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浄弓の巫女サクヤ 〜里の因習なんて無理なので御神力を使って鬼を倒しに行きます〜  作者: 一角獣
第2部 進化〜進撃の巫女姫〜

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暗殺者

「兄上!何故あのような依頼、勝手にお受けになったのです。交渉は私の役目だと…、けほっ…。」

「其方、風邪でもひいたのではないか?宿で休んでおれ。仕事は我等でやる。」

「しかし…。あのようなこと、父上の承諾も得ず勝手なことは、けほっ!」

「そのような時間はない。里に帰られては手が出せぬ。やるなら明日までだ。」

「あの方達に何の非があるのですか!」

「そんなことは関係ない。我等は銭で仕事を請け負っただけだ。」

「しかし暗殺などという邪なこと…。」

「戦とて大した違いはない。」

「…。」

「良いから其方は寝ておけ。顔色も悪いぞ。我等の穢れも祓わねばならぬのだ。」

「…わかりました。」




 サクヤ達は朝餉を済ませると、宿を後にした。

 街道を南に下り、里に帰る。帰りも3日の行程だ。

 最初の宿場までの中間となる小さな峠に差し掛かった時、男2人が道を塞いだ。


「お主らは昨日の…。」

「特に恨みはないがこれも仕事だ。覚悟しな。」


 隼人は持っていた仕込み杖を合わせて槍の形にする。蒼士郎は刀を抜いた。

 サクヤ達も応戦の構えをとる。


(相手の御力が判らないのが問題だな。しかし、こちらが数で有利なのにも関わらず、敢えて奇襲をかけないのは何かあるのか?)


 サクヤは小太刀を両手に構えるが、先に動かない。


「数がいるのに用心深いことだ。だが、そんなことは関係ないんだよ。」


 隼人がやりを振るうと、届くはずのない槍が小平太をかすめる。


「なにっ!」


 小平太は辛うじて直撃を避けたが、驚愕していた。


「ほう、よく避けたな。だが次はない。」


 隼人が構えをとると、小平太が飛び出し槍を振るう。小平太の思わぬ速さに、隼人は防戦の構えをとって小平太の槍を止めにかかる。


 槍と槍がぶつかった瞬間、蒼士郎の振るった刀から水の刃が飛び出し、小平太を襲う。水の刃が小平太を捕らえたと思われたその時、千代がその横から水の刃を叩き斬る。


「ほう、あれを止めるか…。」

 

 千代は小平太を引っ張って退がる。


「いい判断だ。だが、距離を取っても躱しきれるものではない。」


 蒼士郎は刀を上段に構え、振り下ろそうとしたが、動きが止まる。

 サクヤの放った矢が刀の鍔にあった装飾の穴に刺さった。直後に二の矢が迫るのを、蒼士郎はすんでで躱した。


「なんだと…。これを狙うのか。」

「動いた瞬間に3人が放つ。刀を捨てろ。」


 サクヤと弥九郎、藤十郎が蒼士郎に矢を向ける。

 隼人には千代と小平太が対峙している。


「これで勝ったと思うな。」

「蒼士郎様、ここは退きましょう。今あれを使うのは無茶が過ぎます。」

「だが、退けると思うか?」

「俺が抑えます。」

「しかし!」


「おやめください!」


 国府方向から走ってきたのは蒼衣だった。


「けほっ!申し訳ありません、サクヤ様!私が無理にでも止めるべきでした。」

「いや、そちらが退くなら追うつもりはない。それより蒼衣様、顔色が酷く悪い。具合が悪いのでは?」

「大した事はありま…、」

「蒼衣様!」


 倒れる蒼衣をサクヤは受け止めた。


「酷い熱。貴方達はこのような状態の妹君を放って何をしているのです。」

「ただの風邪だ。死にはせん。」

「いえ、これは風邪ではありません。呪詛が含まれています。恐らく鬼による疫病かと。」

「疫病だと!そんなことが判るのか?!」

「貴方達は社に仕える者なのに、そんなことも判らないのですか?戦にかまけて、宮守として大切な事を忘れているのでは?」

「ぐっ…。」


 隼人が押し黙る。


 サクヤは蒼衣を横抱きにすると、懐から取り出した薬を飲ませる。


「何を飲ませた?毒か?」

「回復薬と浄化薬だ。お前達と違って殺す理由がないからな。もっとも、いくら銭を積まれても、そんなことに手は染めん。」

 

 サクヤは隼人を睨んだ。隼人は思わずたじろぐ。


「どうせ、あの馬鹿国守に雇われたのだろう?」


 隼人は驚いたような顔になるが、直に取り繕う。


「依頼主のことなど話せるわけないだろ。」

「そんなことでは暗殺者は務まらんな。期限はいつまでだ?」

「期限などない。地獄の底まで追い詰めるさ。」

「そうか、ないのか。ならば、依頼主が取り下げれば仕事はなくなるのだな。」

「そりゃそうだが…。そんなことは…、」

「取り下げさせればいいんだろ?この手のことは、お前達より私の方が一日の長があるようだな。お前達は暗殺者としてはまったくなっていない。数的不利の相手に堂々と戦いを挑むなど、兵法から見ても愚の骨頂だ。」

「ぐっ…。」


「サクヤ…様?」

「気が付きましたか。呪詛を完全に祓います。そのままで。」


 サクヤは祝詞をあげ禊祓を行う。


「有難うございます。楽になりました。」

「まだ無理しない方がいい。一晩も休めば回復するでしょう。蒼士郎殿、蒼衣様を。」


 サクヤが蒼士郎を見ると、刀を収めた蒼士郎が歩み寄り蒼衣をおぶる。


「世話を掛けた。恩には報いたいが、依頼がある。こちらから反故にはできぬ。」

「不器用な男だ…。だが、そちらの心配はいらん。やれやれ、また国府に戻らなくてはならないな。千代。済まんが里まで戻って、ありったけの回復薬と浄化薬、それから禊の石を。あと、私の家に行き、母様に力量の薬をあるだけ貰ってきてくれ。宮司にも滞在が延びることを伝えて欲しい。」

「分かりました!」


「どういうことだ?」


 走り去る千代を見ながら蒼士郎が問う。


「蒼衣様は疫病にかかっていた。疫病が1人だけで済むわけないだろ。」

「…そういうことか。隼人!里に戻り禊祓ができる者と医術寮の者を連れて来い。」

 

 隼人は目を白黒させながら駆け出していく。


「私達も国府に戻る。」

 

 サクヤはやや早足で国府に引き返した。



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