御山へ
執筆が順調だったので、もう1話あげておきます。
こちらも少し短めですが、お楽しみください。
休暇を貰ったサクヤは、久し振りにアカイヌヌシの座す、御山にはいった。
道々で珍しい野草を採集し、のんびりと向う。
「来たか、サクヤ。」
「ヌシ様、お久しゅう御座います。お元気そうでなによりです。」
言いながら、サクヤはアカイヌヌシをワサワサしている。アカイヌヌシも抗うことなく、腹を見せて目を細めた。
ひとしきり撫で回すと、アカイヌヌシは満足したようにお座りをした。
「先日、狼の妖魔を退治しました。ヌシ様の御神域にいるはずのないものです。」
「それよ。明らかに送り込まれたものだな。元々いたものではない。」
「送り込まれた?誰が何のために?」
「さてな。送り込まれたか、はたまた追い出されたか。なんの利があるかもわからぬ。神域の力が落ちているわけでもなさそうだしな。サクヤが呼び寄せたのではないか?」
「人を撒き餌のように言わないでください。隠密寮にも聞いてみます。」
「余りあてにはしておらぬが、何もせぬよりはましか。イズマ達の巡回も強化させよう。」
サクヤとアカイヌヌシは、ひとしきり話をすると、もうひと撫でして、サクヤは下山するとこにした。
山中に大きな変化は見られないし、御神力の変化もない。
サクヤは折角なので、来た道と反対側に降りて巡回してみることにした。
(先日妖魔が出た北側を周ってみよう。)
サクヤは野草を採集しつつも、常に弓を手にしていた。
北側に周り、鉱山が見える場所まで来た時、山の民らしからぬ形をした男がいた。
男は里では見ない顔なので、御神域の外から来たのだろうと思い、サクヤは声をかけた。
「ここは赤犬山の御神域です。何処から参ったか知らぬが、戻られなされ。」
男はサクヤを見て目を丸くしたが、女と見て侮ったか、言い返してきた。
「うちの里の山じゃ、強い妖魔が出て狩りにならん。御神域なら妖魔もよう入ってこれんのか、獲物も多い。何か一匹狩れたら帰る故、目零せ。」
「そうもいかん。私は赤犬の社の山兵だ。退去せぬなら実力を行使する。」
そう言ってサクヤは矢を番える。
「ま、待て!後生だ。」
「そちらの山は強い妖魔が出ると言ったな。どの様な妖魔だ?」
「大きな熊の妖魔だ。アイツが暴れだしてから、他の妖魔すら逃げ出し、里に入って来るようになった。鬼狩りや国守に頼んだが、返り討ちに遭う始末で、里で生きていくのが難しくなってるんだ。」
「熊の妖魔か…。なるほどな。そいつのせいで、こちらにも妖魔が入って来るようになったのかもしれないな。」
サクヤは男にこの場で少し待つよう告げて、山に入ると、10分程で帰ってきた。
「この猪を持って帰るといい。だが、もう入って来るな。次はないぞ。」
「あ、ありがとうごぜぇます。この御恩はかならず…。」
「いや、いい。もう来るな。」
サクヤは男が去るのを見届け、再び巡回を再開した。
(熊の妖魔か。頭に相談してみるか…。)
「そうか。だが、正式に依頼がない以上、他領に勝手に踏み込む訳にもいかないしなぁ。あそこの国守は誇り高い方だというから、そう簡単にはいかんだろうな。」
「ですが、このままでは、此方にも被害がでます。」
「分かった。宮司にも相談してみよう。てか、お前休暇中だろう?全く休暇になっていないじゃないか。」
「そう言えばそうでしたね。では帰ります。」
(あの歳で、働き過ぎだな。此方の甘え過ぎでもあるが…。どうしたものかな。)
「母様、帰りました。」
サクヤは、コノハに薬草とウサギを差し出すと、狩り装束から着替える。
「もう今更だけど、貴方、男が寄り付かなくなってない?」
「平八郎が相変わらず鬱陶しいけど。」
「あれはやめときな…。」
「そんなつもりはないから大丈夫。」
「すっかり凛々しくなっちゃって、弓寮なんかに入ったのが間違いだったかしら。」
「それなりに楽しんでるけど…。」
「合ってはいたんだろうけどねぇ。男より女にモテるようになるとは思わないじゃない。」
「様付けだけは止めて欲しいんだけどね。」
「やっと口調が戻って来たわね。貴方、男口調が戻るまでにかかる時間が、日に日に延びてるわよ。」
「そう?女言葉で指示出すのって難しいのよ。咄嗟の場面で『戻りなさい!』より、『戻れ!』の方が早いでしょ。」
「隊長ともなればそうなるのかもね。折角周りにはいい男も多いのに勿体ないわね。左馬介君とかどう?」
「まだまだ頼りないかな。もう少し鍛えればいい線いくと思うけどね。」
「戦力の話なんかしてないわよ。」
(里の男に惹かれないところなんか、私に似なくてもよかったのに…。)
第2部2話目ですが、上手く書けているのでしょうか?
ご意見ありましたら、叱咤でもかまいませんので感想を書いていただけると嬉しいです。
評価の方も、高評価をとは言いませんので、
率直な評価を頂ければと思います。
宜しお願いします。




