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浄弓の巫女サクヤ 〜里の因習なんて無理なので御神力を使って鬼を倒しに行きます〜  作者: 一角獣
第2部 進化〜進撃の巫女姫〜

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新薬と都の若者

おはようございます

今日も執筆に励みます

サクヤの新しい出会いをお楽しみください

「そういうことでしたら、仕方ありません。あくまで形の上だけということなら。」

「うむ、宜しく頼む。」


(余計な事は言うまい。また詰問されても敵わん。)


「毎度毎度、娘が御迷惑をお掛けしているようで、申し訳わけございません。」

「いやいや、此方がサクヤに頼り過ぎているのだ。この歳で隊長までやらせ、他のお役目まで熟してもらっておるのだ。苦労をかけてすまぬ。」


 藤三郎は、冷や汗をかきながら暇乞いをする。帰路につき、余計な事を言わなかった自分を褒めた。



「とうとう養女にまでなったか…。」

「形だけで、面倒事を回避するための方便だ。」

「ほら、口調。気を付けなさい。討伐から帰った後は、特に酷いわ。」

「そうか…、そうね。気をつける。」

「明日からは休暇でしょ。休む気なんてなさそうだけど。」

「そうね。また御山にでも行ってくる。仲良くなった山犬とも遊びたいし。」

「あぁ、あの山犬。そう、毎回会えるほど懐いてるのね。」

「そうね。まぁ、懐いているのかな。」


(神様に懐かれているというのも、どうかと思うな。)



 翌朝、サクヤは早速山を登る。慣れた道程であるため、昼前には到着した。


「以上が、今回の一件のあらましです。」

「そうか。ご苦労だったな。しかし、武士の頭の腕を落とすとは。其方も無茶をするな。」

「どうせ、首を落とされるのです。大した不便はないでしょう。」

「ははは、物騒なものだな。しかし、人間というものは、強欲なものだな。」

「そうですね。一度御神域を出れば、邪な心の者が溢れております。如何にヌシ様に護っていただいているのか、痛感させられます。」

「妖どもが勝手にやっていることだがな。最近は妖魔に成り果てる者も増えてきた。何れは欲と欲がぶつかり合い、この神域にも欲望の波が押し寄せよう。」

「来るのでしょうか?」

「其方が呼び寄せているともいえるがな。なに、その時は『神罰』なるものでも味合わせてやるわ。」

「ヌシ様の方が、余程物騒です。ただ、私のせいで欲の波が押し寄せるようなら、自分で始末をつけねばなりませんね。」

「あれは冗談だ、気にするな。宮司も厄介払いのために、其方を養女にしたのだろう。其方が始末をつけるために動く方が、余程物騒だと思うぞ。」

「どちらにせよ、極力ヌシ様のお手を煩わせることはないようにいたします。」

「そうか。長く生きていると、中々退屈でな。よい退屈しのぎになると思ったのだがな。」

「退屈しのぎで『神罰』を下されては敵いません。」


 2人はそう言って笑うと、サクヤがアカイヌヌシを一頻り撫で回して、暇を告げた。



 山を下りたサクヤは、山中の薬草園に立ち寄る。

 そこには案の定、イズマがいた。


「大変な活躍だったようだね。」

「ようだねって、どうせ見てたのだろう?」

「まあね。で、これからはどうするの?」

「どうするもこうするもないな。里を守るためにお役目を全うするだけだ。」

「なるほどね。ところでサクヤ君は成人したらどうするの?巫女は辞めることになるんだろう?」

「…、考えたことが無かったな、そんな先のことまで。誰かと夫婦になるとか想像もつかないな。」

「意外とすぐだよ。今からでも考えておいた方がいいんじゃないかな。」

「そうなのかもな。暇があれば考えてみよう。」

「今、休暇中じゃなかったっけ?」

「…。」



 薬草園では、『月読夜草』が蕾を膨らませている。

 繁殖に成功した『月読夜草』は、御力回復薬の生産に目処をつけた。

 御力回復薬を開発する中で、1つの発見もあった。『聖露草ひじりつゆくさ』の花の蜜と『月読夜草の花』を合わせることで、『浄化薬』ができたのだ。

 これは、以前サクヤが、鬼に回復薬を飲ませたことがきっかけとなり、その後の討伐で鬼を浄化をすると、弱体化できることが分かったのだ。

 浄化薬の用途は色々だが、普通の矢や槍先に塗るだけでも効果がある為、鬼退治の必需品となった。

 その『聖露草』も繁殖に成功している。それ等が順調に生育していることを見届け、世話をしたあと、薬草園を後にした。



「ただいま。」

「えっ、もう帰ったの?早かったわね。」

「慣れた道程だからね。薬草園の世話もしてきたわ。」

「仕事が早いわね。明日はどうするの?」

「どうしようかな?御神域の巡回でもするかな。」

「サクヤ、それはお役目よ…。」

「あぁ、そうか。じゃあ、散策ということで。」

「言葉を代えただけだわ。」


「そういえば、今夜は満月だった。夜になったら薬草園に行ってくるわ。」

「あぁ、そういえばそうね。気を付けていくのよ。」

「わかってる。」


 夕餉を食べ終え、夜になるのを待って家をでた。


 サクヤは、暗い山道も苦にすることなく、軽快に歩く。薬草園の入口にあたる、洞窟手前の岩場に着くと、違和感を感じた。


(おかしい。モノノケや動物ではない、人の気配がす。)


 サクヤは、足音を殺し、気配を消す。慎重に歩みを進め、洞窟の出口付近まで来た。


(人がいる。1人のようだが、若い男か?)


 薬草園に植えられた『月読夜草の花』を熱心に観察していた。

 サクヤは矢を番えてから声をかけた。


「何者だ。ここで何をしている。」




 明日彦は、かつて父に教えてもらった、天女がいるという神の山に行くことにした。あの時、珍しく上機嫌だった父の話が、忘れられなかった。


 明日彦は16歳、半年後に元服を迎えることが決まって、慌てて旅に出ることにした。父に元服前方が時間が取れると言われていたからだ。

 旅には武芸指南役の幽玄斎と、近習で幼馴染の徳磨を連れていた。2人には、見聞を広める為の旅だと言ってある。

 しかし、天女がいたという山は御神域で、気軽に立ち入れない。参拝者として入ることは出来るが、それでは天女には会えないだろうと思われた。父は参拝者として入ったわけではなかったからだ。

 とはいえ、2人を連れて山に入るのは憚られる気がした明日彦は、近くの宿場町で宿をとると、夜陰に紛れて宿を抜け出した。


 山に入り込んだはいいが、当然宛があるわけではない。父と天女が逢瀬を重ねたという炭焼き小屋を探してみようと、山道を歩く。幸い今夜は月夜で、月明かりがうっすらと道を照らしてくれた。


 暫く歩くと、山道から枝分かれした獣道のような道があった。獣道のようでも人がある程度通った形跡があり、なんとなく気になった明日彦は、そちらに行ってみることにした。


(どうせ宛らしい宛があるわけではないのだ。多少の寄り道もいいだろう。)


 道は岩場にぶつかりそこで途絶える。しかし、よく見ると岩場の陰に人が一人やっと通れる程度の隙間がある。好奇心にかられた明日彦は、岩の隙間に入っていく。岩場を抜けると洞窟だった。出口が見えたのでそのまま進む。抜けた先には、拓けた平地があり、畑の様になっている。


(このような所に畑?意図的に隠しているのか?)


 明日彦は畑を見ると、見たこともない、儚げで美しい花が咲いている。


(何の花だ?不思議な花だな。だが、儚げで美しい。一株持ち帰ってみるか?)


「何者だ。ここで何をしている。」


(いつの間に。全く気が付かなかった。気配を殺していたのか?)


 明日彦は背を向けたまま、ゆっくり立ち上がる。殺気を感じたため、刺激せぬよう振り向かない方がよいと思ったからだ。


「すまぬ。旅の途中で迷い込んでしまった。怪しいものではない。」

「旅の途中の者が、このような山中に迷い込むわけがなかろう。怪しいものが、自分で怪しい者だと言う訳もなし。信用してもらえると思ったのか?」

「…もっともだな。此方に害意はない。この通り、刀も下ろそう。」


 明日彦は、腰から刀を外すと地面に置き、両手を上げた。


「で、本当の目的は何だ?」

「天女に会いに来た。」

「…ふざけているのか?」

「ふざけてはいない。父上に教えられた。この山でかつて、天女の様な女人に会ったと。」

「本当にいると思ったのか?正気とは思えんが。」

「はは、確かにそうだ。しかし、父上は今でもその女人を忘れられずにいる。それ程の女人なら、会ってみたいと思ったのだ。」

「男というのは、何というか、阿呆だな。」

「確かにそうかもしれん。なぁ、そっちを向いても良いか?」

「向いてどうしようと?」

「声を聞く限り女子であろう?気にならないと言ったら嘘になる。」


 明日彦は、そう言ってゆっくりと振り返った。


(…天女、いや、鬼神と言った雰囲気だな。だが、美しい。)


「若く見えるが、其方、歳は?」

「聞いてどうする。」

「父上が会った天女だとしたら、若すぎると思った。私より下に見える。」

「どうでもいい感想だな。其方は何処の者か?丹ノ国の者か?」

「丹ノ国?いや、都から参った。旅の途中と言うのは本当だ。見聞を広めるという建前でな。本音は言った通りだ。」

「都から…。まぁ良い。このような山に無闇に入り込むと妖の餌になる。さっさと山を下りろ。」

「わかった。素直に従おう。ただ、最期にひとつ教えて欲しい。この花はなんと言う名だろうか?」

「『月読夜草の花』。」

「『月読夜草の花』か。名も儚げで、美しいな。」


 明日彦は女に連行される形で山を下りた。


「また会いたいと言ったら怒るか?」

「次、無断で侵入したら、容赦なく射殺す。」

「厳しいなぁ。だが、また会える気がする。その日を楽しみにしている。」

「気のせいだ。さっさと行け。」




「遅かったじゃない。心配したのよ。」

「山に無断で入り込んだ馬鹿がいたので、追い出してきた。」

「こんな時間に?宿場町の人?」

「いや、都から来た旅の者と言っていた。天女に会いに来たという、阿呆な若者だった。」

「都から…。」


(若者ということは、彦次郎様ではないわね。)


「そんなことより、貴方、花は?」

「あ…、忘れてた。明日また行く。」

「サクヤ、口調!」

「あ…、忘れてた。気をつけるよ。」

サクヤの運命の歯車が確実に回ります

今後の展開にご期待ください

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