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浄弓の巫女サクヤ 〜里の因習なんて無理なので御神力を使って鬼を倒しに行きます〜  作者: 一角獣
第2部 進化〜進撃の巫女姫〜

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新しい小太刀と弓作り

おはようございます

 翌日、休暇を貰ったサクヤは、迦具夜竹を持って早速木造の集落に向う。新しい弓作りを依頼するためだ。

 木造の集落は、林業を主体に木工品や大工仕事などを手掛ける職人の集落だ。


「親方、ご無沙汰しています。今日は頼みがあって参りました。」

「おお、サクヤ殿。頼みってのはそれか?」


 親方は迦具夜竹に目をやる。


「はい。白狐の里で伐採してきた、『迦具夜竹』という竹で、御力を籠めるのに適した竹だそうです。貴重なものなので、これだけしかありませんが、弓にしたいのです。」

「ちょっと見せてくれるか?」


 迦具夜竹を手に取った親方は、難しい顔で竹を睨む。


「サクヤ殿、これは中々癖の強ような竹だな。ちょっと時間を貰うことになりそうだ。」 

「特に急いではいません。親方にお任せしますので、納得がいくまで拘ってください。」

「いいのか?俺は本当に拘るぜ?ましてや貴重な素材だから、慎重にならざるを得ないからな。」

「はい、親方を信頼してますから、全てお任せします。」

「そこまでいわれるとな。全力でやらせてもらうよ。途中調整で呼び出すがいいか?」

「勿論です。」



 サクヤは迦具夜竹を託すと、今度は金鉱の集落に向かう。『狼牙鉱石』で鍛えた小太刀の進行を確認に行くためだ。



「親方、ご無沙汰です。」

「おお!サクヤ様、お帰りになられましたか!」


 刀鍛冶の鉱吉は主人を出迎える犬のような顔で出迎えた。尻尾があれば振り切れただろう。


「この預かった小太刀、中々よい出来だった。ただ、無茶をさせたので刃が鈍っているやもしれん。」

「刀に無茶をさせるということは、サクヤ様も無茶をされたので?」

「人を数多斬った。穢れは祓ってあるが、見てくれるか?」

「勿論です。どれどれ…。」


 鉱吉は小太刀を受け取ると、まじまじと観察する。


「サクヤ様、人を数多斬ったと言われましたが、肉だけですか?それとも骨まで?」

「腕や首も落としたからな。極力鎧や兜は避けたが。」

「そうですか…。」

「どうかしたか?」

「いえ、刃毀れ一つありません。骨まで斬ってこれは…。まさしく達人技ですな。サクヤ様は益々腕を上げられたようだ。」

「刀が良かったのだろう。鉱吉の腕が良い証左だ。」

「お言葉は有難いですが、どんな名工が打っても、使い手がヘボではこうはなりません。」

「そうか…、鍛錬の成果が出たということなら良いことだ。ところで新しい小太刀の方はどうだろうか?」

「勿論完成していますとも!是非確かめてみて下さい。」

「そうか。それは楽しみだ。」


 鉱吉は一旦奥に引っ込むと、二本の小太刀を持ってきて、恭しく捧げた。


「美しい刀身だな。少し御力を籠めてみていいか?」

「勿論ですとも。」


 サクヤは両手に持った小太刀に御力を籠めた。

 やや青味がかった刀身は、美しい刃文があり、僅かに反りがある。サクヤが御力を籠めると、仄かに蒼白く発光したように見えた。


「おおっ!美しい…。」

「まだまだ籠めれそうだが、今はこのくらいにしておこう。少し斬れ味を試してきていいか?」

「はい?」

 

 ここには藁束も何もない。一体どうする気だろうという気持ちで声が出たが、サクヤは了承と受け取った。

 サクヤは徐に山に入って行くと、15分後に首のない鹿を肩に抱えて帰ってきた。


「凄い斬れ味だ。申し分ないよ親方。」

「そ、そうですか…。」


 鉱吉はあっけに取られたまま、上の空で返事をする。


「この鹿は皆で食べればいい。で、千代の分もできているか?」

「はい!ありがとうございます。千代様の小太刀も完成しています。」

「では、明日取りにこさせよう。借りていた小太刀は返すでよいかな?」

「はい、家宝にさせていただきます。」

「大袈裟な…。だが良い刀だ。良い使い手に渡れば良いな。」


 サクヤは新しい小太刀を腰に佩いて、一旦家へ帰る。



 昼餉を済ませたサクヤは、薬草園にやってきた。留守の間もコノハが世話をしてくれていたようで、取り立てて問題はなさそうである。

 サクヤは白狐山で採取した薬草の種を撒いて、御力を籠めた水をまく。更に土にも御力を籠めると、今撒いた種が芽を出した。


(う〜ん、便利だ。)


「相変わらず規格外だね、サクヤ君。」

「あら、イズマさん。何だかお疲れの様子ね。」

「ヌシ様が不在の間、御神域中を走り回って妖魔退治に明け暮れていたからね。君が不在の山兵は、明らかに戦力不足だったよ。」

「あら?頭達がいたのに?」

「いかに君が規格外だったか痛感させられたよ。多分頭も僕と同じ様な顔をしているんじゃないかな?」

「明日色々言われそうですね。」

「言われて来るといい。僕の苦労も判って貰えると思う。そんなことより御力入りの水を貰えるかな。」


 そう言って水を飲んだイズマは、元気を取り戻して山に帰って行った。



 翌日、弓寮に行ったサクヤは、頭が見当たらないことをいいことに、千代を連れ出して金鉱の集落に向う。千代の小太刀を受け取るためだ。


「親方、千代を連れてきた。」

「サクヤ様、千代様、態々足をお運びくださりありがとうございます。こちらが千代様の小太刀です。」


 千代は受け取ると早速刀身を確かめる。


「綺麗です。」

「斬れ味は私の保証付きだ。思わず笑いが出るくらい斬れるぞ。」

「それは使うのが楽しみです。」

「ははは、中々物騒な会話ですな。何かありましたら直にお知らせください。手入させていだだきます。」

「有難うございます。大事に使わせていただきます。」



 サクヤと千代は、金鉱の集落の周辺を巡回して帰ることにした。

 急いで帰っても、弥九郎の愚痴を聞かされるだけだと思ったのが大きな理由だ。



「妖魔だ。こんなに簡単に遭遇するものか?」

「やはり、我々の不在で手が回ってなかったのでしょうか?」

「かもしれないな。千代、斬れ味を確認しておいで。」

「はい!」


 相手は穴熊の妖魔。通常の穴熊よりかなり大きく、普通の猪くらいある。

 千代は小太刀を抜くと、穴熊に向って疾走する。穴熊は動じる事なくその場で千代を見据えると、千代が斬りかかる体勢に入った瞬間、突然火を吹いた。

 千代は驚愕したが、すぐさま回避のため横に飛ぶ。

 穴熊は千代方を向くともう一度火を吹いたが、手の内が分かってしまえば対応は取れるもので、左右に素早くステップを取りながら穴熊に接近し、穴熊の顔が千代方を向く前に穴熊の首は落ちた。


「危ないところでした。火を吹く妖魔は初めてです。」

「私も話には聞いていたが、遭遇したのは初めてだ。今後はそういった飛び道具も想定して対応しなければならないな。で、どうだった?」

「素晴らしいです。あの大きさの穴熊の首を、大根でも斬るようにスパッといきました。」

「だろう。骨への手応えがない程よく斬れる。千代も小太刀に御力を籠めておくといい。鬼に対応するときに有効だ。」

「はい。」


 2人は妖魔に祝詞を上げ、弓寮への帰路についた。



「え?頭いないの?」

「はい。宮司に呼ばれて帰って来ていません。」

「宮司に?何かあったのか、また愚痴り合っているのか。」

「両方かもしれませんね。愚痴の原因なら判りますけど。」

「千代が最近毒を吐くようになった。今回の旅で穢れに触れ過ぎたかな…。」

「多分、サクヤさんの扱いに慣れただけだと思いますけど。」


「サクヤ、ここにいたか。宮司が呼んでいるぞ。」

「宮司が?報告は昨日したんだが。」

「いや、どうも国府から使者が来ているらしい。」

「国府の?瑞の国の?」

「みたいだな。丹の国や櫛の国ではなかったな。」

「そうか、ありがとう。行ってみるよ。」


 サクヤは気が進まないながらも宮司のもとに向かった。


次回、新章スタートです


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