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浄弓の巫女サクヤ 〜里の因習なんて無理なので御神力を使って鬼を倒しに行きます〜  作者: 一角獣
第2部 進化〜進撃の巫女姫〜

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将軍、里を巡る

おはようございます

(ふむ、端からサクヤを宮司にする気などないのはわかったな。まぁ、あれ程の娘だ。他に出したくはないだろうし、当然と言えば当然か。さて、なんとか尻尾を出してもらおうかねぇ。)


「ところで宮司、先日の疫病騒ぎでは大変世話になったわけだが、何故疫病に禊祓が有効だとわかったのだろうか?これまでそのような話は聞いたことがないのだが?」

「これはサクヤが周囲に語ったことの集約で、確実なことではないことが前提となりますが、よろしいでしょうか?」


 藤馬が答えた。


「勿論だとも。」

「では。疫病が古くから鬼が広めていることは知られています。実際に疫病の感染者に遭遇したのはサクヤも初めてだったようですが、発熱と共に呪詛を感知したようです。」

「呪詛ですか?そのようなものが感知できるのですか?」

「禊祓ができる者は感知できます。穢れ、邪心、呪詛について感知できなければ禊祓ができないわけではないですが、効率が変わってきます。」

「確かに。手当たり次第にやってちゃ力量がいくらあっても足らんわなぁ。」

「はい。その通りで。で、サクヤは禊祓で呪詛を祓うことで、体調不良の原因を除去しようとしたわけです。そして、呪詛により体力が消耗した者に回復薬や解熱薬を処方していました。」

「なるほど。これは興味深い話だが、朝廷では対応が難しいだろうねぇ。なにしろ、禊祓ができる人間が少なすぎる。できても日輪宮の道春のように御力が弱いんじゃ戦力にならんしなぁ。あの浄化薬ってのはここで作っているのかな?」

「あの現場で使用していた薬は、社に備蓄していたものではあるのですが、調薬しているのはここではなく、里の調薬に長じた者が行なっています。」

「へぇ、あの傷薬もかい?」

「はい。ですが、薬の類は今回の一件で大方使い切ってしまったので、またあの量を作るとなると…。かなり高価な薬だそうですから。」

「だそうってのは?社に備蓄しているってのに、価格も把握してないのかね?」

「いえ、里の者は役目を与えられ、成果を納めて物品の交換札を受け取るので、製作にかかる費用がはっきりしない物が多いのです。貴重な薬草を使っているから、町で売るとなると高価になると聞いているだけなのです。」

「なるほどねぇ。それは是非その薬師さんに会ってみたいね。あれ程効果の高い薬を作る人だ。お礼を言わないといけないだろう。」

 

 宮司と藤馬は困惑している。


(隠しておきたい事情でもあるのかな?サクヤに関係すると思うんだが。或いは作ったのもサクヤか?)


「分かりました。本人に確認してみましょう。気難しい方なので、失礼があるかもしれませんが…。」

「こちらは素性を隠してるんだ。失礼なんて気にしないよ。」


(会わせてくれるってことは、サクヤではないのか?或いは影武者でもたてるのか。)


「では、確認をとってまいります。暫しお待ち下さい。」


 そう言うと藤馬は部屋を出ていった。


「しかし、宮司。あのサクヤ殿は本当に凄い女子だねぇ。中々あれだけの傑物は都中探してもいないよ。あの子は産まれも育ちもこの里かい?」

「はい、幼い頃より知っております。あの器量ですから、どうしても目立ちますゆえ。」

「そういえば、神楽も舞うらしいね。しかも神役を。確かに女子にしては背が高く凛々しいから、舞台で映えそうだ。」

「はい…。サクヤが舞う日は、観客も立ち見が出るほどの盛況です。」

「へぇ~、それほどかい。それは一度観てみたいものだ。ところで、話は変わるんだけど、私はつい先日まで日輪大社に滞在していてね。暫く滞在したら、力量が満たされて御力が使えるようになったんだ。この里の住人も、皆御力が使えるのかい?」 「いえ、皆ではありません。使える者は宮守や巫女になります。巫女は成人したら社を去るので、女の中には御力が使える里人もいます。その中の1人が件の薬師でして。」

「へぇ。じゃあ、調薬に関する御力なんてものもあるのかな?」

「その者の御力は存じません。言わぬ者も少なくありませんし、強要もしておりませんで。」

「そうかね。私ならつい自慢してしまいそうだが。確かに戦闘に関する御力なら、秘匿しておく方が手の内を知られずに有利にはなるなぁ。」


 宮司の顔色は相変わらず悪い。最初からこんな顔なのかもしれないと右近は思った。


「了承を得てまいりました。」

「では参りましょう。」

「えっ?!呼びましたので、暫くすればこちらに参りますが?」

「いやいや、そんな失礼はできないよ。気難しい方なんだろ?機嫌を損ねる訳にはいかないしね。」


 右近は立ち上がると、部屋から出て行く。


「さ、案内してください。」

「は、はい!おい、コノハさんに伝えてこい!」


(コノハさんか。どんな人だろうね。楽しみだ。)



 案内されて着いたのは門前町の片隅にある普通の民家だ。裏には畑らしき物があり、野菜や薬草が育てられているようであった。


「コノハさん、お連れしました。失礼します。」

「どうぞ…。」


 右近は案内されて中に入ったが、コノハを見て目を丸くした。


「このような処にこれほどの美しい方が…。おっと、このような処は失礼でしたね。申し遅れました。私は…、」

「右近様、とお呼びすればよいですか?」

「う、うん、それで構いません。突然の訪問失礼します。」

「いえ…。」


 右近は正直見惚れてしまった。歳の程は三十過ぎたあたりだろうか?このような山の中には似つかわしくない程の美人である。気難しいとは聞いていたが、こちらの立場を聞いているだろうに、全く動揺することない肝の座り方である。


(どことなくサクヤに似ている?性格が似ているからか、顔立ちもどこか似ている気がする。母親にしては若い気もするが…。)


「どのようなご要件でしょうか?」

「いやぁ、先日の疫病の件は御存知だと思いますが、随分効果の高い薬を調合なさっておられるようで。お陰様で殆ど被害もなく終息させることができました。それも偏に貴方が作られた薬のお陰と思い、お礼を申しに参りました。」

「高貴なご身分の御方ですのに、随分へりくだった物言いをされるのですね。礼には及びません。薬師として普通にお役目を果たしただけです。」

「いやいや、あれ程効果のある薬など、都でも手に入りません。貴重な薬草を使われていると聞きましたが、それはこの里で採れる物なのですか?」

「ヌシ様のおわす、御山で採取されるものです。おいそれと入れるものではありませんし、闇雲に取るわけにもまいりません。」

「いや、なるほど。御神域の中でも特に特別な場所の薬草なら、効果の程も納得ですな。」


(確かにこれは難物だ。サクヤと会話しているようでやり難いな。)


「調薬には御力も使われるのかな?」

「さて、意識して籠めることはありませんね。」


(意識して?どうとらえればいい?籠めていないとは言っていないし、意識せず籠めるなどできるものなのか?)


「失礼なことを伺ったようですな。貴重なお話を聞かせて頂きありがとうございました。これ以上の長居はせぬほうがよいでしょう。それでは失礼します。」

「いえ、大した話もできず。」

「あ、最後に一つだけよろしいですか?」

「なんでしょう?」

「コノハ殿はサクヤ殿をご存じで?」

「…サクヤ様のことをこの里で知らぬ者などいないと思いますが…。」

「そうですよね。馬鹿なことを聞きました。では、失礼します。」


(一瞬考えたような気がしたが、何とも言えんな。質問が曖昧過ぎたか…。)



「案内ありがとう。ところで藤馬さん。」

「なんでしょうか?」

「コノハ殿は連れ合いはおられるのか?あれ程の美人は都でも中々お目にかかれませんよ。」

「い、いえ、コノハさんに連れ合いはいません。」

「何故周りはあれほどの方を放っておかれる?」

「コノハさんが受け付けないので。成人前には里中の男が言い寄ったと聞いてますが。」

「さもありなん。確かに気難しい御方ゆえ、とりつく島もなかったのでしょう。なんとも勿体ないことだ。」

「そうですね。」


 右近はこのあとも里を案内してもらって各地をみてもらったが、これと言った収穫もなく帰路に着いた。


「これといって収穫はありませんでしたな。」

「いやいや、あれ程の美人にお目にかかれたんだ。充分な収穫じゃないか。」

「…。」

「それに、何か隠しているということが判った。それも収穫さ。どちらにせよ、サクヤ殿は味方になってもらわないといけないね。明日彦殿も気に入っておられたようだし、あの2人をくっつけてみるなんてどうかな?」

「その手のことは慎重に事を運ばなければ、拗れることになりますぞ。」

「そうか。じゃあやめとこう。確かに野暮が過ぎるわな。」


(さてさて、どうしたもんかね。)



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