表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浄弓の巫女サクヤ 〜里の因習なんて無理なので御神力を使って鬼を倒しに行きます〜  作者: 一角獣
第2部 進化〜進撃の巫女姫〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/87

クーマ退治

おはようございます

「すっかり長逗留になりました。よい返事を持ち帰れて安堵しています。詳細が決まりましたら、また参ります。」

「そちらの宮司にも宜しくお伝えください。」



「やれやれ、やっと帰ったか。」

「余程サクヤに会いたかったのでしょう、色々探ってたようです。」

「まったく困ったもんだ。でも、まさか女とは思わんだろうがな。」

「ましてや14とは。」

「冷静に考えると、無理が過ぎるとは思うがな。」

「ですな。」


 藤三郎と藤十郎は、見送りながら苦笑いを零した。



 一旦帰った使者は、一月後に再びやって来た。


「国守の許しが出ました。決行は半月後。熊の居着いた清水の里の北側から国守の兵が、東から我等梟の社隊、南西から赤犬の社の兵にお願いしたい。清水の里は盆地です。3隊が峠に到着してからの作戦開始となりますが、里の何処にいるかまでは分からないので、見つけ次第笛で合図をする手筈です。」

「うむ、了解した。国守の兵ということは、当然『武士』が統率するのだろう?よくお許しがでたな。」

「国守様も背に腹は代えられないのでしょう。武士達も一度負けているの手前、強く言えないのではと思っています。」

「なるほどな。では、この件は一度頭達に図ってから詳細を決めよう。」

「では、私はそれまで此方に逗留させていただきたく…。」

「…用意させよう。」



「と、言うわけだが。弥九郎、どう考える。」

「考え得る最強戦力で臨む必要があるでしょう。武士ですら敗退してるとなれば、一筋縄ではいきますまい。」


 思案顔の弥九郎に、左馬介は尋ねた。


「国守というのは、瑞ノ守様とは違うので?」

「隣の国守なので、丹ノ守様だ。赤犬山の御神域は、隣国の丹ノ国に接しているからな。今回向うのは丹ノ国だ。」

「あぁ、なるほど。つまり、梟の社は、丹ノ国の中にあるんですね。」

「そうだな。うちもだが、御神域は国守の支配地内にあるが、支配を受けているわけではない。其々独立して自治を行っている。因みに、各国に国守を派遣しているのが『帝』だ。」

「あぁ、何か最初に習いましたね。思い出しました。じゃあ武士ってのは?」

「国守の家人だな。分かりやすく例えるなら、国守が宮司で、武士が山兵の頭や隊長格だな。足軽が兵だ。」

「なるほど。じゃあ俺は足軽か。」

「ただ、あちらの武士達は曲者が多くてな。表向きは国守に従っているが、裏では邪な事をしている連中が多い。だから、余り関わり合いになりたくないんだが…。」

「そんな連中、妖魔の餌にした方がいいんじゃないですか?」

「その妖魔の被害が此方にも来るかもしれんから、困ってるんじゃないか。」

「そうですねぇ。」

「武士か…。折角の機会だ。武士と呼ばれる者達の力を見てみたいな。」

「サクヤ、何か目的が変わってないか?」

「そうか?」

「お前が言うと、何故か不穏なんだよ。」

「失礼な。だが、武を生業とする者達なら、それなりの実力があるのだろう?隠れて見る分には問題ないんじゃないか?」

「何を考えている?サクヤ。」

「何、純粋な好奇心だ。」



「サクヤ達の姿がないようだが?」

「先遣隊と称して、クーマの居座る里に行ってしまいました。」

「はぁ〜。ちゃんと合流できるんだろうな。」

「恐らく。まぁ、サクヤのことです。まったくの考えてなしというわけではないでしょう。」

「とにかく頼んだ。無事の帰還を祈る。」


 藤十郎は弥九郎達を激励したが、一抹の不安が拭い切れなかった。



「あれが国守の兵ですね。」


 サクヤは左馬介と小平太、隠密寮の猿丸の4人で、武士達が駐屯する宿場町に潜り込んでいた。

 猿丸は、情報収集を主な任務とする隠密寮の若手で、サクヤより3つ上である。

 サクヤ達は、旅の行商に扮して、丹の国の宿場町に潜入、武士の動向を探っていた。


「サクヤさんのことだから、何か考えがあるんでしょうが、武士の事を探ってどうするんです?」

「言ったろう?純粋な好奇心だ。」

「俺は嫌な予感しかしないんだが。」

「いくら隊長でも、武士に喧嘩をふっかけたりはしないでしょう?」

「それは武士達次第だな。ところで猿丸殿、武士達の人数は?」

「総勢50と言ったところでしょう。その内足軽が40です。」

「そうか。武士の頭はどの男か分かるか?」

「はい。あちらで酒を飲みながら談笑している、ひときわ大柄な男です。朱色の鎧を纏って、朱色の柄の槍を脇に置いています。」

「あぁ、あれか。」


 サクヤはそれとなく朱槍の男を観察していた。体格は良く力はありそうだが、やや腹が出ており、鍛え上げた身体とは言い難い。姿勢が悪く、体幹も弱そうである。


(こんなのが武士の頭か。周りの者達もそれなりに腕は立つだろうが、今ひとつ纏う気に迫力がないな。)


 サクヤは、少し見ただけで、武士というものに幻滅した。


(態々潜入してまで見に来た甲斐がないな。)



「いや!やめてください。」


 武士の頭は、酒を運んできた店の娘の手を掴み、下卑た笑いを浮かべた。


「酌ぐらいよいであろう。ちょっと付き合え。」

「大将の目に留まるなぞ、光栄なことだぞ、娘。」

 

 取り巻きの男達も下卑た笑いを浮かべなが、娘を取り囲もうとしている。



「外道め。」


 小平太が進み出ようすると、サクヤが小平太の肩を掴む。


「下がってろ。」


 サクヤは既に矢を番え、大将と呼ばれていた男に矢を向けていた。


「まっ!?それは流石に!」


 小平太が止める間もなく、サクヤは矢を放っていた。

 放たれた矢は、男の頬を掠め、茶店の柱に突き刺さった。

 当然、男達は一斉にサクヤの方に顔を向ける。


「てめぇ!何のつもりだ!此方の方が何方か知らぬのか!」

「下衆の頭だろう。」

「テメェ!誰にも向かって口を利いておるのだ!」

「だから、下衆の頭だろう?」


 男達は刀を抜き、サクヤ達に向かってくる。


「おいおい!サクヤ、何やってんだ。本当に喧嘩を売るやつがあるか!」 

「くくく、流石はサクヤさん。やることが何とも痛快ですね。」

「ヤバいですって!どうするんです!」

「下がってろ。これは私の喧嘩だ。」


 サクヤは男達に向かって続け様に矢を放つ。放たれた矢は、何れも男達が持つ刀の柄に刺さり、全員刀を取り落とし、腰を抜かす。


「あ、妖だ!」

「失敬な。私を妖扱いするなぞ、小平太以来だ。」


(まだ根に持ってやがる。)



「て、テメェ。この俺の顔に傷をつけるなぞ、ただで済むと思うなよ!」

「では、どうすれば済むのだ?」

「この朱槍の錆にしてくれるわ!」

「ちゃんと手入れをせぬから錆るんだ。槍使いの風上にも置けぬな。」

「四の五のうるせぇ!くたばりやがれ!」


 武士の頭は、槍を薙ぎ払う。

 サクヤはフワリと跳んで躱すと、男に向け跳躍し、男の結われた髪を小太刀で断ち切る。

 

「これはついでだ。」


 サクヤは男の股間を、思い切り蹴り上げた。

 男は蹲り悶絶する。

 サクヤはそんな男を、蔑んだ目で見下ろすと、捨て台詞をはく。


「お前は、武器を持つに値しない男だ。お前に妖魔退治などできない。いや、する資格がない。さっさと立ち去れ。」



「お前、隠れて見るって、言ってなかったか?」

「まあ、不測の事態ということはよくあることだ。気にするな。」

「いやはや、見事な悪漢退治。典型的過ぎる悪役の台詞は、笑いを堪えるのが大変なほどでしたな。そして、見事にそれを退治するサクヤ様。実に愉快でした。」

「様付けはやめてくれ。私は極めて不愉快だったがな。武器を持つ者は、弱者を守り、慈しまなければならない。あ奴は武器を持つに値しなかった、それだけだ。」

「やっぱり隊長怖ぇ〜。」


 サクヤ達は、その場を速やかに立ち去ると、山兵に合流した。



「サクヤ…。どうするのだ、この後…。」

「なんと言うことはない。粛々とクーマを退治するだけだが。」

「しかし、何のための合同作戦だ。」

「もとから、あんな連中あてにしなくても、我等だけで倒せると思ってる。なんの問題もない。」

「いや、退治できるとかできないとかの問題ではなくなってるんだが。」

「そんなことより、左馬。例のものは用意したか?」

「はい、準備できてます。」

「じゃあ、早速始めようか。」


 サクヤは不敵に笑う。


(サクヤの笑顔が見れるのは良いことだと思っていたが、こんな怖い笑顔なら、見ない方がよかった。)


 弥九郎は泣きそうな気分だった。



 里の水場に置かれた桶には、蜂蜜が並々と入っている。蜂蜜には痺れ薬と睡眠薬が入っていた。


「サクヤ、長く生きてきた妖への敬意は何処に行った?」

「最期に大好物の蜂蜜をたっぷり食べれるんだ。十分な労いではないか。」

「俺は最近、お前が怖いぞ…。」


 用意した蜂蜜を食べに来る熊の妖魔を、少し離れた場所に隠れて待ち構える。


 程なくクーマがやってきて、周りを警戒しながら蜂蜜に近づく。

 躊躇いがちに蜂蜜を一舐めすると、一気に舐め始めた。

 全部平らげたクーマに異変が起きる。身体を痙攣させながら、フラフラしていた。


「薬が効いて来たようだな。」


 サクヤは弓を番える。番えた破魔の矢は黒曜石の鏃で、自ら御力を籠めたものだ。

 サクヤが矢を放つと、クーマの眉間を確実に捉えた。

 クーマは仰向けに倒れて、あっさりと討伐された。

 サクヤ達はクーマの周りを囲むと、祝詞を上げ礼をし、クーマを弔った。


「其方ら、妖魔は何処におるのだ!」


 駆けつけてきたのは、武士達だった。

 クーマは既に塵になり始めていたが、サクヤは武士の方に見向きもせず、弔いの礼を取り続けていた。


「其方、大将のお声掛けを無視するとは何事か!」

「黙れ下衆共。弔いの途中だ。」


 サクヤは武士達に言い放つ。


「無礼者!此方の方を何方と心得る。」

「だから、下衆の頭だろう。もう髪は結えるようになったのか?」


 サクヤが振り向くと、武士達の顔は青褪めた。


「お、お、お前は昨日の!赤犬の山兵だったのか!」

「貴様らのような下衆、私は知らん。」

「知らぬはずがあるか!我等は国守様の家人だ!我等への無礼は、国守様への無礼だぞ!」

「そうか。町の娘に不埒を働くのが、国守様の家人だったのか。」

「な、何を、き、貴様!我等がそのような事をするはずがない!」

「お前、頭大丈夫か?私は知らぬと言うておる。知っているのは不埒を働く悪漢だが、其方らがそうなのか?」

「い、いや、そのような、な、なあ。我等がその様な不埒を働くはずがなかろう。」

「で、あれば、私は其方らを知らぬはずだが?」

「う、うむ。そうだ。我等も其方のことなど知らぬ。」


 武士達はシドロモドロになって、サクヤのことは知らないと言い張った。


「そ、その様なことはいい!妖魔はどうしたのだ。」

「既に退治した。其方等の出番はない。」

「な、た、退治しただと!そんなはずがあるか!我等をもってしても退治できなかった妖魔だぞ。」


 そこに、梟の社の兵達も集まってきた。


「おお、これは赤犬の。なんともあっさり退治されたようですね。」

「この程度の妖魔に梃子摺る理由がわかりません。鍛錬が足らなさ過ぎるのでは?」


 サクヤは辛辣に言い放つ。


「貴方が赤犬の社一の弓の使い手と言われる方ですか?お初に御目にかかる。」

「梟の方でしたか。」

「まさか、こんなにお若く美し方とは思いませんでした。その御技を見逃したは痛恨でしたな。」


「其方等、我等を無視して話をするな!国守様の家人である我等に対して無礼である!」

「五月蝿い、黙ってろ。お前等のような下衆が、国守の家人を名乗るなど、その方が無礼だ。」

「な、な、何を、き、き、貴様!」

「お前等、国守の権威を笠に、随分と悪事を働いているようだな。年貢の横領なぞ、国守に知られたら斬首ものだと思うが。」

「な、なぜ、そん、そのような…。その様なことしておるはずがなかろうが!」

「ちょっと調べれば分かるような、杜撰なやり口だ。今此処で明らかにしてもよいが、いいのか?」

「この餓鬼が!聞いたような口を利く!そこに倣え!」


 男が刀を抜いたが、サクヤは直ぐ様小太刀を抜き、男の腕を斬り落とす。


「うぎゃぁー!う、腕がぁ!」


「既に国守には、お前等の悪事を証拠と共に渡してある。覚悟することだな。」


 サクヤは言い放つと、踵を返して帰路についた。





感想、評価お待ちしております

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ