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浄弓の巫女サクヤ 〜里の因習なんて無理なので御神力を使って鬼を倒しに行きます〜  作者: 一角獣
第1部 覚醒〜巫女への道〜

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禊祓

お楽しみください

 宿場町まで帰った討伐隊は、討伐の礼を兼ねた歓待を受けるため、一泊して帰ることになった。

 紅一点?のサクヤは一人部屋だ。


(1人で寝るのって初めてかも…。ちょっと落ち着かないな。)



 宴は大いに盛り上がった。


「いやぁ、サクヤ殿の弓を初めて見たが、素晴しい。弥九郎より上手いのではないか?」


 酒の入った平八郎は上機嫌で、サクヤに酌をした。

 サクヤは酒を飲んだことがない。酌をされて受けはしたが、飲んでもよいものか困惑していた。


「おや?酒は初めてか?味だけでも知っておけばいい。飲み過ぎなければ薬と一緒だ。」


(酒は百役の長って、聞いたことがあるな。薬ならちょっと飲んでみるのもいいかも。)


 薬と言われて興味が湧いたサクヤは、お猪口に注がれた酒をゆっくり飲んだ。

 ここで出された酒は、米から出来た醸造酒で、濾過が荒いのでやや濁りがある。


(あ、美味しいかも。)


 サクヤはちびちび味わいながら飲み干すと、平八郎は豪快に笑う。


「いや、中々いける口ではないか。ただ、程々にしておくことだ。酒も薬も飲み過ぎは良くない。」


 平八郎はサクヤに、もう一杯だけと酒を注ぐ。それを飲み干したサクヤは、身体に異変を感じた。

 

(えっ?!何これ?御力が湧いてきてる?どうしよう?このままだと御力が溢れ出ちゃう。えっ?!溢れるとどうなるの?)


 サクヤは焦る。御力を発散できる方法は何か?ほろ酔いの頭をフル回転させた。


(そう言えば、ここで神楽を奉納したとき、浄化しろって言われて浄化したはず。あの時は御力を使った!そう、浄化しながら舞えばいいんだ!)


「誰か!笛を吹く人いませんか?」


 槍隊の男が、困惑しながら手をあげる。


「サクヤ、舞います!」


 サクヤは宣言すると、槍隊の男に奉納舞を舞うので合わせて笛を吹いてくれるよう頼んだ。

 男の笛に合わせ、サクヤは五穀豊穣を神に感謝する舞いを、『浄化』しながら舞う。


(鬼退治で穢れに触れたから、禊代わりに浄化で穢れを流せば、ちょうどいい言い訳になるでしょ。)


 この時、サクヤの思いつきは、ある程度正解だったが、2つだけ誤算があった。

 1つは、サクヤとしては『浄化』のつもりの禊祓が、同時に『魅了』の効果が付与されるからである。

 その為、前回の奉納神楽で、観客が暴徒化寸前までになったわけだが、酒に酔ったサクヤに、そこまで考えるのは不可能だった。 

 そして、もう一つの誤算は、『禊』の御力を使えるということが、どういうことかということを知らなかったことだ。 



「サクヤ様…」

「なんと、神々しい…」


 最初、囃し立て酒盛りの場の余興としてサクヤの舞を楽しんでいた宮守達は、いつの間にか黙り込み、惹き込まれていく。

 サクヤは、舞が終わって宮守達を見渡す。


(あれ?変な風に作用した?浄化にならなかったのかなぁ?)


 御力の発散には成功したが、周りの反応がおかしい事に気付いたサクヤは、逃げるように自室に戻ることにした。


「酔いが回ったようですので、私はこれで失礼します。引き続き楽しんでくださいね。」


(もう限界、眠い…。)


 サクヤは布団に倒れ込み、そのまま眠った。



 サクヤが去った後の宴の席は、皆が放心状態から正気に戻るのに時間を要した。


「やはり、サクヤ様は神の使いだ…。」

「落ち着け。サクヤはサクヤだ。10歳の娘にそのような顔をしてると、幼女趣味と言われるぞ。」 


 弥九郎は、呆けた顔をしている者達を嗜める。


「弥九郎殿とて、先程までそのような顔だったではないですか。」

「そ、それは…、つ、疲れが、そう!討伐の疲れが出たのだろう。明日は朝には帰還するのだ。皆そろそろお開きとしよう。」


 一部、呆けた顔のままの者もいたが、各々自室に戻っていった。


「お前がサクヤに酒を勧めたりするから大変な事態になったではないか!」


 弥九郎は平八郎を詰める。


「いや、なんと言うか。あれは将来が愉しみだな。決めたぞ弥九郎!俺はサクヤが成人するまで、嫁をもらわん。サクヤ、いや、サクヤ殿を嫁にする!」

「馬鹿を言うな!お前が嫁をとれんのは、それ以前の問題だ。そんな奴にサクヤが嫁ぐわけないだろ!」

「なんだ、弥九郎。お前はもう嫁がいるからな。サクヤ殿に懸想してもどうにもならんから、八つ当たりか?」

「ば!馬鹿を言うな!そのような邪な気持ちはない!お前、妖に喰われるぞ!」

「そんなわけあるか。俺の気持ちは純粋だ。邪な心などあろうはずがなかろう。」


 2人の不毛な言い争いは、明け方近くまで続いた。



「頭、大丈夫ですか?目の下に隈が…。」

「大丈夫だ…。」

 

 討伐隊は、朝餉を済ませると宿場町を出発し、里への帰路に着き、昼前には里へ帰還した。


「皆お疲れだったな。では、宮司の所へ行くぞ。」


(宮司様?何しに行くんだろう?討伐の報告なら頭だけでいいと思うけど。)


 サクヤの表情を見た勘助が教えてくれる。


「鬼退治は穢れが着くので、宮司に禊祓をしていただくのだ。」

「あぁ、そういうことですか。」


 サクヤは納得したが、浄化は昨日済ませたつもりだ。


(私の『浄化』じゃ不安だし、しっかり祓ってもらう方がいいよね。)



 祓殿に入った討伐隊は、宮司に討伐の報告をすると、2列に並んで禊祓を受ける。


(ん?皆穢れが付いておらん。どういうことだ?鬼を退治したはずだか?弥九郎だけは、何故か邪な心の萌芽が見えるが。)


 宮司は不可解なものでも見るように、討伐隊を見渡したが、禊祓をしないのも不自然なので、気を取り直して禊祓を執り行った。


(弥九郎の邪心は祓えたか…。しかし、不可解だな…。)


 祓いを終えた討伐隊は、その場で解散となり、順番に休暇に入る。サクヤはまたしても一番手である。


「弥九郎、平八郎、ちょっとよいか。」


 宮司は頭2人を呼び止めた。


「少し話が聞きたい。鬼退治は間違いなく終えたのだな?」

「はい、4匹を討伐しました。」

「では、何故そなたらは穢れを得ておらぬ?誰一人として穢れがなかった。」


 2人は顔を見合わせ、「あっ!」と口を揃えた。


「実は、宿場町で歓待を受け、宴を開いたのですが、その時、平八郎がサクヤに酒を飲ませ、酔ったサクヤが奉納舞を舞ったのです。あの後、皆呆けた様な状態になりました。もしかしたら、サクヤはあの舞で『浄化』の御力を使ったのかも知れません。」

「『浄化の御力』?なんだ、それは?」


 弥九郎は以前宿場町で行った奉納神楽の時の話をする。


「あの時の神楽か。『魅了の御力』があるのではと聞いておったが、『浄化』の話は初めて聞いたぞ。そうか、サクヤが『浄化』…。」


(どういうことだ?何故あの娘に、そのような御力があるのだ…?)


「うむ、それは判った。だが弥九郎。そなたに邪心の萌芽が見られたが、何か心当たりはあるか?」


ブッ!


 平八郎は思わず吹き出し、横向いて必死に笑いを耐える。


「なっ?!私に邪心が?そ、そのようなはずはありません!」

「だが、実際見受けられたぞ。」

「宮司。それはですな、弥九郎は嫁がおるにも関わらず、サクヤ殿に懸想したからではないかと思います。」

「ば、馬鹿!平八郎、其方、な、何を言っておる。そんなことがあるか!ましてや、宮司にそのような戯言を言うやつがあるか!」

「ほう、弥九郎がサクヤにか…。」

「はい。ですが、弥九郎だけではありますまい。あの場にいた者の殆どが、サクヤ殿に魅了されたはずです。何言う私も、サクヤ殿が成人した暁には、夫婦になろうと心に決めました。」


 宮司は呆気にとられたが、『魅了の御力』が使われたのなら無理もないかと思った。御力を使わなくても、サクヤには不思議な魅力がある。ただ、疑問も残る。


(あれだけの人数を、一度で『魅了』できるものではないだろう…。ましてや、『浄化』も一緒に行っているのだ。私とて一度に複数人に禊祓をやるときは広域展開の護符を使うのだぞ?)


「う、うむ。何だか大変なことになりそうだが、ご苦労だったな。ゆっくり休んでくれ。」

何もなれけば、夜にもう1話あげます

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