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浄弓の巫女サクヤ 〜里の因習なんて無理なので御神力を使って鬼を倒しに行きます〜  作者: 一角獣
第2部 進化〜進撃の巫女姫〜

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右近の力

おはようございます

 宿に戻ったサクヤ達は、弥九郎の様子を見に行った。


「なんだ?元気そうじゃないか。」

「お陰様で、薬が良く効いたようだ。原因のも方も何とかして欲しいものだが。」

「それがな、弥九郎…。」


 藤十郎が日輪宮での経緯を説明する。


「…なんで最初からそうしてくれないんだよ…。」

「それはさっき私からも頼んだ。」



「ちょっとよろしいかな?」

「あら?右近様。」

「しょ!しょうぐっ、」

「しーっ!こんなところでやめてくれ。」

「しっ、失礼しました。しかし、何故このようなところに?」

「いや、先程この宿に入って行くのが見えたのでね。サクヤ殿に聞きそびれた事があったものだから、訪ねさせて貰った。お邪魔してよいかね?」


 弥九郎と藤十郎は右近に席を勧めた。


「で、尋ねたい事とは?」

「それより、国府散策はどうだったかな?」

「はい。色々収穫もあり、楽しませて頂きました。」

「そうかい。何かめぼしいものでもあったかい?」

「こちらでも『綾の泉』が売られていたので、それを手土産に日輪宮に挨拶へ伺いました。中々面白いお話を聞かせていただきました。」

「ふむ。色々聞きたいことがあるな?まず、『綾の泉』とは?」

「はい、街道を南に下った乃美の宿で造られているお酒で、仕込み水に微量ですが御神力が含まれています。非常に美味しいお酒ですから、右近様もひとついかがですか?先程自分用に買って帰ったのです。」

「おっ!?いいのかい?是非頂こう。」


 用意された盃に注ぐと、今回もサクヤが先に口を付け毒見する。


「ほう、これは確かに美味い。」

「はい。実はこの蔵元とも知り合いになりまして。以前の上司もそこで働いているのです。」

「そうかね。で、この御神力が含まれているという酒を、何故日輪宮に?」

「日輪宮の宮司に飲ませてみて、御力が使えるようになるか確認してみようと思いまして。やはり、それなりの血筋の方ですから、見事禊祓ができるようになりました。」

「ほう。それは凄いな。で、面白い話とは?」

「日輪宮の宮司は、日輪大社の宮司の嫡流の子孫だと教えていただきました。」

「そうだな。日輪宮が勧請されたのは今上の帝の曽祖父様の代での話だ。当時の帝も宮司も、非常に強い御力持っておられたという。このお二方の意向で、現在の都に遷都されたとのことだ。だから、都の日輪宮は自分達が直系で、大社は傍系だと言うのはあながち間違いではない。」

「しかし、今は御力を失っていると。」

「いや、都の日輪宮、正確には日輪神宮の宮司は、まだ僅かだか禊祓ができると聞いている。」

「だけど、確実に失いつつあるということですか。帝と共に。」

「そうなるね。しかし、この酒を飲んでいれば、帝の力量も増やせるのかな?」

「僅かではありますが。それよりは都を日輪大社のもとに戻し、御神域でその地の物を口にされる方がより効果的でしょう。」


(これも皇弟殿の言っていた通りか…。)


「なるほど。ということは、私も同じ様にすれば御力が使えるかもしれないのかな?」

「そうですね。私は右近様がどの様な御力をお持ちかは存じませんが、右近様なら御先祖がどのような御力を使っていたか御存知なのでは?御存知なくても、少し調べればお判りになると思います。」

「そうか。では帰って調べてみないとな。私も日輪大社に籠ってみてもよさそうだ。」

「それが良いと思います。」

「いや、良い話が聞けた。迷惑をかけたね。私も『綾の泉』を買って帰るとしよう。お邪魔した。」

「右近様?何か私に聞きたいことがあったのでは?」

「いや、もう解決したよ。ご馳走様。」


 そう言うと、右近は足早に去っていった。


「解決した?何が聞きたかったのだ?」

「恐らくですが、私達が日輪宮に行って宮司と面会したことは把握されていたのでしょう。その意図と御力について聞きたかったのでないでしょうか。」

「つけられてたということか?」

「流石に御本人ではないでしょうが、そこら中に『目』を放っているのでしょう。身辺警護の任も兼ねて。」

「なるほど。」


「しかし、本当にらしくない将軍様だな。あんなに気安く話ができるとは。しかも、一人でこんな宿に訪れるなんて。」

「それも計算のうちだろうな。もっとも、お付きの者は苦労していそうだが。」

「うん、凄く共感できる…。」

「どういう意味だ。」

「いや、小平太の言う通りだな。」

「頭は私の上司で、お付きの者ではありませんが。」

「いや、お前は乾の者だから、似たようなものだ。結局将軍様や高位の者と遣り取りしているのは何時もお前だからな。」


「解せぬ…。」





「少将!帰るぞ。そして日輪大社に行く!」

「唐突に何を仰っしゃりますか?」

「やはり、皇弟殿とお近づきになった方がよさそうだ。」

「やはり担ぐので?」

「それはまだわからんがね。まずは自分に御力が使えるのか、試してみてからだな。」

「籠る口実はどうされるので?」

「鬼に関する文献の調査、そんなとこでいいんじゃないか?」

「畏まりました。随分ご機嫌のようですね。そんなに良い話が。」

「いや、話のわかる娘だよ、あれは。是非取り込みたいが、乾の養女というのが厄介だな。」

「養女ですか。嫡子がいないのでしょうか?その辺りも探ってみます。」

「頼むよ。今日はこの酒を楽しむことにしよう。」

「それは?」

「御神力が含まれる酒らしい。飲めば御力のもと?なのかな?力量が増えて御力が使えるようになるらしい。ただ、これを飲んだ日輪宮の宮司が禊祓をやってのけたっていうんだから、酒の力だけではないのだろう。そこは黙っていたがな。」

「そのような物があるのですか。」

「もっとも、酒よりは御神域に籠るほうが良いとは言っていた。うん、やはり美味いな。少将もどうだ?」

「…頂きます。」

「美味いだろ?」

「確かに美味しゅうございますな。」

「明日には一旦都に戻ろう。支度を頼む。

あと急がないから、皇弟殿に会う機会を作ってくれるかな。」

「畏まりました。」



 都に帰った右近は、一旦自らの屋敷に戻ると、兵部卿への面会伺いの使者をたて、鐵家の御力に関する資料がないか探すよう指示を出す。とはいえ元は中級公家だ。調べるものなど大してない。


「この屋敷の大きさには未だに慣れないな。どうも落ち着かない。」

 

 右近は独り言ちる。


「お帰りなさいませ。首尾は如何で?」

「掃部助か。中々収穫があったぞ。面白い娘に会った。是非取り込みたい。」

「側室にでもなさるので?」

「ははは!あれはそんな玉ではない。それにまだ14、5のはずだ。」

「そのように若い女子が面白い者とは、どのような?」

「腕も立てば、頭の回転もいい。何より肝が据わっている。私が将軍と知って恐れることも媚びへつらうこともない。」

「ただの怖いもの知らずでは?」

「いや、たとえ帝であろうと、人間など皆同等くらいに考えているような振る舞いだったな。巫女故か、神より上の者などいないのだろう。」

「なるほど。で、取り込めそうなのですか?」

「今のところ協力的ではあるが…。難しい気性の持ち主だから、機嫌を損ねないようにしなければな。案外こちらの態度も計算していることを見破っているかもしれん。」

「そのような歳の娘が、そこまで考えているでしょうか?」

「日輪宮の宮司を丸め込むくらいの頭は持っているんだ。そのくらいの洞察力はあるのではないか?どのように育てばああなるのか、聞いてみたいものだ。」

「楽しそうでなによりです。」

「ところで掃部、当家の先祖はどのような御力を使っていたか知っているか?」

「確か…、『斬撃を飛ばす』御力だったはずですが。失われて久しいですな。」

「ほう、それは便利そうだな。掃部、私は大社に籠る。先方に使いを出してくれ。」

「兵部様には?」

「もう使いを出した。明日にでも会えるだろうから、許しを貰ってくるさ。」

「畏まりました。」


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