新しい護符の作り方と使い道
低空で飛んで下山したサクヤは、あっという間に薬草園まで戻る。
「えっ!?もう戻ってきたの?」
「飛ぶとこんなに速いとは思いませんでした。人目につくわけにいかないので、余り試すことがなかったので。」
「ははは…きっとチノハ様より速いんじゃないか?」
「流石に本職(?)には勝てないでしょう。ここからは歩いて帰ります。」
「う、うん。気を付けて…。」
(なんであれで霊徳童子には勝てないと思っているんだろう?どう考えてもサクヤ君の方が強いんじゃなかろうか?)
サクヤは鬼防寮まで歩きながら今後について考える。
(御力は授かるにしても、あれだけ渋っておいてすぐに行くのは流石に恥ずかしいよね。自分でも色々研究してみよう。)
鬼防寮に帰ると小平太の元へ行く。
「小平太、鬼防寮の人員を増やす為に選抜試験を行いたい。里と宿場で募集をかけてくれ。」
「と、唐突だなぁ。それが俺にやらせたかったことか?」
「そうだ。ところで小平太、私が転移の御力が使えるようになったらどう思う?」
「どうって…また出来ることが増えたんだなぁって思うだけだけど。」
「…それだけか?」
「だってサクヤは大体なんでもやろうとして出来るようになってるだろ。今更出来ることが増えて驚く理由がないじゃないか。そうだなぁ、死者を蘇らせるとか、変身したりしたら驚くかもしれないが、驚くだけでサクヤだからと納得する気がするな。」
「そ、そうか…。じゃあ、空を飛んだら?」
「ははは!それは驚くだろうな。でもサクヤならやりそうで納得するかもな。」
「小平太は結構図太いんだな。」
「なんだそりゃ?何かあったのか?」
「いや、人と常識の摺合せをしているだけだ。」
「念の為に言っておくけど、俺達はサクヤの言動や思考がある程度分かっているからこの程度だけど、サクヤのことをあまり知らない人から見たら、神の御業以外のなにものでもでもないぞ。常識の摺合せの対象にするなよ。」
「…そうだよな…。」
「あっ…でも逆にサクヤを神様のように思っている連中は、特に疑問を持たないかもしれない。驚いたり感動したりはしても、神様だからで済ますだろうな。」
「あぁ…そうか…。」
(あまり参考にならない、というか小平太は付き合いが長いからそうなるのだろうか?)
「そんなことより、募集をかけるうえで条件とかないのか?」
「特にないな。経験も年齢も御力の有無も男女もない。ヤバそうなヤツは試験で落とせばいいし、才能のある者で霊徳童子を倒すのに必要なら鬼でも妖でも構わんぞ。」
「流石に鬼は来ないだろう。兵六様みたいなのがそんなにいるとは思えないしな。」
「そういうことで頼んだ。1人でやらなくてもいいから、適当に誰か使ってくれ。
あと、伊都と蒼衣殿はどこだ?」
「あの二人なら護符寮だ。最近はほぼ入り浸ってるぞ。」
「そうか。私も護符寮に行くから、試験の日程や項目なんかも小平太に任せるので、頼んだぞ。」
「分かった、任せとけ。」
護符寮に向うサクヤの背を見送る小平太に風磨が声をかけた。
「何ニヤついてるんですか?」
「ニヤついてなんかねぇ。ただ、サクヤもやっと俺達に任せてくれるようになったなと思ってな。」
「そうなんですか?大体無茶振りしてますよね。」
「鬼防寮の人員を増やす為に選抜試験をするらしい。手伝ってくれ。」
「えっ?!唐突ですねぇ。」
「サクヤはいつも唐突だ。俺も今言われたところだ。」
「サクヤさんって凄い人ですけど、小平太さん達もサクヤさんの指示に対応しているんですから、やばいですよね。」
「あれの期待に応えられるようになったら、どこでも頭になれるくらいの実力が身に付いているってことだ。風磨も隊長格になれるようにならないとな。」
「えぇ~、無理ですよぉ。」
「1年も一緒にやっていれば慣れるさ。
さ、仕事仕事!」
「はぁ~い。」
「失礼します。」
「あっ!サクヤ様。」
「蒼衣殿も伊都もお元気そうですね。梟社での成果は聞きました。お手柄でしたね。」
「私は何も。伊都さんがお気付きなったことですから。」
「凄いね、伊都。」
「これでやっと鬼防寮の役に立てそうで安心した。で、どの程度聞いてる?」
「結界術の護符を試しに作ってみたけど、龍子さんがひっくり返ったわ…。」
「サクヤさんの作る護符だと、力量の消費が半端なさそうだもんね。」
「私より千代や騎重郎方が向いてるかもね。
しかし…凄い量の護符ねぇ。」
「向こうで習った物を手当たり次第量産しているから。造作の集落から紙の生産が追い付かないって悲鳴が上がってるわ。」
「でしょうね…。こんなに作って、藤五郎さんに叱られてない?」
「護符は売り物にもなるからね。蒼衣さんが画期的な使用方法を考えてくれたから、飛ぶように売れているわ。」
「画期的な使用方法?」
「はい。護符の文様部分に御力を籠めた黒曜石等を置くことで、護符が発動するようにしたのです。」
「へぇ~、それなら御力が使えない人でも護符が発動できるのか。それは凄いですね。この方法は梟社も知っているのですか?」
「いえ、今度の意見交換会でお披露目予定です。」
「…これ、梟社との取引に使っていいですか?」
「取引ですか?」
「梟社には教わってばかりで申し訳なかったのですが、今回伊都が画期的な作成方法を発見したことで、関係性は五分に戻したと思っています。で、今回、私はチノハ様から『転移の御力』を授けて貰おうと思っているのですが、その際にこの使用方法を教えることで、また五分にできるのではないかと思いまして。勿論、この使用方法を発見した蒼衣殿の龍神社では、今回の護符に関する事は自由に使って頂いて結構です。どのみちうちと梟社だけで全ての需要を賄うことはできませんから。」
「そういうことでしたら是非。この護符だけでも私の留学の成果としては十分ですから。」
「あとは、伊都にも何かないとね。」
「私はこれでやっと貢献できたと思っているから、別に何もいらないわ。」
「そうか。あと、これはすぐにというわけではなく、将来的な話なのですが、蒼衣殿と蒼士郎が帰国したら、龍神社で鬼防寮を立ち上げて欲しいのです。」
「龍神の社に鬼防寮をですか?」
「はい、山兵は主に妖魔に対する組織ですが、どこの社にも鬼を専門にする組織がありません。折角ここで知識と経験を身に付けているのです。是非帰ってからも継続していただきたい。」
「しかし、我社には結界術を使える者がおりません…。」
「その為のコレじゃないですか。」
サクヤは護符をヒラヒラさせてニヤリと笑った。
「あっ!そ、そうですね!確かに、コレがあれば結界術が使えます!」
「はい。伊都と蒼衣殿のお陰で、鬼防寮を大きく展開することができそうです。素晴らしい貢献ですよ。」
「よかった…。本当に貢献できたんだ…。」
「勿論だ。とても大きな貢献だよ。私の同期は皆頼りになる。」
「そういえば…同期といえば竹蔵も鬼防寮に転属希望だそうよ。」
「竹蔵が?そういえば…竹蔵は武者修業と情報収集と布教を兼ねて各地を周ってるって聞いたが?」
「それがやっと帰って来たの。サクヤのせいで、自分の地道な布教がアホらしくなったって言ってた。」
「それは…その、なんだか申し訳ないな…。」
「彼も槍寮兼布教寮だから。ただ、赤犬の社への信仰というより、『サクヤ教』が広まっているって困惑していたわ。」
「なんだその『サクヤ教』ってのは?」
「それは、サクヤが神様ならサクヤを信仰すれば『サクヤ教』になるんじゃない?」
「いや、まてまて!何の教義があるんだ、その『サクヤ教』は?!誰がそんなもの布教しているんだ?」
「いや、主犯は千代さんだと思うけど、咲良矢の里や咲舞の里では定着していると思うよ。」
「…頭が痛くなってきた…。」
「兎に角、今度竹蔵と話してみるといいよ。各地の話も聞けると思うから。」
「そうだな…。なんだか、叱られそうな気がするのは気のせいか?」
「叱られはしないけど、詰られはするかも…。」
「くっ…最近そんなのばかりだ…。」




