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浄弓の巫女サクヤ 〜里の因習なんて無理なので御神力を使って鬼を倒しに行きます〜  作者: 一角獣
第2部 進化〜進撃の巫女姫〜

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根回し

 サクヤは、御山から戻って来たので、宮司に会いに行くことにした。鉱石を持ち帰ったことと、白狐の社に行くことを報告するためである。


(そう言えば、白狐の社に行く理由はどうしよう?狐の神様と面識があるとか、ヌシ様の紹介があるなんて言えないし。さて、どうしたものか…。)



 社に戻ったサクヤは、千代を連れて宮司に面会を求めた。


「帰ったか。随分早かったな。」

「はい。運よく鉱石が溜まっている場所がありまして。」


 サクヤは鉱石を見つけた場所を説明する。


「あのような所、よく降りたものだ。見つけたとて、持って帰るのも一苦労だったろう。」

「早速金鉱の集落に行って精錬をお願いしてみます。それと、もう一つお願いがあります。」

「願い…。何故かのう?嫌な予感がするのだが…。」

「そんな大層なことではありません。千代を連れて白狐の社に行ってこようと思います。」

「白狐の社?いったい何のためのに?」

「はい。新しい武器を作るのに、白狐の社の御神域に、弓の素材に良いという竹が生えていると噂で聞きました。また、白狐の社の山兵は、槍術と剣術に長けていると聞きます。是非千代と共に学んできたいと思います。」

「そ、それは構わんが、千代と2人か。若い女人が2人で旅とは不用心ではないか?」

「不用心ですか?私と千代より腕の立つ護衛など、山兵にもそういないと思いますが。」

「いや、確かにそうなのだが…。」

「それに、護衛になるような者を連れて行っては、里の戦力が怪しくなります。」

「それはそうなのだが…、折角槍術や剣術を学びに行くのだ。2人だけでは勿体ないではないか?」

「確かにそうですが…。」


(千代以外に、ハクリ様と会わせるつもりはないんだけどなぁ。)


「せめて、あと2人ぐらい連れて行ってくれ。それなら許可しよう。」

「分かりました。」


(う〜ん、面倒なことになるなぁ。)



「サクヤ様、随分急な話ですね。少し驚きました。」

「すまんな。予てから考えてはいたのだがな。」

「いえ、楽しみです。この後は金鉱の集落に行くのですね。」

「いや、その前に寄るところがある。」


 そう言うと、サクヤは千代を連れて破魔寮に向う。


「伊都、いるか?」

「どうしました?サクヤさん。」

「ちょっと話があるんだ。顔を貸してくれるか?」

「はぁ?わかりました。」


 サクヤは千代と伊都を連れ、人気のない拝殿に来ていた。


「伊都、千代に力量の増やし方を教えてあげてくれないか?」

「えっ?私がですか?それはサクヤさんから…」


 困ったような顔をしているサクヤを見て、伊都は何かを察した。


(そういえば、私がサクヤさんに聞いたときも、何かを隠すような話し方だった。きっと何か理由があるのね。)


「判りました。」


 伊都は千代に、自分のやり方とサクヤに聞いた方法を合わせて教えた。


「そのような方法があったのですね。」

「そうね。今までこの方法が知られてないことが不思議なくらいなの。」

「実は、体験的には知っていたのであろう。だが、力量がなくなるほど使うのは、経験の少ない新人くらいだ。その後、力量が増えていることに気付いても、成長で増えたものと勘違いし、もう一度やってみようとは普通思わない。ある程度使い方を憶えたら、倒れるような危険は犯さないので、力量が増えることは成長以外になくなるのだろう。」

「あぁ、そういうことなのですね。」

「では、御二人は普通ではないということですね。」

「嫌な言い方をするな、千代。」

「サクヤさんと一緒に扱われるのは、ちょっと…。」

「伊都、それは酷くないか…。」

「あ、ご、ごめんなさい!」

「しかし、何故このやり方を広めないのですか?」

「私はそれなりの理由があるのだが、それを教える訳にもいかなくてな。伊都の方は制限がないと思うが?」

「そうですね。なんとなく言い難いというか、サクヤさんの反応を見て、あまり人に言ってはいけないことなのかと思っていました。」

「あぁ、そう言うことか。それは済まなかったな。伊都が皆に伝えるぶんには問題ないと思うぞ。伊都が自分で気付いたことだからな。」

「そうなのですね。宮司様にも相談してみます。」



 サクヤと千代は、社を離れ金鉱の集落にやって来た。


「おお!サクヤ様。先日はありがとうございました!」

「何の話だ?」

「サクヤ様が浸かった後、湯を利用した者達が、怪我はあっという間に治るし、病まで治癒する。これはもう、サクヤ様の御利益だという話になりまして。」

「御利益って、私は神様じゃないんだ。あの湯の効能が強く出ただけだろう。」

「そのような事は今までなかったのです。これをサクヤ様の御利益と言わず、何と言うと?」

「…。」


(ちょっとやり過ぎたか?)


 千代がサクヤをジト目で見ている。


「そんなことより、『狼牙鉱石』を採ってきた。これで足りるか?」

「おおお!本当に採ってこられるとは。これだけあれば充分です。芯材として使うだけですので、この量なら4〜5振は打てるでしょう。」

「そうか。なら、千代の分も含めて3振お願いできるか?」

「勿論です。湯のお礼も御座います。喜んで打たせて頂きます。ただ、精錬と合わせると、それなりの時間がかかりますので、その間はこちらの刀をお使いください。」


 そう言って刀鍛冶の鉱吉は、2振の小太刀を差し出した。


「こちらは、今準備できる最高品質の玉鋼で打った小太刀です。今お持ちの物より、斬れ味、強度とも上をいきます。きっとお役に立てるでしょう。」

「何から何まですまないな。有り難く使わせて貰う。」


 そう言って微笑んだサクヤに、鉱吉は蕩けた。


(またサクヤ様が人を魅了してしまった。あの微笑みは反則だわ…。)



 サクヤ達は山兵部に戻り、弥九郎と平八郎に白狐の社行きを告げた。


「はぁ~。相変わらず唐突過ぎる…。まぁ、確かに必要なことかもしれんな、あの『霊徳童子』を倒すためには。分かった、後は任せておけ。連れて行くのは左馬介と小平太でいいか?」

「小平太を連れて行っていいので?こちらの戦力は問題ないのですか?」

「俺と平八郎が残るのだ。大丈夫だろう。」

「何故私ではないのですか?サクヤ殿!」


 平八郎が不満の声を上げた。


「私が決めたわけではないし、推薦されても断る。」

「そんなぁ〜!」


 こうしてサクヤ達の出立の日になった。




「サクヤ、その大きな犬はなんだ?」

「御山に住む山犬で、『カイ』と名付けた。懐いたので連れて行く。番犬のようなものだ。」

「そ、そうなのか?」 

「サクヤ、あの時の山犬とは違うのか?何か山犬にしては随分大きい気がするが?」


 藤十郎が首を傾げる。


「成長したようです。」


(流石に無理があります、ヌシ様。何故そのような大きな犬の姿に?)


 アカイヌヌシは、普段柴犬のような大きさと見た目だが、今は茶色いシベリアンハスキーのような見た目になっていた。



「それでは、行って参ります。」


 見送りを受けて、サクヤ一行は出立した。


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