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浄弓の巫女サクヤ 〜里の因習なんて無理なので御神力を使って鬼を倒しに行きます〜  作者: 一角獣
第2部 進化〜進撃の巫女姫〜

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疫病退治

おはようございます

 サクヤ達は今朝まで泊まっていた宿に戻り、再度宿泊の手配を済ませて部屋に入る。


「蒼士郎、其方にも禊祓をしてやる。そこになおれ。」

「…もう少し言い方があると思うが…。」


 小平太の突っ込みは無視した。



「其方も呪詛が憑いている。だから、祓ったら直ぐ様里に戻れ。」

「何を!蒼衣を置いて戻るわけにはいかぬ。」

「お前、里の衆を壊滅させる気か?隼人にも感染しているのだぞ。」

「なっ!?だが…。」

「安心しろ。大事な人質だ。無体なことはせん。」

「人質…貴様、何と悪どい…。」

「私を暗殺しようとした奴に言われたくない。」

「くっ、分かった。だが、蒼衣に何かあればただでは済まさんぞ。」

「妹想いで結構なことだ。だが、早く帰らんと隼人が疫病を広めるぞ。」


 蒼士郎は禊祓を受けると、苦渋の顔で出ていった。



「サクヤ様、何から何まですみません。サクヤ様の命を狙った者にまで情けを掛けていただけるとは…。」

「あの2人のことは兎も角、蒼衣様にも龍神の里の者にも非はありませんから。」


((あの2人のことは赦してねぇな。))



「それより問題は国府にどれだけ感染が広まっているかだ。日輪宮にも協力してもらうか。大した戦力にはならないが、いないよりはマシだろう。小平太、使いを頼めるか?」

「分かった、行ってくる。」


「蒼衣様、湊からの経路を教えてください。」

「真っ直ぐ国府に来ましたが、その先は依頼主の事となるため言うわけには…。」

「龍神の社の者を呼びつけるなど、国守以外にいないでしょう。そして、私の事が気に入らなくて逆恨みしている者など、あの馬鹿以外いません。なので今更です。国府館の後は何処に行きましたか?」

「…体調が優れなかったため、真っすぐ宿に。紅屋という宿です。」


 蒼衣は観念したように呟いた。


「わかりました。まずはその宿に行って祓いを行います。頭、半兵衛さんを呼んで貰えますか?」

「呼ぶ?国府館には行かないのか?」

「行きますが、行くのは今ではありません。どうせ取り次ぎと馬鹿国守くらいとしか接触はないはずです。ね、蒼衣様。」


 蒼衣は口をハクハクさせて、言葉を失っていた。



 紅屋に着いたサクヤは、従業員と宿泊者を集め禊祓を行う。幸い、発症者は出ていなかったが、宿を後にした者も多い。


(食い止めはここまでだろう。後は発症した者の治療に専念するほかないか。)


 サクヤは一旦宿に戻ると、そこには半兵衛が到着していた。


「半兵衛殿、事情は聞いてると思いますので、まずは浄めます。」

「ありがとうございます、サクヤ殿。」


 禊祓を終えると状況の確認である。


「蒼衣様達と接触があったのは、取り次ぎと国守様だけですか?」

「はい。私も知らされていませんでした。思ったより早く到着されたということもありましたが、国守様が意図的に隠していたようです。奥方様が説得してくださったので、思い止まったと思っていたのですが、申し訳ありません。」


 半兵衛は土下座して詫びた。


「いえ、半兵衛殿が悪い訳ではありませんので。まぁ、あの馬鹿国守にはそれなりの対応をするつもりですが、それは後で改めて。まずは疫病対策を考えねば。」

「ば、馬鹿国守…。いえ、その通りですね。対策とは、どのようなことを?」

「発症する前なら禊祓で抑え込むことができるようです。しかし、発症してしまうと回復のための治療と禊祓の両方が必要になります。今隣で休んでる蒼衣様は、明日には回復するはずです。」

「疫病を治せるので?」

「鬼がばら撒く疫病は、はっきり言えば呪詛や呪術の類で、浄めを行えば祓えるものです。しかし、発症すると身体が異変を起こしますので、呪詛だけ祓っても身体の異変までは治せていないのです。特に町の衆は穢れや邪心が多いことが、呪詛の進行を早めるのではと考えています。」

「なるほど…。良い薬があるのでしょうか?」

「あるにはありますが、数に限りがあるため、発症する前には抑え込むことが大事なのです。そのために日輪宮に協力を依頼しているところです。」

「何から何まで…。見放されても仕方ないほどの事をしておきながら、今はサクヤ殿の慈悲にお縋りする他ありません。我等にできることは何でもいたしますので、なんなりと申し付けください。」


「サクヤ、日輪宮の宮司が協力してくれるそうだ!」


 小平太が部屋に飛び込んできて報告する。


 それを追ってきたかのように、国府からの使者が来た。


「半兵衛殿、一大事だ!国守様が高熱で倒れた。」

「くっ…やはりか。サクヤ殿…。」

「あれはしぶとそうだから大丈夫だろ。取り敢えず放っておけ。優先すべきは感染の拡大防止だ。日輪宮へ行く。半兵衛殿は町の衆に家から出ぬよう通達し、発症した者は日輪宮に運び込むよう手配してください。小平太、町からありったけの『綾の泉』を掻き集めてこい。支払いは国府が後からやってくれる。」

「本当かよ…。まあいい、分かった。」


 小平太は半兵衛が頷くのを見て、部屋を出ていった。


「藤十郎殿は蒼衣様の側にいてあげてください。私は日輪宮に行きます。」

「わかった。無理はせぬように。」



 日輪宮に着いたサクヤは宮司に面会を求めた。


「宮司殿、御協力に感謝します。」

「いや、疫病となれば当然のことだ。」

「今、里から薬を持ってきてもらっていますが、薬の量も限られます。まずはここでの感染を防ぐため、皆さんに禊祓をしますので、集めてください。」

「皆に?わ、分かりました。」



 集められた宮守と巫女は50人。サクヤは全員を前に禊祓を行う。


「日輪の山に座す畏き日輪大神よ。ここにいるものの穢れを祓い、鬼の病より守り給え。」


 一度に50人の禊祓を行うというので、半信半疑だった宮守達だったが、禊祓が終わると自然に涙を溢した。


「邪気が…。」

「なんという、神々しさ…。」

「信じられん。こんなことができるのか?」


 口々に感動を漏らすが、サクヤはそれに構わず現実を突きつける。


「泣いている場合ではありません。ここは今から戦場になります。対応する皆さんも呪詛に晒されますので、異変を感じたら直ちに申し出てください。早目の対応が大切です。役割を分担し、国府の役人と連携して感染者を運び込みます。」

「「はいっ!」」


 サクヤの呼びかけに呼応して動き出した宮守達に、宮司と弥九郎は圧倒された。


(この肝の座り方は、こういう時には心強いな。)



 夕方には『綾の泉』が集めらた。サクヤはこっそり治癒の御力を籠めた。


「この酒には御神力が含まれてますから、力量の回復だけでなく、呪詛払いにも効果があります。飲み過ぎは駄目ですが、定期的に飲んだり、患者に飲ませて下さい。」


 サクヤも一口飲んで力量を回復させる。


(私はどんな酒でも回復するんだけどね。)



 夜になると少しずつ感染者が運び込まれる。サクヤと宮司が交代で禊祓を行い、回復薬代わりの酒を飲ませた。


 翌朝には運び込まれる感染者が増え始め、境内には仮設の病棟が作られる。


 昼過ぎには千代が薬と共に宮司の長男藤馬を連れて帰ってきた。


「藤馬さん助かります。」

「いや、緊急時だ。礼より禊祓をしよう。」


 さらに回復した蒼衣も加わり禊祓を4人体制で行ったが、宮司は既にグロッキーである。

 そんな中、1人の女性が日輪宮を訪れた。


「貴方が乾のサクヤさんね。初めまして、国守の室で梓と言います。この度の対応、国守瑞守に成り代わり礼を申します。」


 梓はにこやかに礼をすると、サクヤを見つめる。


「いえ。社の者として当然のこと。国守様の様態は如何でしょう?」


 サクヤが問うと、梓は顔を曇らせた。


「あの様な者のことまで配慮いただき痛み入ります。正直加減はよくありません。ですが、これも身から出た錆というものでしょう。」

「そうですか。では、私は治療に戻ります。」

「不思議な方ね、貴方は。あの人の事を憎んでないの?」

「憎しみは邪心を生みます。奥方にこんな事を言うのは憚られますが、神は決して慈悲深くはありません。恐ろしく厳しいものです。邪な者には容赦なく神罰を下すでしょう。その神に仕える私も同様です。ですが、まだ国守にはやってもらわねばならぬ事がありますので、この酒でも飲ませて、死なない程度にはしておいて下さい。」

「そうですか。まだやらねばならぬ事がありますか。分かりました。死なないように注意しますわ。」


 梓の返事に驚きつつもニコリと返して、サクヤは治療に戻る。


(そう、まだ殺してはいけないのね。早く楽にしてあげようかと思っていたのですけど…。)



サクヤはどんな酒でも力量が回復すると勘違いしています。

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