最終試験 〜実践試験〜
おはようございます
(那由多、大丈夫じゃろぅか?)
私はサクヤという鬼防寮の頭に連れられて、寮舎の裏庭にやってきた。
「さて、封印術を使うと言っていたな。
では、取り敢えずこの石を封印してみてくれ。」
さり気なく出された石は、多くの穢れを含んだ禊石だった。
「はい。」
私は言われた通り、禊石を封印する。
「大八蜘蛛座大社に座します畏き大神よ。この穢れたる石を封ずる力を与え給え。」
封印は上手くできた。にしても、随分多くの穢れが込められた石だ。よくこんなものを平気な顔して持ち歩いていると思う。
「なるほど…封印以外の結界術は使えないのか?」
「はい。」
「おかしいなぁ。結界術なんて一つ使えれば大体なんでも出来ると思うんだが…。」
(この人、何言よるんじゃろ?そんなわけなかろぅが。)
「御力籠めは出来るか?」
「破魔の矢へならできますが。」
「どうもどこの社もその辺りがなぁ。頭が硬いというか…。」
「申し訳ありませんが…サクヤ殿も結界師じゃと聞いとります。そんな都合のええ話はないと思いますが…。」
「いや、私の本職は弓兵だ。」
「へっ?だって、鬼や祟神を封印したって…」
「あぁ、確かに封印したが、あくまで弓兵だ。結界術は最近授かった御力だからな。」
「えっ…授かった?」
(そういえば面接でそんなことを言っていたような…。)
「そうだ。東国から来られタヌキの神様にな。」
「最近?」
「そうだ。1年くらい前になるか…?いや、冬になる前くらいだったから半年前くらいか。」
「半年前に使えるようになって、鬼を封印したのですか?」
「そうだが、それがどうかしたか?」
(なんなんこの人!ほんまに人間なん?神様に授かったとか言っとること自体がワヤなんじゃけど…。)
「あのぅ、サクヤ殿は封印以外にどのような結界術をお使いになられるんですか?」
「…見た方が早いか…。」
その後に見せられた光景は、とても現実に起こっていることとは思えない光景だった。
防御結界、拘束結界、包囲結界、結界の矢…
それを次から次へと繰り出す。
「あの…力量は?」
「この程度ならどうということはない。」
(バケモンじゃ…うちら、とんでもない人のもとで学ぼうとしよった…。こんなん、付き合い切れるわけないじゃろ…。)
「因みに、私の後に結界術を授かった千代は、私と同程度には使えるようになったから、其方もそのうちできるようになる。いや、出来るようになってもらう。」
(無理無理無理無理!カタツムリ!!
うちは◯し屋に転職するつもりなんかないけぇ!)
「心配しなくてもいい。千代は私より教えるのが上手い。二月もあれば出来るようになるだろう。
結界術が使える人間は多い方が助かるからな。宜しく頼むぞ。」
「へっ?それって…。」
「ああ、合格だ。那由多の方はどうなったか判らんが、あれも結界術を使えるなら貴重な戦力だからな。頼りにしているぞ。」
(どうしよう…合格してしまった…。うち、こんなとこで生きていけるん?)
後で聞かされたことだけど、残りの2人も合格したらしい。
交渉術と調薬を得意とする人らしいけど、交渉術の人は元々使えなかった御力を使えるようにされたらしい…。
まったく意味がわからない。
「では、合格者を発表する。」
小平太と呼ばれる男の人が受験者を前に伝達する。本当はもうひとつ最終試験があると聞いていたが、この段階で見極めが出来たので省略するらしい。
「まず、非戦闘員の伊澄、甚七、永遠。兵は慶乃、那由多、響輔、竹蔵、猿田彦、修平、カンナそして、環。以上だ。」
「那由多…合格してしもうたな…。」
「えっ、いけんかったん?」
「うちは少し後悔しとる…。あんたも覚悟しときんさい。あの頭、とんでもない人じゃった…。」
「そうなん?どうしよう…僕、死ぬる?」
「かもしれん。」
「えぇ~!嫌よ!僕まだ死にとぉない!」
「諦めんさい…。」
「諦めろか…確かにそうかもしれんな。ここにいては命がいくつあっても足りないだろうな…。」
響輔はひとりボヤいた。
「まさか、環を合格させるとはな。」
「推薦したのはお前だろう?」
「う〜ん、隊としての動きも悪くなかったし、よく考えて動けていたと思ったんだよ。それに、あの遠距離攻撃は使える。」
「作戦立案もできていたし、あの歳にしては身体も大きいし、悪くないと思ったよ。」
「龍子さんがそう言うなら問題ないでしょう。本当は最終試験ももう少し違う形にしようと思っていたのだが、不要だったな。」
「思ったより人材がいるな。赤犬の社が羨ましい。」
「何を言っている、蒼士郎。お前達は龍神社に帰ったら、あっちで鬼防寮を率いてもらわなければならないんだぞ。」
「えっ?サクヤ様、どういう意味ですか?」
「赤犬の社だけで鬼退治ができるわけないだでしょう?ゆくゆくはどの社にも作って欲しいと思っているんです。蒼士郎も蒼衣殿ももう十分学んだでしょう?ソロソロ帰って鬼防寮を立ち上げて貰おうということです。」
「龍神社に鬼防寮ですか…。」
「はい、ついでに角田の里も面倒を見てもらって、あそこにも鬼防寮を立ち上げていくつもりです。」
「鬼を祀る里で鬼防寮って…。」
「もう鬼じゃなくてヌシ様だ。」
「兵六様なら笑って許されるだろうな。」
「そう言えば小夜さんの様子も見に行かなければな。」
「その前に帝への謁見が待ってるぞ。」
「…嫌なことを思い出した。」
「その不機嫌な態度で謁見するなよ。」
「わかっている。わかっているが…我慢できる自信はない。」
「「うわぁ~。」」
今回も短いお話だったので、元気があれば今夜もう一話あげたいと思います




