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浄弓の巫女サクヤ 〜里の因習なんて無理なので御神力を使って鬼を倒しに行きます〜  作者: 一角獣
第2部 進化〜進撃の巫女姫〜

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宮と社

サクヤがまた喧嘩を売る話です

 翌朝、目を覚ましたサクヤが動き出したのを察して、側女達が部屋に入ってくる。


「身嗜みを整えましたら、朝餉を御運びします。こちらでお顔をお洗いくださいまし。」


 言われるままサクヤは顔を洗う。

 朝餉は、粥に山女の塩焼き、味噌汁と木の芽和え、香の物と質素ではあるが、味は申し分ない。御飯ではなく粥なのは、飲み過ぎた者への配慮だろう。


「ご馳走様でした。とても美味しかったです。」

「それはようございました。田所が今日の予定を告げに参りたいと言ってますが、お呼びしても宜しいでしょうか?」 

「はい、お願いします。」


 側女達が膳を持って出ていくと、入れ替わるように田所が入って来た。

 

「おはようございます、サクヤ様。疲れは取れましたかな?」

「はい、お陰様でゆっくり休むことができました。」

「では、今日のご予定ですが、この後は国府の北にある、『日輪宮』に参拝し、そこで昼餉をとっていただきます。その後、国府まで戻り、兵達の鍛錬を見学頂き、御助言でも頂ければありがたいのですが。」

「『日輪宮』ですか?そこにはどの神様がお祀りされておられるのでしょうか?」

「帝は日輪大神の末裔であられます。日輪宮とは、日輪大社を各国に分祀したもので、帝と我等帝臣は、日輪大神のみを神として祀り、それ以外を神と認めておりません。」

「そうなのですね。考え方は人それぞれですし、人の信仰にどうこう言うつもりもありません。しかし、他の神々を神として認めないというのは、かなり極端ですね。いらぬ軋轢を生むのではないですか?」

「そうかもしれません。しかし、これは朝廷の方針ですので、我々がどうこうできるものでもありません。それ故、梟の社とも揉め事が絶えません。」

「田所様自身は、そのような信仰なのですか?」

「私は神など信じておりません。仮に主人である国守様が神罰を受けるようなことがあれば、私は神にも刃を向けるでしょう。神など信じていては、それもままなりませんからな。」

「なるほど。それはそれで、もっともな考え方です。」

「失礼とは承知していますが、サクヤ様は真に信じておられるので?」


 サクヤは少し間を開け、穏やかに微笑むと田所を見た。


「勿論です。」


(実際に会っているのだから、信じるも何もない。)



 サクヤ達一行は田所の案内で日輪宮に向う。国守は多忙とのことで、同行しなかった。


 

 日輪宮は、マス目に作られた国府の郭の外、鬼門を守る形で作られていた。田所によると、他の国の日輪宮も同様で、国守館の鬼門方向に造られているそうである。


 国府のある平野部から、一段段丘の上に造られた日輪宮は、朱塗りの門に朱塗りの社殿を構えた、堂々たる宮だった。

 因みに、『宮守』と呼ばれるが、社は宮ではない。以前は区別が曖昧だったが、日輪大神こそが唯一の神とする朝廷の方針で、宮を名乗れるのは、日輪大神を祀るものに限られた。その他の神(そもそも朝廷は神と認めていない)を祀るのは社と呼ぶことに決まっている。一方で日輪大社は社なのだが、昔からそう呼ばれているので、大社の意向により変えられなかっただけである。それまで宮の名を冠していた所は、皆社に変えられた。なので、『宮守』も厳密には『社守』とすべきなのだろうが、変えなかったのは社側の反骨心からだった。


 サクヤ達は、参拝を済ませると、日輪宮の宮司と会談することになった。


「遠路遥々ご苦労ですな。宮司の日枝持と申します。」

「赤犬の社、山兵の乾です。」

「山兵…、が代表で?」

「宮司の養女ですが、見識を広める為、今は山兵をしています。」

「ほう、赤犬の社では、宮司の養女がそのようなお役目をなさるのですな。」


(明らかに侮蔑の色が出てるな。)


「立派な御社、いえ、宮ですね。先程聞いたのですが、宮なのに社殿と呼んでいるとか?」

「え、あ、そ、そうですな。まぁ、昔からの習わしと言いますか、そういうものですよ。」

「あぁ、そうですね。日輪大社も社のままですものね。」


((うわぁ、また喧嘩売ってるよ…。))


 藤十郎と弥九郎は額を抑えている。


「日輪宮の宮司ということは、『治癒の御力』がお使いになられるのでしょうか?」

「いえいえ、その御力が使えるのは帝とその一族だけで、我々は使えません。」

「では、どのような御力をお使いになられるのですか?」

「い、いえ、私は御力を使えません。」

「あら?宮司でいらっしゃるのに?お使いになれないのですか?では、『禊祓』は、どなたがなさるのでしょう?」

「『禊祓』は私が行います。」

「御力が使えないのに、どうやって『禊祓』をなさるのですか?」

「『禊祓』なぞ、神事として祝詞をあげれば出来るではないですか。」

「それはで形だけ真似ているだけで、『禊祓』ができていないことになりませんか?」

「そもそも、穢れを得ているなど、どうやって判るのです?見えるのですか?」

「その御力を使う者には見えます。なるほど、町や国府には、穢れを得た人や、邪心がある人が多いとは思いましたが、その原因を垣間見た気がします。」

「なっ!?し、失礼でしょ。貴方には見えると言うのですか?」

「はい。私は宮司候補の一人です。当然見えます。今もはっきりと…。」

「な、私が穢れていると言うのですか!」

「はい。邪な心もはっきりと見えます。」

「何を!この小娘が!山猿風情が聞いたような口を利きおって!」

「はぁ、何でしょうか。国府では邪な心を持つ者の間で、このような言い草が流行っているのでしょうか?以前も聞いた気がします。」

「勘弁下され、サクヤ殿。」


 田所が困ったような顔をしつつ、必死で笑いを噛み殺していた。


「残念ながら、ここで得るものはないようです。お暇いたしましょう。」

「ふざけるな!このまま帰らると思ってか!」

「止めておけ、宮司。この方は、あの妖魔と、愚かな武士達を一人で退治したお方だ。この宮の宮守が総出でかかっても勝てぬであろうよ。」

「えっ?!こ、この小娘が、一人で?そ、そのようなことが…。」

「其方と違って、御力を持っておられるからな。今、小太刀を帯びておられないことを幸運と思った方がよいぞ。」

「ひっ!」


 宮司はその言葉に腰を抜かす。


(だから、人を妖でも見るような目で見るんじゃない!)



「つまらぬ者に引き合わせてしまい、申し訳ない。」


 田所は謝罪するが、どこか楽しそうであった。


「目が笑ってらっしゃいますよ。」

「おっと、気をつけねば。」



 宮の門前町で昼餉をとっていると、店の前に馬が走ってきた。


「田所殿!」


 田所と伝令の武士と思われる男が言葉を交わす。


「申し訳ありません、サクヤ殿。東の国境で、他領の武士と、当方の武士が衝突したようです。詳細は判りませんが、兵を向けるとのことで、この後の予定が無くなってしまいました。」

「それは仕方ありません。ならば、国府の町を散策させて頂いてもよろしいでしょうか?私は里の近くの町でも、余りフラフラさせて貰えないのです。ここなら顔も割れていないので、騒ぎになることもないでしょうから。」

「それは構いませんが、それでよろしいので?」


 田所が藤十郎達の方を見やると、苦笑いで頷いていた。



 サクヤ達は一旦国府館に戻り、衣装を変えた。目立ち難い、国府でよくいる町娘の服を借りたのだ。護衛に弥九郎と小平太が付いて来たが、2人も町衆に近い、武士のような装いである。


「そういう装いだと、サクヤも普通の娘だな。」

「小平太こそ、いっぱしの武士に見えるぞ。」

「こちらの武士には、いい印象がないから、余り褒められている気はしないな。」

「まぁ、褒めたつもりもないからな。」

「おい!」


 小平太はそう言ったが、町娘の装いでも、美人のサクヤは目を引いた。店に入り店主や店の者に声をかけると、皆の鼻の下を伸ばしてデレた顔をしている。


「こうやって町をブラブラするのも楽しいものだな。珍しい物も多いし、活気もある。国守の治世が良いのだろうな。」

「そうだな。単純に楽しんでいるのかと思ったが、しっかりそういう視点でも見ているのだな。」

「猿也殿に鍛えられたからな。つい、そういう視点で見てしまう。まぁ、母様への土産も買えたし、楽しみはしたさ。」


 満足顔のサクヤを見た小平太も満足して国府館への帰路に着く。その懐には、こっそり買った、サクヤへの土産があった。


この宮と社の関係性と役割りが肝になっていきます。

次回はその影響のお話です。

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