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浄弓の巫女サクヤ 〜里の因習なんて無理なので御神力を使って鬼を倒しに行きます〜  作者: 一角獣
第2部 進化〜進撃の巫女姫〜

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終息と新たな敵

「新たな感染者は出ていません。なんとか終息したようです。」


 半兵衛がサクヤに報告すると、一堂は安堵の息を吐いた。


「やっと里に帰られるな。」


 小平太がもらした。


「皆さん、大変ご苦労様でした。特に道春様は慣れないことで大変だったと思います。」

「いや、大変よい勉強になった。あれだけやればすっかり慣れたものよ。力量も増えた気がするしな。」

「気のせいではありません。これからも国府の民が穢れや邪心に染まらないよう、引き続きお願いしますね。」

「任せておれ。もう疫病の付け入る隙も与えぬわ。」



「ほう、言うではないか。」


 あらぬ方向から声が聞こえた。声がした方を見ると、門の外に1人の男が立っている。


「霊徳童子?いや、違うな…。」


 男は門の前で腕組みしたまま、こちらに大声で続ける。


「我の呪詛をやり過ごすとは、中々骨のある者がおるようだ。だが、次はこうはいかん。より強い呪詛を用いて、この地の民を根絶やしにしてやる。」


「何者だ!」


 弥九郎が叫ぶ。


「我こそは『白銀童子』。何れこの地を統べる者だ。よく憶えておくがいい。」


 白銀童子は不敵に笑う。


「鬼は斬る!」


 太刀を抜いた蒼士郎が白銀童子に向け走る。


「面白い。相手になってやろう。」


 白銀童子は人の姿から一回り大きな鬼の姿に変わると、薙刀を構えた。


 蒼士郎が自身の間合いに入る前に白銀童子は薙刀を横薙ぎに払う。蒼士郎はそれを地を這うような低い姿勢で躱し、白銀童子の足を払う。

 白銀童子は高く後に宙返りすると、着地と同時に薙刀を袈裟斬りに振るう。

 蒼士郎は刀で受け止めたが、白銀童子の剛力に押し込まれる。

 蒼士郎は押し込む力を流すように躱すと、白銀童子に蹴りを入れた。


「中々やるではないか。だが、人の蹴りなど蚊に刺されたほどにもない。ソロソロ終いにしようか。」


 白銀童子は薙刀を頭上で旋回させる。薙刀の回転に応じて旋風が巻き起こる。


「やらせるか!」


 蒼士郎は素早く水の刃を放った。しかし、水の刃は旋風に当たると飛び散って消えた。


「終いだ!」


 白銀童子は自らも旋回して薙刀は回転する刃となった。

 白銀童子の薙刀に蒼士郎が斬りかかるが、勢いよく弾き飛ばされた。倒れた蒼士郎に薙刀が迫り来る。

 蒼士郎は刀を構え直し、防御体制をとるが、先程の傷が深い。


「死ね!」


 白銀童子が叫んだ直後、一本の矢が白銀童子の足を捉えた。

 回転軸を捉えた矢は、その回転を止めた。


「くそ!破魔の矢か!」


 白銀童子は矢の来た方向を見ると、女が二の矢を番えている。


「ちっ!」


 白銀童子はまたたく間に後退し、矢に対応出来る距離を取る。


「今日は退く。だが、次は確実に殺す。女、顔を憶えたぞ。お前は我の餌になってもらう。」

「ふん、餌とはな。貴様ら鬼が畜生と同じだということはよくわかった。破魔の矢で射抜いたのだ。そう簡単に傷が癒えると思うなよ。」

「女、いい度胸だ。次会う時を愉しみにしているぞ。」


 白銀童子はそう言うと笑いながら去って行った。



「兄上!」


 蒼衣が蒼士郎に駆け寄る。


「傷が!早く血を止めないと!」


 サクヤも駆け寄り、傷の具合を確かめる。


「これなら何とかなるだろう。これを飲め。」


 サクヤは蒼衣に回復薬を渡し、自らは傷薬を塗る。


(バレないようにな…。)


 サクヤは薬を塗りながら治癒の御力を籠めた。


「馬鹿な…。傷が塞がった…。」

「母様特製の傷薬だ。効果は抜群だろ。だが、多く血を流しているから、無理はするな。」


 蒼衣は塞がった傷に啞然としながら、奇跡のような出来事に涙を流す。


「サクヤ様、ありがとうございます。私だけでなく、兄の命まで救ってもらうとは…。」

「いや、母様の薬が凄いだけです。」


 蒼士郎はサクヤを不審の目で見つめる。


(そんなわけがない。薬でこのようなことができるはずがないのだ。この女子はもしや…。)



「大丈夫か!」


 小平太達も駆けつけた。


「治療は済んだが療養は必要だ。道春殿に頼んでくれ。」

「分かった、伝えてこよう。」


 弥九郎が請け負う。


「またしても手強い鬼が現れたか…。」


 藤十郎が腕を組み天を仰ぐ。


「手の内が判ったのです。やりようはあります。」

「そうか、そうだな。其方等なら何とかできるやもしれぬな。」


(若い者達が育った。私の役目もそろそろ終わりなのだろう…。)


 藤十郎は少し眩しげにサクヤ達を見た。




「そうですか、鬼が…。疫病は終息しましたが、戦いは続くのですね。」


 梓はぼやくように言うと、表情を引き締めて前を見る。


「この度は疫病鎮圧に尽力いただき、感謝します。皆様方の働きには、何らかの形で報いようと思います。今は国守を亡くし喪に服しているため、表立って働く訳にもいきませんが、この恩を忘れることはありません。特に乾殿、貴方には返しきれない程の恩もありますし、無礼を詫びねばなりませんね。」

「いえ、国府にも赤犬の社の信者はいます。その方達を救うのは当然のこと。礼には及びません。」

「国に尽くした方に礼もしないというわけには参りません。我等にも面子があります。」

「わかりました。では、その件は宮司へお願いします。あくまで社としての働きですので。」

「なるほど…。分かりました。」


 梓は鷹揚に答えると、何か吹っ切れたような笑顔でサクヤを見ていた。


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