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浄弓の巫女サクヤ 〜里の因習なんて無理なので御神力を使って鬼を倒しに行きます〜  作者: 一角獣
第2部 進化〜進撃の巫女姫〜

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39/90

それぞれの帰還

「父上。明日彦、只今帰りました。」

「うむ、無事の帰還なによりだ。何か得るものは会ったか?」

「以前父上に教えて頂いた、赤犬山に行って参りました。」

「ほう、赤犬山に。参拝してきたのか?」

「いえ、夜陰に紛れて潜り込みました。その方が天女に会えそうな気がしましたので。」

「潜り込んだ?!何と無謀な。私とて、迷い込んでしまっただけで、潜り込んだわけではないぞ。で、天女には会えたのか?」

「父上が会ったという天女ではありませんでしたが、鬼神の如き女人に会いました。」

「鬼神の如き…。それは災難であったな。」

「いえ、見目は美しく、神々しい程の若い女子でした。」

「ほう、美しい女子か。よもや懇ろに?」

「まさか。一つ対応を誤れば殺されていたでしょう。そのような事はなく、追い返されました。」

「それ程猛々しいしい女子が?其方ならやり込めれたのではないか?」

「いえ、なんと言うか、まったく敵う気がしませんでした。幽玄斎とも互角に渡り合うのではと思わせる程の圧を感じました。恐らく、私より歳下ではないかと思うのですが…。」

「なんと、それ程か…。其方より若いとは、いくつくらいか?」

「はっきりとは。女子にしては背が高く、顔は幾らかあどけなさが残りますが、男勝な感があるも、かなり美形でした。私より2つ3つ若いのではないでしょうか?」

「なるほどな…。」


(2つ下…。コノハと私の子であれば、計算が合う。よもや、本当にそうなのか?)


「で、それきりか?」

「いえ、宿に戻った後、2日後に宿場町で祭があると聞き、滞在を延ばしたのです。そこにやって来た社の神楽団に、その娘が山兵の装束で現れました。それにも驚きましたが、神楽の舞手としても出演していまして…。」

「山兵?女子なのにか?しかも巫女舞ではなく、神楽にか?」

「はい。そこで神役として舞っていたのですが、その舞は言葉にするのが難しいほど見事で、すっかり魅了されました。観衆もしわぶきひとつあげず魅入っておりました。」

「そ、それは…、是非観てみたかったな。」


(会ってみたい。コノハとの子かもしぬし…。だが、会ってどうする?まさか、父親だと名乗る訳にもいくまい。コノハが望んでもいないことを、此方が勝手にするわけにはいかぬ。)


「どうかされましたか?父上。」

「ん、あぁ、すまぬ。他は何か目に止まったものはあったか?」

「そうですね…。やはり、海は素晴らしかったです。話に聞くのと、実際に見るとでは、こうも違うのかと実感しました。」

「そうか、それはよい経験をしたな。」

「父上。私は是非、あの神楽団を都に呼んでみたいのです。」

「神楽団を?都にか?」


(確かに、娘かもしれぬ者に会うにはよい口実になるかもしれぬ。しかし、明日彦がここまで言う舞手だ。周りが放ってはおくまい。そうなると今は守ってやることも難しい。下手に目立つ事は控えたほうがよい気がする。)


「確かに、観てはみたいがな。ただ、いくら朝廷の権威といえど、社は不可侵。おいそれと命じるわけにはいかぬのだ。それに、其方が入れ込んでおる娘、下手に目立つと、誰に目を付けられるかわからんぞ。」

「そ、それは困ります。あまり、不用意なことはしない方が良いみたいですね。」

「そうだな。何かの折に社に参拝し、神楽を観せてもらうくらいなら、良いかもしれんな。」

「その時は是非、私も同道しとうごさいます!」

「そのような機会があればな。」





「宮司、無事帰還しました。」

「ご苦労だったな。今回は特に問題はなさそうか?」

「やはり、サクヤが出ると観衆の数が違いますね。大変な盛り上がりでした。」

「そうか。だが、問題は起きなかったのだろう?」

「そうですね、観衆は少し慣れてきたのかもしれません。ただ、今回は旅の者が、サクヤに会わせろと言ってきました。話によると都の者、しかも、それなりの身分のようです。」

「何故そのような者がサクヤに?また、魅了でもしたのか?」

「それもあるかもしれませんが…。どうも、御神域に入り込んだところをサクヤに見つかり、追い帰されたようです。」

「何!?そのような事があったのか。」

「特に悪さをしたわけではないようです。大人しく出ていったそうで。」

「都の者、しかもそれなりの身分の者が、何故1人で御神域に入り込んだのだ?」 

「そのあたりはよくわかりません。サクヤに聞いたら、『天女に会いに来たとか、訳の分からんことを言っていた』とのことで…。」

「天女…。まったく意味が判らんな。サクヤのことではないのだろう?」

「そういうわけではないみたいですが、正直よくわかりません。」

「しかし、丹の国といい、都の者といい、何故サクヤは厄介事を引き寄せるのだろうか?」

「無意識に、何でもかんでも魅了してしまいますからね、あれは。」




「ただいま。」

「おかえり。あれ?何か機嫌が悪い?」

「そうかな?そんなつもりはなかったんだけど。」

「眉間に皺が寄っているわ。何かあったの?」

「この間、御神域に入り込んだ阿呆が、今度は神楽を見に来て、私に合わせろと頭に詰め寄っていたから追い返した。」

「はぁ、余程気に入られたのね。都の人なんでしょ?かっこよかった?」

「さあね、男の良し悪しは、よくわからない。それなりの身分の者だろうと言っていたな。安澄辺りなら喜ぶかもしれない。」

「もう、あてにならないわね。何か惹かれるものとかないわけ?」

「惹かれるというのがよく分からないが、不思議と何処かで会ったことがあるような気がする。会ったことがあるはずはないんだが…。」

「へぇ〜。それは面白いわね。何か縁があるのかもよ。」


(縁…?縁って、もしかして彦次郎様と関係があったりする!?もしかして、相手はサクヤの存在に気付いているとか?えっ、どうしよう!)


 自分で言いながら、自分でパニクっているコノハを、不可解そうな目でサクヤが見る。コノハは取り繕うように真顔になる。


「そんな事よりサクヤ、口調!」

「あぁ、忘れてた。きっと機嫌が悪いからだ。」




 里に戻り、神楽団は解散した。片付けを終えた省吾と、護衛に付いていき、武装を解いた小平太が安澄を捕まえて話をしていた。


「安澄、あの形の良い男は誰だったんだ?」

「私は見てないけど、そんないい男だったの?」

「小平太が思わず危機感を憶えるくらいには、いい男だったな。」

「へぇ~、会ってみたかったなぁ。で、サクヤちゃんは、どんな様子だったの。」

「まったく興味なさげに、次会ったら殺す的な事を言ってたな。でも、参拝者としてならいい的な事を言ってた気がする。」

「なんとも、サクヤちゃんらしいというか。逆にそこがいいのかも。」

「なんでも、都から来た身分の高い者らしい。お付がいたくらいだ。」

「え〜、いいなぁ。玉の輿ねぇ。」

「なんだ、安澄はそんなのに憧れているのか?」

「自分がそうなったら困ると思うけど、話を聞く分には素敵じゃない。」

「女子の感覚はよくわからんな。」

「で、小平太は指を咥えて見てたの?」

「誰が指なんか咥えるか!サクヤがさっさと引っ込んだから、出る幕なんて無かったんだよ。」

「ところで、安澄はサクヤの意中の相手とか、知らないのか?」

「さてな?知ってても言わないけどね。」

「なんだよ、意味ありげに。勿体ぶることか?」

「こういう事は、駆引きが大事なの。私が余計な事したら、サクヤに悪いじゃない。まぁ、本当に知らないけどね。平八郎さんじゃないことだけは確かだわ。」 


 安澄は肩を竦めて舌を出す。


「そういう安澄はどうなんだ?」

「そういう省吾はどうなのよ?」


 2人が不敵な笑顔で睨み合っている横で、小平太は苛立ちを隠せず、貧乏揺すりをしていた。


「小平太、貴方悠長に構えてると、他に攫われるわよ。サクヤ、あんなでも人気はあるんだから。なんせ、魅了されてる男が山程いるわけだし。幼馴染の優位性なんて、もうなくなってるわよ。」

「ぐっ…。しょうがないだろ。今のままじゃ、とてもサクヤの隣になんて並べない…。自分の御力すら分からないんだぞ…。」

「そんなこと、関係ないと思うよ。男の魅力って、そういうことじゃないんだけど…。まぁ、好きにすれば。」


 そう言うと、安澄は巫女寮の方に行ってしまった。残された小平太と省吾は、なんとも言えない顔のまま、家路についた。




「宮司、丹ノ国から使いの者が来ています。お会いになりますか?」

「会わぬというわけにもいくまい。今すぐ参ろう。」


(言ってるはしからこれか…。次から次へと、面倒なことだ。)

次回、丹の国の使者です

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