下りたのです。サクヤ様が当社からお帰りの際に私も同行し、そのまま留学させていただきます。ついでというか何というか、兄もついてくるのですが…。」
蒼衣は蒼士郎をジト目で睨む。
「えっ!?蒼士郎殿も留学されるのですか?」
「付き添いのようなものだ。宮司の指示ゆえ断われなかった…。」
「ふむ、留学と言われても、これといって教えることもないのだが…。サクヤ、この御二方、其方の寮でお預りしなさい。」
「そうですね。蒼士郎殿は戦力として申し分ないですし。」
「戦力…?」
「鬼防寮は鬼対策に特化した寮です。現段階の常時戦力は私を含めて4人ですから、一個小隊程度です。蒼士郎殿が加わってもらえると助かります。」
「ふむ、ただ机に齧りついて学ぶよりは面白そうだな。」
挨拶を終えた2人は、赤犬の里を案内された。まずは弓寮からだ。
「新設された鬼防寮は特に施設がありません。普段は弓寮や槍寮と鍛錬や調練を行ったり、時々会合を開くくらいです。ここは弓寮の的場です。」
的場では弓兵と並んで千代が鍛錬していた。
「通常の鍛錬だな。御力は使わないのか?」
「弓関連の御力を持つ者ばかりではないですから。龍神の社では弓兵が皆弓関連の御力を持っているのですか?」
「いや、必ずしもというわけではないが、少なくはないな。サクヤ殿は弓の御力があるのだろう?」
「私は弓の御力があるという認識はなかったのです。無意識に使っていたようですが。」
「無意識だと!そのような事がありえるのか?」
「使っているという認識はありませんでした。力量の減る量も微々たるものですし。籠めるときはしっかり籠めてましたし。」
「出鱈目な…。では、我が刀の鍔を射たとき、御力は…?」
「使っていません、というより籠めたつもりはありません。」
「恐ろしい女子だな。是非御力を籠めた弓を見てみたいものだ。」
「その程度でしたら。因みにこの弓は最初から御力を籠めた状態ですので、普通に放ってもかなり強化されていることを予め言っておきますね。」
「もしや、その弓に御力を籠めたのは…?」
「私ですが。」
「付与までできるのか…。」
サクヤは当たり前じゃないかという顔で蒼士郎を見るが、蒼士郎は呆れ顔、蒼衣は憧れの顔で返した。
「では折角なので、御力の籠められた破魔の矢を使って、更に御力を使って放ってみましょう。流石に私もここまでやったことがないので、どうなるか判りませんが。」
「おい!的の後方に人がいないことを確認しろ!大変なことになるぞ。」
立ち会っていた弥九郎が慌てて声を上げる。
的の後ろは山林しかないが、人が入り込んでいないか確認したあと、誤って入り込まないよう警備の兵が立った。
「たかが矢を放つだけで、ここまで物々しくする必要があるのか?」
蒼士郎は訝しげに弥九郎を見る。
「見ればわかります。」
弥九郎は一言だけ答えた。
「では、参ります。」
サクヤは全身に御力を滾らせ矢を番えた。
「なんだ?あの揺らぎは?」
サクヤの周りがほんのりと光りに包まれオーロラのように揺らぐ。
少しだけ目を閉じたあと、見開いた目は的を見据える。
パンッ!
放たれた矢は誰の目にも追えなかった。放ったサクヤ以外には。
矢は的にも刺さっていない。
「えっ!?放った…のか?見えなかったが。」
「貫通しましたね。奥の山林を抜け、多分山の斜面に刺さっています。」
「はぁ?山の斜面って、150間(約272m)近くあるぞ!途中に木もあるじゃないか。」
「行ってみますか。」
サクヤ達は的を確認したが、綺麗に穴が空いている。穴を覗くと壁を貫通して向こう側が見える。
「馬鹿な…。」
壁の裏に周り、穴の方向に向かって歩く。何本かの木に穴が空いていた。
「もう100間は歩いているが…。」
何本かの木を掠めたり、穴を穿っていたが、矢はない。
山の斜面まで来たら、斜面にも穴が空いていた。
「矢が見えない。随分深い穴だな…。サクヤ、それ、もうやめとけ。というか、使う場面などないだろ?被害が甚大なことになるぞ。」
「そうですね。霊徳童子の時までとっておきます。」
「いや、相手が霊徳童子でも使える状況が限られるぞ。後方の安全確認なしに放てるものではない。」
「…面倒臭いですね。」
「いや、お前達の会話はおかしいぞ。何故そんな平然としているのだ?」
「蒼士郎殿、サクヤと一緒いると感覚が麻痺してくるのです。因みにサクヤなら、今空いた穴を狂いなる何本でも通せますよ。」
「妖か…。」
「蒼士郎殿まで人を妖呼ばわりするとは!そのような事ができる妖がいるなら連れてきて下さい!」
「いや、すまぬ。だが、これは…。言葉にならぬな。」
流石の蒼衣も目が点になっていた。
「蒼衣、これも学ぶのか?」
「無理に決まってます!」
「だろうな…。」
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