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浄弓の巫女サクヤ 〜里の因習なんて無理なので御神力を使って鬼を倒しに行きます〜  作者: 一角獣
第2部 進化〜進撃の巫女姫〜

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角田の里の秘め事

おはようございます

「あの宮司、可愛そうなほど憔悴してたぞ。」

「あいつにはあれくらいで丁度いいだろうよ。精々力量を増やしてもらおう。」


 銀鰐の里に向かう船の上で、サクヤは不敵に笑った。



 銀鰐の里に着くと、来た道を戻るように並の津までは徒で向かう。



「並の津で一泊するのか?」

「並の津から甲の津までは潮と風次第だから、早朝に出発した方が無難だろう。少し早いが宿に入ることにしよう。」

「だったら土産はあんなに早く買わなくてもよかったんじゃないか?」

「ぐっ、い、いや!あのお面はあの時買わなければなくなってしまったかもしれないだろ!」

「あの悪夢を見る呪物だろ。そういえばあれ、どうしたんだ?」

「どうせ帰りも泊まるつもりだったから、宿に預かってもらっている。」

「宿の者達が悪夢を見てなきゃいいけどな。」



 予定通り、来るときに泊まった宿に入り、早い時間だったので街を散策したりとのんびり過ごした。 サクヤは市場のあたりを見物し、昨夜食べて秘かに気に入った烏賊の塩辛と買い食い用に烏賊の姿焼きを購入した。


「サクヤ様、はしたないです!」


「千代!いつの間に。」


「サクヤ様はちょっと目を離すと、どこでどんな騒ぎを起こすかわからないので、付けていたのです。」

「気配の消し方が上手くなったな。」

「そんなことより、食べながら歩くなど慎みのある女子がやることではありません!」

「千代、私に慎みを求めるのが間違っていると思うぞ。そんなものとっくの昔に妖魔に食わせてやったし。」

「妖魔は邪心は食べても、慎みなんか食べません!」

「でも、ここでは皆そうしているぞ。郷に入っては郷に従えと言うだろう?」

「はぁ、こんなでも男性にモテるのですから、世の中不公平です。」

「千代だって好いてくれる男くらいいるだろう?」

「左馬介は特殊なんです。」


「私は左馬だなんて一言も言っていないが。」


 サクヤの一言に、千代は顔を真っ赤にして走り去っていった。


「なんなんだ?あいつ。」


 サクヤが宿に戻ってからも、千代は一言も発しないままであった。


「どうかしたのか?千代。」

「五月蠅い! 黙ってて!」


「なんなんだよ、あいつ。」


 左馬介は、千代にあたられて顰めっ面をしながら頭をかく。


「左馬、千代も年頃の娘になったということだ。そっと見守ってやれ。」

「あんただって年頃のむすめだろうよ、サクヤ。」


 結局千代は、翌日になっても不機嫌なまま、時々サクヤと左馬介をジト目で睨んでいた。


 そんな千代の低気圧をよそに、快晴の海はサクヤ達を乗せた船を順調に運んでいく。 途中イルカの群れに遭遇し、一行ははしゃいで見ていたが、千代はイルカすら睨んでいた。


「思ったより早く着いたな。この分ならこのまま角田の里まで行けそうだ。」

「そうだな。遠征費がかさんでいるからな。このまま里まで行ってしまおう。」


 サクヤと小平太が即決したので、そのまま角田の里まで向かい、夕方には到着した。


「あら、おかえり。思ったより早かったわね。」


 安澄がサクヤ達を労う?と不敵にニヤリと笑う。


「この里、とんでもないものを隠していたわよ。」

「とんでもないもの?」

「そう、少し匂わない?」


 サクヤは鼻をひくつかせたが、特に何も気にならない。因みに、流石のサクヤも、アカイヌヌシに授かった御力が嗅覚を良くする御力ではないことに気付いている。なので、嗅覚は人並みだ。


「少し、硫黄の匂いがするか?」


 蒼士郎が匂いがする方向を探る。


「そう言われてみれば、金鉱の集落と似た匂いがするな。」

「正解!流石蒼士郎様ね。つまり、全鉱の集落と同じものがあるの!」

「鉱山か?」

「小平太、安直すぎるわ。鉱山の匂いじゃないでしょ。」

「温泉…か?」

「そのとおり!しかもここの温泉、湯量が多くて、入ると肌がスベスベになるの。し・か・も!ヌシ様の御神力が溶け込んでいるから、疲労回復に抜群の効果があるのよ!これは単純に人が呼べるわ!」

「なるほど、温泉宿でも造れば良い収入になるかもしれんな。」

「そう!宿ができれば仕事も増える。仕事が増えれば人も増える。人手が増えれば兵力も上げれる。兵力が上がれば安全性も高まって、より来客が増える。来客が増えれば新たな宿も造れて…、」

「好循環を生むというわけか。」

「ご明察!」


「温泉かぁ、久しぶりに入りたいな。設備は整っているのか?」

「最優先で造ったわよ。とりあえずは日帰り入浴ができるようにお風呂と脱衣所は男女で分けて、大きな休憩所も造ったわ。今は食事処を建設中よ。」

「安澄さんはやり手だなぁ。巫女というより商人だね。」

「ふふ、案外そちらの方が向いているかも。成人したら里を出て商人になろうかしら。」

「絢音さんのところで雇ってもらったら?」

「それもいいけど、自分で商売を始めてみたい気もするのよね。」


「とりあえず早く湯につかろう。潮で肌がベトベトするんだ。」

「そうだな。そうしよう。」

「この時間なら休憩所は誰もいないから、そこを宿所代わりにすればいいわ。食事もそこに運んでもらうから、 まずは一汗流しましょう。私も入っちゃお!」


 一行は温泉の休憩所に荷物を置いて、風呂へと向かった。


 湯舟は屋根付きの露天風呂で、谷川に面して作られており、男湯と女湯は石垣で隔たれていた。湯舟の広さも十分にあり、大人が一度に10人入ってもまだ余裕がある。女湯はサクヤ、千代、龍子、安澄の4人しかいないので、かなり余裕がある。



サクヤは掛け湯をしてから湯船につかる。湯温はやや温めで、長くつかるには最適な温度だ。

 サクヤは手足を伸ばして大きく伸びをする。


「ん~~気持ちいい〜。」

「ほぅ、サクヤは脱いでも器量よしだね。手足が長く腰も細いのに、どこにあんな強弓を引く力があるんだか。」

「いや、龍子さんの筋肉、凄いです。それでも出るとこが出てるから、女性としての魅了も失われていません。て、いうか胸大きいですね…。」

「ははは!だが男受けするのはあんただろうよ。色も白いし、胸だって小さくはないじゃないか。私が男なら鼻血出してるか、理性が吹っ飛んでるよ。」


 そんな2人の会話から遠ざかるよう、千代は湯船の反対がわにつかる、

 体型に引け目を感じている千代に、安澄は空気を読むことなく千代に話を振っていく。


「千代さん、肌綺麗ねぇ。あんなに激しく戦ってるわりに、傷ひとつないじゃない。」

「怪我をしても、サクヤ様の薬で文字通り跡形なくなりますから…。」


 千代は安澄の身体をチラリと目を向けた後、溜息をつきながら目を逸らした。


「なに?ああ、気にしてるの?大丈夫よ。千代さんまだ14でしょ?ちょっと発育が遅いだけで、今からよ、い・ま・か・ら!」

「ぐっ、もうすぐ15です…。」

「大丈夫!人の好みはそれぞれ。そういうのが好きな人もいるわ。」

「そんな奴、変態じゃないですか!」

「まぁ、確かにちょっと怪しいかも…。」

「それに、べつに気にしているわけじゃ…。」

「なんだ?千代、体型を気にしてるのか?」

「さ、サクヤ様には私の気持ちはわかりません!」

「まぁ、わからんが。だが、体型の良し悪しで女を選ぶような男、ろくな奴がいないと思うぞ。顔も体型も性格も全部含めて千代を選んでくれる男が一番じゃないか?」

「でも、そんなの待っていたら、おばあちゃんになってしまうかもしれないではないですか…。」

「うっ…痛いとこを突くじゃないか、千代ちゃん。」

「た!龍子さんのことではありません!龍子さんは胸も大きいし、美人じゃないですか…。私は背も低いし、幼児体型だし…、愛想も愛嬌もありませんから…。」

「でも、こんなデカい女、大抵敬遠されるぞ。女は小さいくらいの方が受けがいいさ。」

「理想は安澄さんくらいなのですが…。」

「まあ、確かに。安澄は色んな意味で程よいかもな。細すぎず、太すぎず、出るとこ出てて、腰の括れもあって均整がとれているな。一番男受けするかもしれん。」

「貴方が言う?サクヤ。そんな天女みたいな見かけで。」

「でも喋ると鬼だからな、ははははは!」

「放っておいてください。」

「だが、確かに安澄殿は受けがよさそうだ。ほら、この辺りなど…」

「ちょっと!どこ触ってるんですか!龍子さん!」





「やばい…のぼせる…。」


 石垣一つ挟んだ隣は男湯だった。

 女達があのような話に花を咲かせている横で、存在を気づかれるのも気まずく、黙って聞いているしかなかった男達は、妙に色めかしい会話から耳を離せないでいた。


「そうか…安澄さんって、そんななんですね…。」

「蒼士郎さん、顔真っ赤ですよ。」

「…。」

「左馬介、千代は気にしているらしいぞ。」

「なんで俺に振るんすか?俺は変態じゃありません!小平太さんだって、鼻の下伸びてますよ。」

「そんなこと!ない!」



 結局、男達は揃ってのぼせてしまい、里の者達の世話になった。



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