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浄弓の巫女サクヤ 〜里の因習なんて無理なので御神力を使って鬼を倒しに行きます〜  作者: 一角獣
第2部 進化〜進撃の巫女姫〜

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弓の完成と静の帰里

おはようございます

 弓の調整が済んだと知らせを受けたサクヤは、巡回ついでに木造の集落にやってきた。


 林業や木工品、大工の拠点となっている集落で、腕のいい宮大工は町の祠の修繕等にも出張したりする。

 サクヤが弓の製作を依頼した親方も、腕利きの武具職人だ。

 この親方、名を善助といったが、サクヤは何時も「親方」と呼んでいる。サクヤは初めから親方と呼んでいたせいか、名を知らないことに気付いたとき、今更聞くに聞けないと考え、ずっと親方で通している。

 因みに、サクヤが親方で通している職人があと3人いたりする。


「親方、調整が終わったと聞きました。」

「ああ、調子を見てくれ。」


 裏の的場に回り、早速矢を放った。


「うん、これなら問題ない。流石です親方。」

「そうか。ならこれで納品だ。使っているうちに気になることや問題があったら直に言ってくれ。」

「ありがとう。これはお礼です。町の土産。」

「おっ、例の酒かい?ありがてえ。」

「あんまり飲み過ぎないようにね。」

「ははは、こいつは美味いから気を付けなくちゃな。」


 サクヤはもう一度礼を言い、社に戻った。


 里での仕事の報酬は、基本的に社から支払われる給与(引換札等)なので、今回サクヤの依頼はそれに含まれる。個人的な依頼のように見えるが、サクヤがお役目で使うものなので経費となり、サクヤが負担することはない。完全に個人的な依頼だと、物品で支払うケースもあるが、サクヤのように特殊な依頼は今回のように謝礼をすることもあった。



「戻りました。早速的場に行ってきます。」

「できたか。どれ、俺も見せてもらおう。」


 サクヤと弥九郎が的場に向かう。的場に入ると、2人を認めた兵達が気をつけで迎えた。


(何時からか、このような雰囲気が当たり前になった。ピリピリとは違う、心地いい緊張感だ。これも彼等の指導か…。)


 今の山兵の緊張感は、千代と左馬介が白狐の社から持ち帰った成果だった。

 特に千代はサクヤを尋常でないほど尊敬しているので、兵達にもサクヤの凄さを説いて回り、サクヤに対する姿勢を半ば強要していた。

 一方の左馬介は、白狐の社での調練風景や組織としての規律に感銘を受け、組織戦と規律の重要性を説いて実践させた。

 槍寮でも小平太が左馬介同様の指導を行なっていた。

 結果、3人の指導が融合して、槍寮を含めて山兵部全体の規律ができあがったのである。

 サクヤも兵法に準じた組織戦を重要視していた為、日頃の鍛錬も個人技と組織戦術が半々で行われるようになり、弓寮と槍寮の境目が曖昧になってきた。


 実はこれに悩んでいる者が2人いる。


 弥九郎と平八郎だ。


 2人はどちらかと言えば個人の技量を重視した指導をしてきた。白狐の社から帰った4人は、明らかに技量が向上しており、頭2人を凌駕するほどになっている。他の兵達もそれに感化され、彼等の指導に従っているので、頭2人は言う事がなくなってしまった。しかも、いい方向に向かっている実感もあったため、自らの立場がもどかしくなってきたのだ。

 そして、平八郎は開き直った。


「俺は頭を小平太に任せようと思う。俺は隊長格でいい。」

「何を言うかと思えば。だが、実は俺もそう考えていた。」

「そうだろう?それがいいと思うんだ。」

「それがそうもいかないんだよ。」

「なぜだ?至極まっとうな話だろ?」

「いずれ判る。今は余計なことを言うなよ。」

「なんだよ?宮司が何か言っているのか?」

「サクヤ案件だと言えば分かるか?」

「…。そうか、サクヤ殿が関係するならそうしよう。」

「お前、考えることは本当にサクヤに丸投げしてるな。」

「その方が間違いがないからな。」

「そこなんだよな…。」



 的場で矢を番えたサクヤは、躊躇うことなく矢を放つ。そして一撃で的を真っ二つにした。矢速がこれまでの倍は速い。


(これなら奴に矢を掴まれることもないな。)


 サクヤは満足気に頷き、弓を弥九郎に手渡す。


「頭、試してみます?」

「そうだな。」


 弥九郎は矢を番えようとして顔を顰めた。


「サクヤ、お前こんな強い弓をあんな平然とした顔で引いていたのか!」

「…やはりそうですか。千代もまったく引けなかったので、強いのだろうとは思ってましたが。私は無意識に筋力を上げて引いていたみたいです。」

「…引くのはこちらだ…。この強さで連射がきくのか?」

「これでも最初より引き易くして貰ったのですよ。」

「これでか…。」


 弥九郎はなんとか引き絞り矢を放ったが、あらぬ方向へ飛んでいく。

 だが、そこは弥九郎。矢の方向を御力で変えて的には当てた。


「それはズルです。」

「いや、そのままにすると迷惑かと思ってな…。しかし、これは使う人間を選ぶな。」

「…そういえば、まだ御力は籠めてませんでした。籠めたらまた変わるのか?早速試してみましょう。」

「サクヤにとって御力は気軽に使うものなのだな。」

「気軽に使っているつもりはないのですが、無意識に使ってしまっていることはありますね。」

「…よく力量切れを起こさないな。」

「増やす為の努力はしていますから。」

「増やす?なんだそれは?」

「あれ?千代や左馬から聞いてませんか?左馬!」


「なんですか?サクヤさん。」

「山兵の皆に力量の増やし方を教えてやってくれ。今後必要になることだ。」

「そうですね。分かりました。」

「力量の増やし方?」

「詳しくは左馬と千代に聞いてください。私達は同じ方法で増やしてますから。」

「そ、そうか。それも白狐の社で?」

「いえ、千代に教えたのは伊都で、千代から左馬と小平太に教えました。私は独自です。」

「よくわからんが、それができるなら大いに助かるな。他の者は知らないのか?」

「さあ?伊都から破魔寮の人には伝えているのではないでしょうか?」

「そうか。俺もしっかり聞いておこう。」


(黒曜石とか、籠める物が足りるかなぁ?)




「サクヤさん、お客様です。」

「ん?またか?国府からか?」

「いえ、静さんです。」

「静さん?わかった、すぐ行く。」



 宮司の部屋に行くと、そこには静がニコニコ笑って待っていた。


「静さん、先日はどうも。」

「サクヤさん、忙しいのにごめんなさいね。営業のついでに里帰りをと思って。でも要件もあるのよ。」


 静はニコニコ笑いながら懐から書状を取り出す。


「はい、これ招待状。絢音さんがサクヤさんに感謝を伝えるための宴を催すから、是非来てくださいって。」

「ありがとうございます。私の他には誰が招待されているのですか?」

「今回はサクヤさんの為の宴だから、サクヤさんと蔵元と私だけ。でもそれじゃあ寂しから、この間の千代さんとか、何人かお友達を連れてくると良いわ。できれば女性だけで楽しみたいわね。」

「そ、そうですか…。」


(なぜだろう?嫌な予感がする。)


「あまり硬く考えないで。楽しくわいわいやれればいいって会だから。近況報告も兼ねたものよ。」

「わかりました。何時頃の話でしょう?」

「サクヤさん達の都合に合わせるわ。」


 サクヤは宮司を見る。


「国府遠征の休暇も貰ってないのだろう。静と共に行けばいいのではないか。取り立てて急ぎの要件はないはずだ。」

「そうですね。ではそうします。千代たちにも伝えますね。」

「そうね、どうせならサクヤさんの同期の子達を連れて行きましょう。」


(う…、まったく主導権を握れない。)


「では宮司、サクヤさんありがとうございました。私は暫く実家に滞在していますので、お声掛けください。」

「うむ。」

「分かりました。」


 笑顔のまま静は軽い足取りで出て行った。


「相変わらず圧の強い娘だ…。」

「まったく主導権が握れません。交渉役として社に再出仕してもらってはどうですか?」

「いや、あのような部下はちよっと…。」

「…ですね。」




 サクヤは千代と共に、安澄と伊都に声をかけ、各寮の頭に休暇の許しをもらった。

 勿論サクヤもである。



「なんか楽しみね!面白い話が聞けそう。」

「そ、そうかなぁ?」

「私もサクヤさんとこのような機会がなかったので、少し楽しみです。」

「そうだったかな?楽しみならよかった…。」


(なんでそんなに楽しみなんだろう。私は不安しかないんだけど…。)


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