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浄弓の巫女サクヤ 〜里の因習なんて無理なので御神力を使って鬼を倒しに行きます〜  作者: 一角獣
第2部 進化〜進撃の巫女姫〜

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報告と養女

おはようございます

本日もお楽しみください。

「どういうことなのか、教えてくれるんだろうな、サクヤ。」


 赤犬の里へ帰還する隊列を少し離れて、弥九郎はサクヤに尋ねた。


「狼の妖を始め、妖がいつもより多く入って来ていたのは、あの武士達の仕業だったからです。」

「武士達の?どういうことだ?」

「詳しくは猿丸が説明します。」

「はい。彼等は自分達が妖や妖魔に狙われることを逆に利用し、自らを囮にして、此方の御神域に誘い込んでいたのです。彼等の狙いは、鉱山から産出される宝石類です。妖魔を鉱山に誘い込み、鉱夫が逃げ出した隙に産出物を盗み出していました。」

「そんなことを…。」

「妖魔を誘い込むのですから、当然危険を伴います。犠牲になったものも多かったでしょうが、下っ端の犠牲など武士からすれば、痛くも痒くもありません。」

「酷いことをするものだな。」

「本来、妖は御神域を好むのですが、赤犬山の御神域は、ヌシ様の影響か、狼は棲息していません。狼達は、御神域の周辺の山には棲息してますので、御力のお零れで妖まで成長したのでしょう。そして、彼等を喰らうことで、妖魔になりました。そこまで考えてやってたのかもしれませんね。」

「何故そのようなことが分かったのだ?」

「サクヤさんの指示で、調査を行いました。侵入してきた武士の下っ端を捕まえて吐かせました。まぁ、洗い浚い話してくれましたよ。そこから横領の件も発覚したわけです。因みに、クーマも此方に送り込もうとしたようですが、強く成り過ぎて手に負えなくなったみたいです。」

「そうか。ところで、サクヤはなんでそんな指示を?確信でもあったのか?」

「猿丸が言ったように、狼が入ってきていたのが不自然でしたので、何かしらの作為があったのではと考えました。」

「なるほどな。だが、頭である俺にも黙ってたのは何故だ?」

「あれ?報告していませんでしたか?」

「お前、わざとだな…。」



 ー 丹の国 国府 ー


「あの者達の斬首が終わりました。」

「うむ。全員か?」

「一部の足軽は逃亡したようですが、家人は全て、別の者が捉えました。」

「そうか。ところで、横領を報せてきたのは、赤犬山の者と聞いたが?」

「はい。間者のようなものでしょう。妖魔の調査に入ってきたら、そのような話を聞いたので、ついでに調べたとのことです。」

「ついで?余程の暇人か物好きか。しかし、奴等とて腕に覚えがある者が達だ。1人で奴等と妖魔を倒した山兵というのは何者だ?」

「それが、余程恐ろしいものでも見たのか、皆まともに口を利けぬ有様でした。」

「その話が本当なら、そうもなろう。しかし、山兵にそれ程の手練れがいるのか。うちに欲しいくらいだな。」

「それが、梟の山の者の話では、女子ではないかと言っておりました。」

「女子だと?!山兵にか?だとすれば、奴等はたった1人の女子に負けたのか?しかも妖魔まで…。」

「はっきりとした話ではないようで。彼等も面識がない者だったようです。名乗りもせず、立ち去ったとか。女子にしては背が高く、見惚れるほど美しいが、近づくのが恐ろしい程の雰囲気を醸しておったとか。」

「ほう、それほど美しいのか。そして腕が立つ。面白い。会ってみたいものだな。」

「しかし、なにぶん他領の、しかも社の者ですから。呼びつける訳にもいきませぬ。」

「なんとかならぬものか。此度の働きに報償を与えるとか、口実を付けれぬか?」

「本人が出てくるとは限りますまい。」

「ならば、余自ら参拝と称して…」

「お辞めください!瑞の国守に知られれば大事になります。」

「だろうな。仕方ない。本人が来るかは分からぬが、報償の話、進めておけ。」

「かしこまりました。」




 サクヤ達討伐隊は、無事帰還すると、宮司への報告に赴く。


「サクヤと猿丸も来い。」

「報告は頭の仕事でしょう?私は休暇に入ろうかと…。」

「いいから来い!命令だ!」


 何時になく強気な弥九郎に、サクヤは仕方なく、そしてとても嫌そうに付いていく。



「ご苦労だった。随分あっさり終わったのだな。」

「はい。本当にあっさりだったらよかったのですが…。」

「どういうことだ?」


 弥九郎は事の顛末を宮司に説明する。その後ろでサクヤは知らん顔をして、そっぽを向いていた。猿丸は何故かニコニコ笑っている。


「私は頭が痛いぞ、サクヤ…。」

「私は胃の臓に穴が空きそう、いや、空いたやも知れませぬ。」


 報告を聞いた宮司は頭を抱え、藤十郎は胃を抑える。


「もう少し穏便に事を収められぬものか…。少なくとも、サクヤが手にかけずとも、あちらの国守に報せるだけで良かったのではないか?」

「猿丸も、何故動く前に此方に報告しなかった?」

「一応、頭には調査に赴く旨を報せておきましたよ。」

「お前、報せておいたって、事後報告で紙一枚、人伝によこしただけじゃないか!」


 隠密寮の頭、猿蔵は顰めっ面で猿丸を睨む。


「当然弥九郎も…。」

「はい。全て終わってから聞いた話です。」


 宮司、藤十郎、弥九郎、猿蔵が揃ってサクヤを睨むが、サクヤは澄まし顔でそっぽを向いたままである。


「もう少し素直で純粋な娘だったと思ったが…。どうしてこうもヤサグレた?」

「頭の影響でしょうか?」

「なっ!?私のせいですか?確かに無理をさせ過ぎている自覚はありますが、そこは宮司だって解ってらっしゃるはずじゃないですか!」

「藤十郎、弥九郎の言い分はもっともだ。私達にも責任はあるだろう…。」

「すみません。少し現実逃避をしたかっただけです。この先に起こり得る問題を考えると…。」

「そうだな…。」


 宮司、藤十郎、弥九郎、猿蔵は、今度は揃って溜息を吐いた。


「全て無事解決し、八方丸く収まったのですから、何の問題がありましょうか?」

「問題だらけなんだよ。今回の一件で、隣国の国守にも、梟の社にもお前の存在を知られた。今後、必ず厄介事を持ち込んでくる。」

「厄介事ですか?」

「そうだ。宮司も私も、何とか其方の存在を隠しながら、この一件を片付けたいと思っていたが、其方は我等の想像以上に目立った働きをしてしまった。丹ノ守も其方の存在を知ったはずだ。必ず接触を図って来よう。」

「放っておけば良いのでは?」

「相手は国守だ。そうもいかん。」

「少なくもと、褒められこそすれ、お叱りを受けるようなことはしてませんが。」

「だからこそ、サクヤを引き込もうとするはずだ。そのぐらいの働きをしている。」

「断ればよいではないですか。」

「他領とはいえ、相手は国守だ。それなりの言い訳がいる。」

「面倒臭いですね。」

「だから!面倒なことになったと言っているんじゃないか!」

「そういうことでしたか。だったら最初から目立つなと言ってくださればよかったのに。目立つ気もなかったですけど。」

「書状で送っただろ?読んでないのか?」

「あぁ、そういえばそんなことも書いてありましたね。失念しておりました。」

「最初から指示を守る気なんてなかっただろう…。目立つ気がなくて、なんであんな大立ち回りになるんだよ。」

「調べを進めるうちに、許し難くなりまして。」

「いやぁ、報告したときのサクヤさんの顔、怖かったなぁ。」


 宮司達4人は、頭を抱えた。


「サクヤ、其方は今後、『乾』を名乗れ。」

「なっ!兄上、本気ですか?!」

「『乾』ですか?」

「そうだ。『乾』の姓は、宮司一族が名乗る姓だ。因みに頭達幹部は『犬飼』、その他の者は『犬山』を名乗る。御神域の外に出て暮らすことになった物が赤犬の里の者と分かるよう、又は御神域の外に出て勤めする時等、外の者に侮られぬように、そのような姓を名乗るのだ。」

「しかし、兄上。何故サクヤに?」

「以前話しただろう。サクヤの御力を考えれば、宮司にもなれる。形だけでも養女にしておけば、国守といえど、おいそれと手出しはできまい。将来の宮司となるものだと言い張ればよいのだ。」

「なるほど…。確かにそれならば言い訳は立ちますな。」

「はぁ…。養女ですか。」

「形だけだ。勿論、其方にその気があるなら、名実ともに養女にしても良いのだが。」

「それはお断りします。形だけで面倒事を免れるなら吝かではありませんが。」

「お前、宮司の養女を吝かって…。」

「では、そういう事にしよう。コノハ殿には私から説明しておく。」


(ちょと怖いけど、仕方あるまい。)

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