第2次試験
おはようございます
第2次試験の面接は、鬼防寮舎で行われる。グループで受けている者はグループ毎に、個人で受けている者は三人一組での面接となる。
午前は里外の者、午後から里の者でと決まっていたので、今寮に集まっているのは、全員昨日の1次試験を受けた者達だ。
猿丸が帰って来ていたので、猿丸も面接官に加わった。
「次、入れ。」
小平太の呼びかけに入って来たのは3人の男達。見るからに腕に覚えがありそうな自信に溢れている。
一人はサクヤを見て鼻の下を伸ばし、一人はサクヤを見たり、伊都を見たり、キョロキョロと落ち着きがない。そして、もう一人は、不審な者でも見るようにサクヤを始め面接官を観察していた。
「まずは自己紹介をしてくれ。」
面接は小平太が中心に質問を行う。
「俺達は鬼斬りの一閃組、俺は前備の多一郎、こっちが後備の牛丸。で、こっちが状況に応じてどちらもできる響輔だ。」
「鬼斬りということは兵としての志望でいいんだな。」
「勿論だ。」
「なぜ鬼防寮に入ろうと思った?」
「鬼防寮も鬼斬りもやらんとすることは同じだ。『神産みのサクヤ』と呼ばれるような方と一緒なら、より多くの鬼が退治できると思ったからだ。」
「御力は何が使える?」
「御力は使えねぇ。この腕だけが頼りだ。」
「生国は?」
「俺が櫛、牛丸が丹、響輔は…どこだっけ?」
「…陽だ…。」
一通り基本的な質問が終わると、サクヤが質問を始めた。
「響輔と言ったな。其方、近接戦闘の得物はなんだ?」
「太刀だ。」
「これまで何匹狩った?」
「さて、憶えておらぬ。」
「勝てぬと思って逃げたことは?」
「何度かある。悪いか?」
「いや、勝てぬのに突っ込む馬鹿はいらない。」
「其方も御力は使えないのか?」
「あぁ、使ったことはないし、使えるとも思ってない。」
「そうか…ちょっと私の前に来い。」
響輔は不信感全開の顔でサクヤの前に出る。
「手を貸せ。」
「こうか?」
サクヤは響輔の手を取る。
「響輔だけ狡りぃぞ!」
多一郎が文句を言うが、サクヤは無視する。
「熱を感じるか?」
「…あぁ。」
「じゃあ、反対の手でこの石を持て。そして、その熱を石に流し込め。」
響輔は言われた通りにやってみた。
「うん、入ったな。力量もそこそこあるようだし、動かし方も淀みない。本当に御力を使ったことがないのか?」
「…俺は元山の民だ…。」
「陽の国か?」
「いや、東の方の国だ。」
「なるほどな。もういいぞ。其方は合格だ。あとの2人は不合格だから帰っていいぞ。」
「ちょっと待てよ!どういう理由かくらい聞かせろよ!」
「まず、お前等の腕じゃ話にならん。この響輔という男はまだ鍛えようがある。そして、御力も使える。お前達にも使えるとは思うが、その力量の器では先が見込めない。それだけのことだ。」
「手合せもせずに、なんでそんな事がわかるってんだ!」
「じゃあお前達は龍子殿に勝てるのか?」
「た、龍子…」
「無理だろう。もっとも響輔でも今はまだ勝てんだろうがな。」
「今はまだ?」
「其方はちゃんと御力が扱えるようになれば、龍子殿から一本とるくらいは出来るようになるだろう。」
「あんたからは?」
「ふっ…やってみるか?」
「…やめておく。命がいくつあっても足らん。」
「そうか。」
「では響輔とやら、明日同じ時間に来るように。最終試験を行う。では、以上だ。」
次に入って来たのは個人で受けた3人だ。
一通り小平太が聞いたあと、話始めたのは猿丸だった。
「三太夫といったか?本当の動機は何かな?いや、叢に何と指示されたのかな?」
「なっ?!い、いや、某は叢様とは何の関係もない!」
「嘘を言っちゃいけない。君が左大臣の屋敷を出入りしているのを確認してるんだよ。」
「お、おのれ!」
三太夫と名乗った男は刀に手をかけサクヤに迫った。
が、直ぐ様結界で固められる。
「何!ば、馬鹿な!祝詞もあげずに…。」
「馬鹿はお前だ。八郎左衛門と一緒に歓待してやれ。」
猿丸は楽しそうに三太夫を連行していった。
残された2名は放心状態で、面接にならなくなったので不合格となった。
「やはり、あぁいうのが混ざるなぁ。」
「想定内だ。寧ろ好都合とも言える。」
「確かになぁ。」
最後の一組は二人組と、個人で受けた一人の三人となった。合格者人数の都合である。 二人組は同じような顔をしているので兄弟と思われた。もう一人は細身で貧相な女だった。
(よく逃げなかったなぁ。)
というのが小平太の素直な感想だった。
「じゃあ、そちらから順に自己紹介してくれ。」
「な、那由多でふ。14歳でしゅ。」
(盛大にかんだな・・。)
「永遠です。那由多の双子の姉です。当然14歳です。」
「慶乃、17歳です。」
慶乃と名乗った女はぼそぼそと消え入るような声で話した。
「志望動機は?」
「私達姉弟は紅の国にある金阿比の社の者で、修行として各地を周っておりましたところ、こちらの社の募集を見まして、何か学ぶものがあるのではと思い、受験しました。私達の社は大八蜘蛛座大社の分霊された社で、我らは結界師です。」
「へぇ、結界師か。そちらは?」
「わたくしは…同じく西国は琴の国にございます、琴亀の社の巫女でございます。御師として各地を周っておりましたが、こちらの募集を目にし、『神産みのサクヤ』様のお役に立てないかと思い志望いたしました。」
「巫女ですか。どのような御力が使えますか?」
慶乃は少し間をおいてから答えた。
「…『誘眠の御力』です…。」
「ほう、それは興味深いな。」
サクヤが興味を示したので、そこからはサクヤの質問時間となった。
「那由多と言ったか、其方はどのような結界を使うのだ?」
「はふぃ、『罠結界』を得意としと…してましゅ。」
「其方、訛りがあるな。地の言葉の方が話しやすいなら、それで構わんぞ。」
「あ、ありがとうございます。」
「で、『罠結界』とは?」
「はい、予め結界を張っといたとこに敵を誘導し、敵を捕縛するってゆう術です。」
「なるほどな。永遠、其方は?」
「私は主に封印を…。」
「そうか。これは3人とも使えそうだな。」
「一つ聞いてもよろしいでしょうか?」
永遠が逆に質問してきた。
「サクヤ殿は鬼を封印したと聞いております。どちらで結界術を身に付けられたのですか?」
「其方はオオシロタタケヌシ様を存じておるか?」
「オオシロタタケヌシ様?存じ上げません。」
「そうか、私はその神様から結界術を授かった。」
「神様から授かった…。受け継いだ御力ではないのですか?」
「そうだ。他にもそのように授かった御力もあるが、まぁその辺りはおいおいだな。」
「他にも…。」
「まあよいだろう。とりあえず三人とも合格だ。明日の同じ時間にここに来るように。」
唐突な合格通知に3人はあっけにとられたが、素直に返事をした。
「サクヤ様、あの慶乃とか言う女…」
「わかっている。まぁ、もう少し様子を見ようじゃないか。面白そうだ。」
「そうですか、ならよろしいのですが。」
「あの慶乃っての、なんかあるのか?」
「多分隠密か何かだろう。何を探りに来たのやら。」
「えっ?!大丈夫なのか?」
「さあな。御力も出身も本当かどうかわかったもんじゃないが、それなりの力量だし、面白そうだぞ。邪気はないみたいだが、悪意なく人を貶める奴もいるからな。そういう手前だと厄介だがなんとかなるだろう。探られて困るようなこともないしな。」
「楽観的だなぁ。まぁ、サクヤがそう言うんなら大丈夫なんだろけど、気を付けてくれよ。」
「わかっているさ。猿丸もいるし心配はない。」
午後からは里の者の面接となる。
今回の試験に、角田の里に行っている者からも希望者がいたが、戻り次第別途実施することになった。
「で、環はどうする気だ?」
「うちには兵の育成をする余裕はない。弓の腕は確かだが、小隊での行動が身に付いてない者を加える訳にはいかない。」
「だよなぁ。てか、弓の腕はいいのか?」
「私が教えていたんだぞ。」
「だって、サクヤ教えるのが下手じゃないか。」
「それは皆が私の言うことを信用しないからだ。」
「いや、感覚的なことが多過ぎるからだろ。」
「他に表現のしようがないからな。」
「言語化が下手なだけだろ。」
「ぐ…。」
「そんなことより、なんて言って不合格にするんだ。」
「3次の最終試験で痛感させるしかないだろう。」
「なんだ?2次は通すのか?」
「なんなら里の者は2次なんてしなくてもいいくらいなんだけどな。いや、3次すらいらんだろう。実力は判っているんだから。」
「まぁそうなんだけどな…。」
結局、午後からの面接では、半数となる10名を合格とした。
環も一応合格である。
落ちたのはほぼ宮守ではない者で、宮守以外で合格したのは1名だけだった。
因みに宮守以外で合格となったのは伊澄という13歳の娘で、あの安澄の妹だった。
伊澄は巫女にはなれなかったものの、商才と交渉力が評価され、サクヤにより御力もあることが確認された。
小平太曰く、
「物静かな安澄。でも口では絶対に勝てない。」
である。
こうして、3次である最終試験に残ったのは、午前から5名、午後から10名の計15名で、その内兵は12名だった。
因みに結界師も兵扱いだ。
「さて、ここから何人残るかねぇ。」
「最終試験は実戦形式だよなぁ?兵じゃない者の実戦形式ってどうするんだ?」
「交渉関係は蒼衣殿に任せる。護符や禊祓は伊都に。因みに結界師は私が担当する。兵に関しては小平太と龍子さんに任せるよ。で、最終確認は私がやる。」
「判った。」
「頑張ります!」
「了解です。」
「任せとき。」
「頼んだぞ。」




