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浄弓の巫女サクヤ 〜里の因習なんて無理なので御神力を使って鬼を倒しに行きます〜  作者: 一角獣
第2部 進化〜進撃の巫女姫〜

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憂鬱な帰還

おはようございます

「あんなのを何度もくり返して平然としていたあんたが規格外なのは良く分かったよ。」


 梟の里からの帰りの馬上で龍子がぼやいた。


 昨日のうちに意識は取り戻したものの、初めての力量切れを経験した龍子は、体調が戻るのに一晩かかった。


「私も初めての時はぶっ倒れましたから。誰もが通る道だと思って諦めてください。」

「そんなもんかねぇ。」


 龍子はなんだか騙されたような気持だったが、そんなものと諦めた。


 途中、咲良矢の里で里の者に取り囲まれそうになったり、清水の宿で黄色い声援が飛んだりして、龍子は少し面食らったが、夕方には赤犬の里に無事帰還した。


 帰路は順調だったにも関わらず、里に近づくにつれサクヤの顔色が冴えなくなる。


「どうかしたか?」

「いえ、方々への報告が、どうにも気が重くて。

「今回は特に派手にやらかして、報告すべきことも多いからな。」


「やらかしたつもりはないんですけど。そんなことよりやりたいことがいっぱいあるんですが、報告しないわけにもいきませんし、特にヌシ様には何と詰られるか。」


 里に入ってから、社までの道のりで、サクヤは幾度となくため息を吐いた。


「サクヤ、ただいま帰還しました。」

「…。」

「なぜ黙っているのです?」

「何から聞いたらいいか、困っているんです。」

「何も報告しないとうのもありでは?」

「ないです。」

「そうですか。」

「先に帰還した寮の者たちからある程度聞いていますので、疑問点だけ聞かせてもらってもよいですか?」

「はい。その方が助かります。」

「では、まずは御神域に呪物を置いた者が人の娘だという話ですが、その娘と鬼はどのような関係だと思いますか?」

「まだ何とも言い難いですが、あれほど強力な呪物を娘が何度も用意するのは難しいと思います、少なくとも単独犯ではない、鬼に協力している可能性もあると考えています。祠からの帰路で鬼の襲撃を受けたことから、その可能性は高いと思っています。」

「まだ欠損のある御神域は残っているのか?」

「はい。まだいくつか。ただ、千代を角田の里に置いているので、人手が不足しているのですぐに向うわけには行きませんが、多少打開策も見えてきました。」

「どのような?」

「まずは人員を増やします。里の者に限らず、広く募集をかけ選抜試験を行いたいと考えています。それから、護符を使えば結界術も使えることがわかりましたので、結界の補修も護符でできるか、次回の補修で試してみたいと思います。」

「鬼防寮の人員を里の者以外からも募集をかけるのか…人が集まるのか?」

「幸か不幸か、今回の件で私の名声は高まったようですから、釣られてやってくる鬼斬りなどもいるのではないかと思いまして。今は猫の手も借りたいくらいですから、里以外にも拠点を作るなりして協力者を増やしたいと思ってます。先ずは準寮員として様子を見ながら正規の兵に採用してもいいと考えています。」

「なるほどな。確かにそれなら良いかもしれない。因みにどれくらい増やす予定です?」

「う~ん、兵力として10人、その他の補助役として2~3人といったとこでしょうか。実力を見て前後はすると思いますが。千代、小平太、左馬介を隊長格として考えれば、4個小隊は編成できるようにしたいですね。」

「そうなると兵だけで16人はいるわけか。」

「はい、現状龍子さん、蒼士郎、馳遊馬、騎重郎、風磨、源吾、無理に戦力にすれば猿丸がいますので、5~6人いれば4個小隊は編成できます。」

「寮のことは大体わかった。では角田の里のことについてだが、里の娘で宮司になった者が鬼の子を身籠ったというのは間違いないのか?」

「おそらくは。」

「何故本人が分かる前に分かるのだ?」

「小平太達にも説明しましたが、どうやら私は他の方が認識できない神域の結界や人の力量、邪気や呪詛などが認識できるようです。誰でもわかるものだと思っていたのですが。」

「確かに宮司一族なら呪詛や邪気は認識できる。だが御神域の境界などが認識できということはないし、力量が認識できるなら、『御力量りの儀』など必要なくなる。」

「確かにそうですね。」

「私は結界術を授かったことで結界が認識できるようになったと考えたのだが、サクヤはそれ以前から御神域の境界を認識できたそうだな?」

「そうですね。初めて里から出たときに認識できたと思います。」

「やはり、其方はよくわからんことが多いな。まぁそこはいいだろう。で、その子をどうするつもりだ?」

「どうもこうも、育てていくしかないでしょう。始末すると言おうものなら、兵六様が黙っていませんよ。」

「うっ、そ、そうだな。だが、大丈夫なのか?」

「今のところ邪気等は認識できません。経過は観察していきますが、浄化してもダメな場合は、兵六様と相談し、共に封じ込める必要はあるかもしれません。」

「そうか、そこは其方に任せるほかないな。」


しばし沈黙が訪れ、3人はお茶を飲んで一息ついた。


「最後に銀社のことだが・・」

「あそこのことはいいでしょう。私が転移術を授からなかった場合は、あの馬鹿宮司の首に紐を付けてでも霊徳童子の前に引きずり出します。」

「剣呑だな・・」


宮司と藤馬は頭を抱える。


「あと、今聞き捨てならないことを言いましたね。「転移術を授からない場合」とは??授かるあてがあるということですか?」

「まぁ、なくはないです。」

「もしかして梟社のヌシ様か?態々立ち寄ったのはそういうことなのだろう?」

「鋭いですね。ですが授かるべきかどうか、考えさせていただきたいと答えを保留させてもらってます。」

「なに!?便利だと思えばなんでも授かる其方が保留したのか!?」

「しれっと失礼なことを言いますね。私だって自重することくらいあります!」

「そうか、どこかで妖に食べさせたと聞いたのだがな。」


「ぐっ…。」


「しばらくは里にいるのだろう?」

「そうですね、人員募集や護符の研究もありますし。あ、静さんのお祝いを改めてしなければなりませんから、 少しだけ出かけるかもしれませんが。」

「静か、あれも身籠ったらしいな。まさか、鬼の子ではあるまいな?」

「冗談にしても面白くありませんよ。」

「失言だったな。静には黙っておいてくれ。」

「さて、どうしましょうか?」

「すまん、勘弁してくれ。」

「今日はもう遅いですし、サクヤさんもコノハ殿に会いに帰ってください。父上はきつく叱っておきますから。」

「そうですか、では失礼します。」


(もっと色々質問攻めにされるかと思ったが、意外と真面な質問だったな。)


 サクヤはそんなことを思いながら家へと帰った。


「ただいま、母様。」

「おかえり。貴方、また色々やらかしてきたらしいじゃない。」

「やらかしてはないと思うけど…。兵六様の件はああする他なかったと思うし、銀鰐社の宮司は全面的にあいつが悪いし。たまには自重もしたし。特に何もやらかしてはないわ。」

「貴方からすればそうなのね。でも、『神産みのサクヤ』になる覚悟は決まったの?」

「それはもうしょうがないと諦めた。他に解決策がなかったし。一応皆にも相談したけど、他にいい案はなかったし。猿丸の案は悪くはないけど採用できない案だったからね。」

「そう、相談までした結果なら仕方ないわね。腹くくるしかないわよ。」

「うん、そこは諦めたというか甘んじて受け入れたというか。」

「で、何を自重したの?今のところそんなことに結びつかないけど。」

「霊徳童子を封印する方法として、銀鯛社の宮司の『消滅の御力』は使えそうだと思ったんだけど理屈がわからなくて。帰りに梟社のヌシ様のところに行ったら、『転移の御力』と根本は一緒だって教えてもらったの。で、私なら転移の御力を授けてもいいって言ってくださったんだけど…。」

「自重したの?!なんで?」

「だって、これ以上というか、流石に転移の御力とか、人間離れし過ぎだと思って…。」

「何を今更。そんなこと気にしているの貴方くらいよ。サクヤが転移の脚力を使えるって知られたところで、もう誰も何とも思わないと思うけど。「だってサクヤだし」で終わりよ。」

「そんな簡単に…」

「そんなもんよ。だって貴方もう半分神様扱いじゃない。もう空を飛んでも驚かれないわよ。」


(ドキッ!!!!!!)


「いや、驚きはするでしょ。」

「かもしれないけど、サクヤだからで受け入れられると思うわ。もう今更『治癒の御力』なんて隠す必要ないんじゃない?」

「えっ!?だってあれは、出自に関わることだから、母様にも関係することよ!」

「多分、「だってサクヤだし。」で通じると思うのよね。貴方、結界術や大地への御力籠めにしたって、かなり特殊な御力を使っているけど、それに関して出自を疑われたことなんてないでしょ?」

「そう言われてみれば…。」

「だから、今更できることが一つや二つ増えたところで、もう関係ないと思うんだけど。だって、『神産みのサクヤ』なんだから。」

「ていうか、母様は本当にそれでいいの?だって、娘が神産みだったり神様扱いになったりしてるんだよ?」

「前にも言ったでしょ、聖母にでもなんでもなってあげるって。なんなら貴方の父親のことも有耶無耶になって好都合なくらいだわ。」

「そ、そう…。気にしていたのは私だけだったんだね。」

「子供が親に気を遣うことなんてないの。もっと思うままに生きなさい。」

「うん、ありがとう。でも、中々ふんぎれないものよ。別の意味で人の道を踏み外すことだし。」

「ハハハ!確かに。」


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