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浄弓の巫女サクヤ 〜里の因習なんて無理なので御神力を使って鬼を倒しに行きます〜  作者: 一角獣
第2部 進化〜進撃の巫女姫〜

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【閑話】竹蔵

おはようございます

 門前町出身の竹蔵は、サクヤや小平太と幼馴染であり、宮守としても同期だった。


 父も宮守だった竹蔵は、幼い頃から弓や槍の手解きを受けていたこともあって、山兵に配属されてからも、同年代の者の中では頭一つ抜けた腕前だった。

 布教寮との兼務だったこともあり、そんな竹蔵が抜擢されるのも当然の流れ、13歳の時には御師見習い兼護衛として各地を巡ることになる。


 御師とは社の参拝者の宿泊等の手配をしたり、布教活動を行う者を言い、社の収入を増やす…もとい、アカイヌヌシを信仰する者を増やすため、各地を巡る者をいう。


 結果、同期でありメキメキと頭角を現すサクヤとの接点はほぼなくなっていた。



 野盗や野武士、妖魔から鬼まで闊歩する中を布教するのは大変だ。

 ただ、野盗や野武士といえど、この国の人々は信心深いので、一目で御師と判る彼等を襲うことは滅多にない。襲ったところで収穫が少ないのもあるが、御師達は大抵山兵と兼務であることが多く、手強いので割に合わないという理由もある。これは歩き巫女の場合でも同様で、大抵隠密寮と兼務しているので、襲うとなれば命懸けだった。



「社が寄越してくれたこの薬、効果が高くて便利だよなぁ。」


 共に旅をする先輩、倫太郎が嬉しそうに回復薬を飲んでいた。


「なんでもサクヤのおっかさん、コノハさんが調合した薬らしく、御山で採取した薬草だから効果が高いらしいですよ。」

「コノハさんの作った薬ってだけで、倍は効きそうだな!そういやぁ、竹蔵はサクヤと同期だったな。」

「ええ、まぁ。」

「凄いよな、あの器量で女だてらに弓兵で小隊まで率いてるらしいじゃないか?」

「幼い頃から、弓だけはまったく敵いませんでした。多分、弓寮でも一二を争うでしょう。」

「コノハさんも美人だし、サクヤも将来有望だ。こんなのと幼馴染なんて羨ましいよ。」

「いやぁ、サクヤは…俺はちょっと遠慮したいです。」

「なんでだよ?」

「あいつ、結構変な奴ですから。」

「そうかぁ、なんか勿体ねぇなぁ。」



 竹蔵はサクヤの弓の指導辺りからサクヤに対する憧れや好意はなくなっていた。


(あいつはヤバい。絶対里を振り回すことになる。)


 竹蔵の不安は、猪事件の時に確信に変わっており、そして的を得ていた。



 

 そんな生活を数年続けていた竹蔵は、実戦経験も豊富な腕利きとして、槍寮でも隊長格になっていた。


 そんなある日、久々に里に戻っていた竹蔵は、小平太と手合せをすることになる。


「いつまでもあの頃の俺と思うなよ。」

「どれ程腕を上げたか見せてもらうよ、小平太。」


 時期的には白狐社での修業を終えて帰って来た頃だった。

 竹蔵は小平太にコテンパンに打ちのめされた。


「まじか…」

「へっへー、どうだ!強くなっただろう?」

「な、何が起きたんだ?どうしてこんなに?」

「俺だって遊んでいたわけじゃないさ。サクヤに負ける訳にはいかないからな。修業の成果が確認できてよかったよ。」

「修業の成果…」



 それ以降、竹蔵は各地で布教活動に励む傍ら、最寄りの社に寄ってはそこの山兵に稽古をつけて貰うようにした。

 その社で一番腕の立つ者を捕まえては手合せを願い、メキメキと力を付けていった。


 1年も経った頃には、「赤犬社の狂犬」とまで呼ばれ、各地の社で恐れられるようにまでなっていた。



 そんな時、布教先の宿場や訪問先の社でサクヤの噂を耳にすることになる。


「『神産みのサクヤ』ってのはあんたのとこの山兵だよな?宮司の養女って話だが、何者なんだ?」

「なんでも将軍からも一目置かれる存在なんだってなぁ。」

「とんでもない力量で、結界術まで操る神の化身だって聞いたぞ。」

「ある里では里の名まで変えて、サクヤって娘を祀っていると…。」


(なんだそりゃ?)



 竹蔵は混乱した。

(少し赤犬の里離れている間に、里ではいったい何が起きているんだ?サクヤは何をやらかしたんだ?

 『神産みのサクヤ』って何なんだよ!)


 竹蔵は暫くサクヤの姿を見ていない。


(最後にあったのは弓寮の新人が妖魔の討伐中に死んだ後くらいか?)


 竹蔵も滅多に里に帰らなかったし、サクヤもあちこち巡回と称してフラフラしていたり、隠密寮で修業したりと、会うことがなかったのだ。



 そんな時、ある宿場の立札に赤犬社の紋が入った張り紙を見つけた。


「赤犬の社山兵部『鬼防寮』隊員募集…?」


(なんだこりゃ?鬼防寮頭 乾サクヤって…あいついつの間に頭になってんだよ!あの小平太を差し置いてサクヤが頭なのか?!俺がいない間に、赤犬の社がとんでもないことになってる…。)


 もう、居ても立ってもいられなかった。兎に角現状の確認をしなくては布教も糞もない。なにしろ、アカイヌヌシ様よりサクヤ様の方が民衆に人気があるほどの状態だ。自分が何の布教を任されているのかさえ分からなくなっている。

 竹蔵は選抜試験に間に合わせるため、全力で里に帰還した。



 里に帰還した竹蔵は、選抜試験の詳細を同僚に聞いて回った。

 そこで、他寮からの移動も可能であることを知り、直ちに申し込んだ。

 

 何故ここまで突き動かされたのか?それは本人にもわからない。ただ、ここで試験を受けなければ取り残されるという恐怖感があった。

 結局、試験当日までサクヤの姿を見ることはないままで、凡そ3年ぶりに見たサクヤは舞台の上で見事な姫舞を舞っていた。


(あいつ…こんなに美しくなっていたのか…そりゃあ『神産みのサクヤ』として崇められるわ…。)


 素直な感想だった。3年ぶりのサクヤはより大人びてより美しく神々しくもあった。

 

 が、感動していたのはそこまで。

 その後に訪れた阿鼻叫喚の地獄絵図に、燻りかけた6年越しの恋は霧散する。


(やっぱりサクヤだわ…)


 散り散りになる受験者達の中に、取り残されるように呆然と立つ竹蔵。

 受験したことを少しだけ後悔した。

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