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浄弓の巫女サクヤ 〜里の因習なんて無理なので御神力を使って鬼を倒しに行きます〜  作者: 一角獣
第1部 覚醒〜巫女への道〜

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30/89

配属

第1部はこの話で完結です

お楽しみください

 サクヤ達は、全ての研修を終えた。弓寮の後もいくつか周ったが、御力の使い方をある程度把握できたサクヤは、これといった事件も起こさず無事終えたのは快挙といえた。


「で、結局サクヤは行きたいとこ決まったのか?」

「私は特にないけど、弓寮と神楽寮から希望を出すよう圧力がかかってる…。」

「あぁ、なるほどな…。」

「小平太はどうするか決めたの?」

「俺は第1希望を槍寮にする。第2希望は特にないけど、弓寮にしておけばどっちか引っ掛かるかと思ってる。」

「そんなに、山兵になりたいんだ?神楽はいいの?」

「神楽は俺より上手いやつがいっぱいいるからな。」


(サクヤを守るなら、俺が強くならなきゃならない。山兵なら鍛えられるし、サクヤが弓寮に行っても、神楽寮に行っても、比較的近くにいられるしな。)


 結局サクヤは希望用紙を白紙で出した。


(まぁ、なるようにしかならないよね。私の希望が通るとは限らないし。)



 一方、希望用紙を前にした頭達は、お互いを牽制しつつ、配属の検討を開始していた。


「取り敢えず、サクヤは後回しにしよう。サクヤは希望用紙を白紙で提出したしな。」


 一堂はそのことに驚きつつも、其々思惑があるため、顔に出さない。


「まず、鉄太は、造作部を希望している。寮は何処でもいいらしいが、第1希望は大工寮だそうだ。」


 こうして、サクヤ以外の希望が伝えられ、順調に配属が決められていく。



「さて、最後はサクヤだが…。」

「弓寮での実績を考えろ。最早主力扱いだ。サクヤが来れば戦力が格段に上がる。」

「待て、神楽寮での実績を忘れるな。」

「馬鹿言え!混乱を招いたばかりじゃないか。あんた、諦めたんじゃなかったのか?」

「神一本なら客が呼べる。妖狐や姫鬼はやらせない。」

「竜造さんは懲りてないのですね。巫女寮は…、いいです。面倒見切れませんもの。」

「破魔寮は、欲しい!」

「「お前のとこは、ない!」」

「他はいいのか?」

「巫女は大体が巫女寮に所属して、社務部の各寮と兼務が基本だからな。サクヤが特別欲しいということはない。ただ、サクヤが神楽寮に入ってくれれば、社の財政が楽になる。正直神楽をやらせないのは惜しい。」


 財政が楽ではないことは皆知っていることなので、黙ってしまう。こういう雰囲気を打開するのは、決まって空気が読めないやつだ。


「欲しがってるのが、弓寮と神楽寮ってのがなぁ。前例がないところだってのも面白いな。」

「なんだ?平八郎はいいのか?」

「サクヤ殿に槍の才があれば考えるが。それに、うちに来なくても、弓寮なら共に働けるのだ。俺は弓寮を推すぞ。」

「動機が不純だから、素直に喜べねぇよ。」

「宮司はどのようにお考えで?」


 皆が、宮司に注目した。


「本人がこれといった希望もなく、欲しいという寮が2つあるなら、そのどちらかで良いと思うが…。前例は気にせずとも良いのではないか。なんなら巫女が宮司になっても良いではないか。」

「宮司!それこそ前例がございません!そのようなこと、ヌシ様がお許しになるかわりませんぞ。」

「そうか?サクヤはヌシ様にも気に入られているのではないかと、私は思っているのだがな。」


 皆が宮司の意図が読めないまま、配属が決定した。



「では、各自のお役目を伝える。」


 サクヤ達、いや、サクヤ以外は緊張の面持ちで発表を待つ。


「まず、省吾。神楽寮兼務護符寮。」

「えっ?!兼務?」

「なんだ?サクヤ知らなかったのか、お役目は大体兼務だぞ。」


(えぇ、そんな事誰か言ってた?)


「サクヤ、宮守も巫女も人手が不足しておるし、若い者はできることが沢山あったほうが将来役に立つ。だから、基本的に兼務するのだ。では、続けてよいか?」

「はい。」

「では、続いて鉄太。大工寮兼務普請寮。竹蔵は槍寮兼務布教寮。」


 大工寮は、社の修繕やその他建造物の普請を、普請寮は土木全般。布教寮は、御神域外に信仰を広めたり、外部からの依頼を聞いたり、外交を担う部所だ。


「小平太は、槍寮兼務社務。伊都は巫女寮兼務破魔寮、安澄は巫女寮兼務販促寮。」


 販促寮は、護符や御守等の販売、営業全般である。


「最後にサクヤ。弓寮兼務神楽寮。」


(兼務って聞いて、嫌な予感はしてたけど…。やっぱりかぁ。)


「前例の無いことではあるが、破魔寮よりは良いであろう?」

「まぁ、そうですね…。」

「サクヤちゃん凄いね。神楽寮なら、またサクヤちゃんの妖狐が観れるかな?」

「あれはやらない方がいいだろう。参拝者が逃げだすぞ。」

「てか、巫女なのに巫女寮に所属しないってあるんだな。」

「あぁ、それだが。実は巫女の仕事もやってもらう事になるだろう。サクヤの場合は、神楽部に所属すといった方が正しいかもしれぬ。」

「えぇ…。何だか大変そうですね。」

「ついでに言うと、弓寮の方も、山兵部の所属に近い形になる。サクヤは兵法の心得があると勘助が進言し、軍師の勉強もしてもらう予定だ。」

「いくらなんでも無茶ですよ。そんな事コノハさんが聞いたら怒られますよ。」

「そこは、うむ。そうなのだが。サクヤの可能性を広げたいと、宮司が仰せでな。」

「ぐ、宮司さまが?」

「うむ。宮司が自らコノハ殿の説得にあたると言っておられる。」

「母様の説得もですが、私の了承は後回しでしょうか?」

「だから、2人の説得ということだな。そこは、サクヤの希望を聞くつもりもあるだろうから、コノハ殿とよく相談するといい。」




「巫女寮の仕事は、どの程度やらせるおつもりなのでしょうか?」


 サクヤは宮司と共に帰宅することになり、そのままコノハへの説得が始まった。だか、実際はコノハへの宮司による説得というよりは、コノハによる宮司への詰問と言ってよかった。


「いや、勿論他の巫女のような多岐に渡るお役目は考えておらん。」


 宮司はこの展開を予想していなかったのか、シドロモドロで答える。


「そうはおっしゃいますが、巫女は女職場。サクヤだけ特別な扱いとなれば、どのような陰口を言われるか、お考えになりましたか?」

「いや、陰口など!邪な心を露わにするようなことは無いはず。」

「母様は巫女のとき、どの様なお役目をなさってたのですか?」

「私は巫女寮兼務薬師寮でした。巫女舞を舞いつつ、調薬し、言い方は悪いですが、雑務全般が巫女寮の仕事なので、それらを熟してました。」

「雑務全般…。」

「いやいや、サクヤさんにその様なお役目はさせません。他のお役目が多いので、巫女の仕事全部は出来ぬと、静殿にも伝えておる。」

「サクヤは、家でも調薬の手伝いや、御山から持ち帰った薬草の世話もしています。弓寮と神楽寮だけでも大変なのに、この様な子供にまだ負担をかけようとなさるのですか?」

「そのようなつもりはない!お役目というより、可能性を広げるための勉強だと思って貰えればよい。」

「ほぅ、サクヤの可能性を広げ、その先にどうしようとお考えですか?」


(うぅ…母様が怖い…。)


「い、いや、その、何れは宮司に…。いや、あくまでサクヤさんが望めばの話です!」

「「宮司〜?!」」

「ちょっと待ってください。宮司には跡継ぎがおられるではないですか!何故サクヤが宮司になどという話になるのですか!」

「いや、サクヤさんにはどうも、禊祓の御力があるようでな…。おそらく、うちの息子より力量も多い。それならば、宮司になって然るべきかと。いや、あくまでサクヤさんが望めばの話!」

「そんなもの望みませんよ。」

「いや、そうあっさりと言われると…。」

「はぁ〜、取り敢えず宮司の話は一旦忘れましょう。それ以外は、サクヤがいいと思えば、私からは言うことはありません。」

「サクヤさんは?」

「宮司になる気はありませんが、勉強はしてみたいと思います。」

「そうですか。では、その方向で話を進めさせていただこう。」


 そう言って宮司は、汗を拭いながら帰っていった。


「大丈夫なの?サクヤ。」

「色んな事を知れるのは楽しそうだから。1番役に立てそうなのは弓だろうし。やってみて無理そうなら、その時話してみるよ。」

「そうね。それでいいんじゃない。」


 こうして、サクヤの非常に多忙な巫女生活が始まった。



【第一部 完】

第1部完結です

ここまで読んでくださった方、ありがとうございます

第2部は、サクヤが弓寮に配属されてから数年後の話になります。美しく成長したサクヤの活躍を、楽しんでいただければと思います

第2部からは1話の文章量を増やし、読み応えがあるようにするつもりですが、その分執筆にも時間がかかりますので、更新頻度は落ちる事になります

執筆へのモチベーション維持のためにも、率直なものでかまいませんので、評価、感想を宜しくお願いします

初挑戦ゆえの拙い文章力で申し訳ありませんが、今後も引き続き楽しんでいただければと思います

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