疑惑
予定通り、更新します
討伐の報告も兼ねた夕餉が行われる為、頭達は集まっている。
皆粛々と席に着くが、弥九郎と平八郎だけは、ずっと言い争っている。
「お二人共、そろそろ始めていた頂きたいので、じゃれ合いはやめてください。」
静は微笑を浮かべながらも冷たい目で2人を見る。
「おお、すまんすまん。では、報告しておこう。私は、サクヤ殿が成人したら、サクヤ殿と夫婦になろうと思う。」
「お前は、本当に馬鹿か!何度言わせる。お前が一方的そう思っているだけで、サクヤにその気があるか確認していないし、実際にしたら変態だ!」
「えぇ!?平八郎さんズルい!だったら俺も名乗りを上げます!俺も独り者だし。」
「いや、新八。お主は無理だろう…。多分、サクヤにも、コノハ殿にも嫌われている。」
「そんなぁ…。」
「そんな現実味のない話はどうでもいいので、ちゃんと報告をしてください、弥九郎さん。」
「うん。今回もサクヤ絡みの報告になるのだが、この討伐でサクヤは2匹の鬼を退治した。最初の一匹は毒殺、2匹目は逃走する鬼を約30間離れた位置からコメカミを射抜いた。ただ、毒殺と言ったが、本人は体力を回復させる薬だと言っていて、コノハ殿が作った試験中の薬らしい。」
「体力を回復させる薬ですか。それはどの程度の効果があるのでしょうか?」
「行き倒れて息絶える寸前の旅人が、丸一日歩けるようになるほどと聞いている。」
「そ、それは凄いですね。そんな物ができたら、戦いが楽になりますね。」
「ただ、ヌシ様の座す山頂付近で採れた薬草を使うとかで、とても貴重な物だから、現段階では大量生産は難しいらしい。」
「あぁ、それは残念ですね。でも、回復薬を飲ませたのに、鬼は死んだのですか?」
「そこなんだ。その理由がよくわらない。鬼が毒殺できるなら、戦い方も大きく変わってくるんだが。」
「変わるって、どうやって鬼に薬を飲ませるんだ?それができる状況なら、矢か槍で殺した方が早いだろ。」
「鬼は酒を好む。酒に混ぜて飲ませるなら、やり方次第でできると思うが。」
「なるほどな。確かにそれならいけそうだ。死なないまでも、弱らせることが出来れば、討伐が楽になる。」
「今度、コノハさんに相談してみましょう。ところで、サクヤさんはどうやって鬼に薬を飲ませたのですか?」
弥九郎が経緯を説明する。
「かなり危ういな。サクヤは疑うことを知らぬのだな。だからこそ山犬とも直ぐに仲良くなれるのだろうが…。」
「山犬ですか?」
今度は藤十郎が『月読夜草の花』を採集に行った時の話をする。
「なんとも、サクヤさんらしい話ですね。山犬まで魅了するなんて。」
静はコロコロ笑う。
「それより私が気になっているのは、サクヤの『浄化』です。先程、宮司に報告後、禊祓をして頂いたのですが、宮司は誰も穢れを得ていないとおっしゃったのだ。」
「お前に、邪心が芽生えた以外はな。」
「お前は黙ってろ!今そこは問題ではない!」
ニヤニヤ笑う平八郎を、弥九郎が睨む。
「討伐の後、宿場町で歓待を受け宴を開いたとき、平八郎の馬鹿がサクヤに酒を飲ませた。酔ったサクヤが、突然舞うと言い出して、奉納の舞を舞ったんだが、どうもその時に『魅了』と『浄化』をしたんじゃないかと思う。」
「ちょっと待って!以前も観客に『浄化』と言って『魅了』の御力を使った疑惑があったけど、両方ってどういうこと?前にも言ったけど、広域展開の護符も使わずに複数人に御力は使えないし、護符を使ってもあの人数は無理よ。しかも、一度に2つの御力を使うなんて聞いたこともないわ!」
「それもだが、『浄化』とは、すなわち『禊祓』だ。『穢れ』を『浄める』のが『禊祓』なのだ。なぜサクヤに『禊祓』ができる?あれは宮司しか使えない御力のはずだか?」
「それは、つまり、サクヤちゃんの父親が宮司ってこと?」
「なっ!?そのようなこと、兄、いや宮司に限ってあろうはずなかろう!」
「でもぉ、『禊祓』は『乾家』の血筋の者しか受け継いでないんでしょ?だとしたら、宮司か、藤五郎さん、あとは藤十郎さんと、それぞれの御子息くらいですか?」
「ま、待て!私も藤五郎兄上も『禊祓』の御力は受け継いでいない。藤三郎(宮司)兄上の息子の年齢を考えても無理がある。」
「だとしたら、宮司しかいませんけど…。」
「宮司なら、邪心が発現しても、自分で『禊祓』できるしなぁ。」
「待て待て待て!もし兄上であるなら、自分から『禊祓』が不要だったなどと言うはずがないではないか。自身が真っ先に疑われるくらい、解っておられよう。」
「…確かにそうですねぇ。」
「だが、宮司はあの時、サクヤ殿の浄化の話を聞いて、すぐに弥九郎の邪心の話に切り替えた。思い当たることがあり、咄嗟に話を切り替えたとも考えれるな。」
藤十郎が狼狽えていると、竜造が助け舟を出した。
「そう言えば、以前に藤十郎が言っていた、神様から授けられたという可能性もあるな。必ずしも受け継いだとは限らんのではないか。」
「なるほどぉ。でも、その話はここで幾ら話しても、推測だけで答えは出ないでしょう。ならば、今すぐ答えの出る、弥九郎さんの邪心について確認しておきますか。」
「なっ!?そ、そんな話より、何故サクヤがあれ程多くの御力を使えるのかの方が大事ではないか?」
「確かにそうですね。弥九郎さんの邪心なんて、大体見当がつきますしね。」
「勝手に見当をつけるな!」
「じゃあ、掘り下げますか?」
「い、いや、いいです…。」
皆の弥九郎を見る目は、明らかに蔑んでいた。
「だが、確かに不可解だな。今解っているというか、考えれるものだけでも、『弓』、『魅了』、『浄化=禊祓』『調薬』後は力量の多さもか…。」
「おまけに、広域展開の護符も使わずに複数人に行使できて、一度に2つの御力を使うって、最早神様じゃないか。実際、死んだ妖にはまで慈悲をかけてた事もあって、弓寮の一部の者は、『サクヤ様』って呼んでるしな。」
「あれでまだ10歳だ。なのに、一部の変態どもが求婚しようとしているんだぞ。」
「もうサクヤちゃんが空を飛んでも疑問を感じないかもしれないな。」
「流石にそれはない…と、信じたい。」
第1部も終盤ですが、第2部はまだ書き溜めた物が少ないので、更新ペースは落ちる予定です。
モチベーション維持の為にも、評価、感想、リアクションを頂ければありがたいです。
宜しくお願いします。




