日輪大神
こんばんわ
宣言通り、もう一話アップします。
週末の夜のお供にどうぞ。
「ふふふ、驚いたかしら?」
「相変わらず趣味が悪いことだ…。」
「あら!?アカイヌヌシじゃない!どうしたのこんなところまで?」
「何をわざとらしい。我が神域に入った段階で気付いておったであろう?」
「ふふふ、やっぱりバレてた?」
「当たり前だ。」
「あのう…ヌシ様。趣味が悪いというのは?」
「コヤツはこれと言った仮初を持たず、やって来た者の姿を映すのだ。そして、驚いているのを見て楽しむという悪趣味な奴なのだ。」
「そういうことでしたか…」
「酷い言いようねぇ。相手を試しているだけで、悪気はないのよ。」
「何が試しだ。我一人で来ていたら我の姿を真似たのか?」
「そんなことしても無意味だからしないわ。それに犬になんてなりたくないもの。」
「相変わらず失礼な奴だ…。」
「ところで、こんなところまで何の用かしら?まさか飛んでくる人間がいるなんて思わないからビックリしたわよ。」
「失礼しました。わたくし、赤犬の社の宮司の養女、乾のサクヤと申します。」
「あら?貴方が『神産みのサクヤ』さんね。噂には聞いていたわ。常世ちゃんが私の仕事を取られたって憤慨してたから。」
「えっ!!そのようなことが!?」
「フフフ、冗談よ。常世ちゃんもビックリしていたわ。とんでもない人間がいるって。憤慨していたのは、そんな人間を世に放ったアカイヌヌシに対してよ。世の均衡が崩れるって。」
「最初に世の均衡を崩したのはお前達であろうと伝えておけ。」
「確かにね。私も加担したから文句は言えないけどね。
話が逸れてしまったわね。で、要件は何かしら?」
「はい。現在、帝を中心とした朝廷は、都の有り様について議論が起きております。遷都がなされて久しいですが、この大社のヌシ様として、この状態と分祀された神宮について如何に感じておられるのでしょうか?」
「う〜ん、正直に言っていい?」
「はい。」
「どうでもいいわ。」
「…やはり、そうですよね…。」
「あら、意外な反応ね。」
「いえ、この山に登っている途中で、この様な争いなど、わたくし自身も正直どうでもよいと考えているのに、ヌシ様である日輪大神が我が事のように考えるとは思えなくなりまして…。とはいえ、帝一族は日輪大神の子孫でもあるわけですから、一応聞いておこうかと…。」
「律儀な子ねぇ。他人の為にご苦労様。
私からしたら、朝廷と霊徳童子の争いなんて身内同士の喧嘩でしかなくてね。どっちが勝っても関係ないもの。人でも鬼でも好きになさいな。どうせ鬼は神域に入れないんだから、人が生き延びたかったら、神域に籠るしかないの。かといって神域以外から人が消えたら、鬼も糧がなくなる。そうなれば自然と鬼も減って、また神域外に人が出ていって増えていく。これも自然の摂理よ。」
「確かにそうかもしれません…。」
「随分物分かりがいいわね。自分が一番自然の摂理から外れた存在なのに。」
「神様がそれを言いますか?」
「私達は最初から摂理の外よ。只の傍観者でしかないわ。そこの犬みたいに面白半分に関わって来る者もいるけどね。」
「誰が面白半分だ。」
(噛みつくのはそっちなんだ…。)
「ただ、貴方みたいな人が出てくるっていうのはそれなりの理由や役割があるのでしょうね。それが何かは私にも分からないけど。」
「私も『必要悪』なのでしょうか?」
「そんな風に卑屈になる必要はないわ。貴方が最も神に近い人間であることは確かだし、時によっては鬼すら神にする子だもの。私から見たら介入し過ぎだけど、人である貴方にとっては必要なことなのでしょう?」
「私はどうあるべきなのでしょうか?」
「そんなこと知らないわ。思うままに好きに生きればいいんじゃない?神だって其々思うままにやっているんだから。神に近い貴方が好きにやっても、私がどうこう言う事なんてないわよ。」
「そうですか…。」
「あと、分祀だっけ?あんなこと人間が勝手に言ってるだけで、私はここにしかいないわ。なにやってんだか?って感じね。」
「身も蓋もないですね。その通りだと思いますが…」
「相変わらず自由な奴だ。」
「で、貴方は何しに来たの?」
「ふんっ、其方が最も高貴な神だと崇められふんぞり返っておるようなら一喝してやろうかと思うたが、相変わらず人に無関心過ぎて言う気も失せたわ。」
「貴方も変わってないようで安心したわ。ただねぇ…。」
「なんだ?」
「蜘蛛ちゃんが虎視眈々と復活を狙っているみたいなのよねぇ。」
「…奴か…。」
「それって、西国の?」
「そうそう。まあ、余程力のある者の協力でもない限り、あの封印は解けないでしょうよ。それこそサクヤさんが協力したらいけるかもしれないけど。」
「しませんよ、そんなこと。」
「そうでしょうね。貴方と蜘蛛ちゃんは気が合いそうにないもの。」
(そういう問題なのだろうか…)
「さて、聞きたいことはこんなとこかしら?」
「そうですね…。申し訳ありません、大した用もないのに押しかけてしまって…。」
「全然いいわよ。久し振りに退屈がしのげて楽しかったわ。またいらっしゃい。それに、夕べこの神域に御力を籠めてくれたのは貴方でしょ?」
「あ、はい。ちょっと力量を消費する必要がありまして…。」
「あぁ、なるほどね。だから人の割に力量が多いのね。しかし、大地に御力を籠めれるのって、蜘蛛ちゃんとこの宮司一族くらいのはずなんだけど…。貴方って本当にやりたい放題ねぇ。」
「あぅ…なんかすみません。」
「別に謝らなくていいわよ。御力なんてやったモン勝ちなんだから。折角こんな所まで来てもらったから、何か授けてあげようかと思ったんだけど…。貴方、大体なんでもできるみたいねぇ。」
「何しろ、ここまで飛んできたくらいだからな…。」
「あぁ、それは私でも無理だわ。今度ここから出たくなったら貴方に頼もうかしら。」
「えっ、出ても大丈夫なのですか?」
「私が年がら年中封印の為に張り付いている必要なんかないわよ。」
「そういえば…どうやって常世産明大神様と連絡を取られておられるので?」
「あの子は御霊だけで飛んでこれるのよ。いいわよねぇ。貴方のその御力、私に授けてくれない?」
「そんな力はありません。」
「なによぉ、そんだけの力があるのにぃ。
あっ!そうだ!人に神力を授ける力を授けれないかしら?」
「えっ!?いや、そんなことできたら、本当に人じゃなくなりませんか?」
「其方、すでに似たようなことをしているではないか…。」
「いや、あれは全然違います!あれは潜在能力を引き出しているだけで…」
「できなかったことができるようになることに変わりはなかろう?」
「うぅ、またこの問答ですか…。ていうか、本当にそんなこと出来るのですか?」
「わかんない。やったことないもの。」
「…。」
「そんな顔しないでよ。実験だと思ってやってみない?」
「実験ですか…そう言われると、やってみたくなってしまいますね…。」
「お前…本当にそういうのに弱いな…。」
「うぅ…好奇心が身を滅ぼすということは重々承知しているのですが…」
「じゃ、やってみようか。」
「は、はい…。」
日輪大神はサクヤの頭に手を添えた。
サクヤがサクヤの頭に手を添える様を、アカイヌヌシは微妙な顔で見ている。
「終わったわ。」
「成功したのですか?」
「わかんない。」
「へっ?」
「だって、やったことないんだよ。そもそも、人に神力を授けるなんて、ここに住むようになった頃以来やってないもの。」
「そ、そうですか…。」
「だから、誰かに試してみて、上手くできたら教えてね。」
「いや、そんなことおいそれとできませんよ…。」
「でも、試してみたいでしょ?」
「うっ…そ、それはそうなのですが…。」
「まぁ、誰にでもって訳にはいかないでしょうし、焦る必要はないわよ。貴方方に比べて、私達の時間は長いから。」
「そうですね…。上手くいきましたら報告に上がります。」
「宜しくね。その時はその人と一緒にいらっしゃい。いい退屈凌ぎになりそうだわ。」
こうしてサクヤは日輪大神のもとを辞去した。
「其方、あれと話が合いそうだな…。」
「そうでしょうか?なんだか振り回されっぱなしで…。」
「其方は神に対してはそれなりに敬意を払った対応をするのに、奴にはそれを感じなかったからな。」
「あれは…日輪大神様の御姿があれで、あのような感じなので、ついこちらの対応も…。なんだか龍子さんや母様と話しているような気分でした…。」
「確かに。奴には神としての威厳が無さ過ぎる。」
「…ですよねぇ。」
帰りは一気に飛んで帰ったサクヤだったが、飛びながらも頭は全く別の事を考えていた。
(誰に何を試そうか…。といっても、どうせ千代になるんだろうけど…。)
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