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浄弓の巫女サクヤ 〜里の因習なんて無理なので御神力を使って鬼を倒しに行きます〜  作者: 一角獣
第2部 進化〜進撃の巫女姫〜

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【閑話】伊都と蒼衣の護符教室

おはようございます

 サクヤ達が出立するのに先立って、伊都と蒼衣は梟社で護符を学ぶ為に出発した。


 若い女子2人では危険だと、宮司は山兵を護衛につけた。


「馬で移動するなら速いし、それほど危険はないと言ったのですけど…。」

「宮司は伊都さんを溺愛しているのですね。いくら亡くなった弟の娘とはいえ、流石にいき過ぎではないかと思うのですが…。」

「そうですよね…。宮司の一族は男子ばかりで、女子がいないから余計にそうなるのではないかと…。」

「なるほど…。

 では、伊都さんは宮司一族として扱われているのですか?」

「いえ、そのあたりが微妙で…。藤三郎叔父上はあんななので例外としても、他の方からそのように扱われたことはないですし、乾の名を使ったこともなければ、使っていいとも言われていませんから、正確には違うと思います。」

「でも、周りは違うでしょ?」

「そうですね。藤三郎叔父上があれなので、周りもそのように扱ってしまいますよねぇ…。」

「微妙なんですね。」

「はい…。」

 

 護衛の兵達も、2人の話を聞きながら頷く。



 途中、清水の宿で一泊し、翌日の夕方には梟社に到着した。



「宜しくお願いします。赤犬社の伊都と、龍神社の蒼衣様です。」

「遥々ご苦労様でしたな。宮司の尋衛門です。若いのに立派なことだ。赤犬の社は若くて優秀な者が多くて羨ましい。」


 暫し談笑してから客室に案内された。隣の部屋には赤犬社の護符頭である孫四郎が滞在しているらしい。



 翌朝、朝餉を済ませると、早々に講義が始まった。

 梟社の護符頭、新右衛門と孫四郎は広域展開の護符の研究に夢中なので、講義どころではないらしい。

 代わりに講義をしてくれたのは、護符寮の朔太郎であった。


 朔太郎は蒼衣と同い年で、若いが優秀な護符師である。


 伊都達はサクヤと同じように、護符の基本から学び始めた。



 1日の講義を終えた2人は久し振りの座学漬けに疲労困憊である。


「つ、疲れましたね…。」

「ですね…。護符がこんなに多種多様とは思っていませんでした。」

「でも、それだけ憶えれば便利な物になるはずです。鬼防寮の中で確固たる地位を得るためにも、習得しなければなりませんね。」

「はい、がんばりましょう。」



 翌日以降も基本的な講義が続き、時には実践も交えて習得に励んだ。


「これだけ連続して護符への御力籠めが出来るのは、2人共力量が多いのですね。」


 朔太郎は素直に感心する。


「伊都さんは赤犬社でもサクヤ様に次いで力量が多いですから、この程度ならなんてことないでしょう。」

「サクヤさんに次いでと言っても、単純に順番だけであって、サクヤさんに匹敵する程多いわけではありません。おそらく、サクヤさんは私の倍くらいは力量があると思いますよ。」

「そんなに?」

「私はあんなに連続して、あれだけの範囲を浄めるなんてできません。サクヤさんは巫女になる前から増やしていたらしいですから。元々の力量も多かったんじゃないかと思いますし。」

「でも、血筋的には宮司の一族に近い伊都さんの方が元々の力量は多そうですけど?」

「サクヤさんは父親がよく判らないんですけど、そちらに秘密があるんじゃないかって思ってます。」

「あぁ、そういうことですか。まぁ、あの神様みたいな御力を思えば、普通じゃないことは確かでしょうね。」

「はい。宮司一族どころではないと思います。あとは、ヌシ様に幼いころから見出されていたというのも…。」

「よし、サクヤ様のことは基準にしない方がいいってことでしたから、私達は私達なりにがんばりましょう。」


 蒼衣はすっぱりと気持を切り替える。


「いえ、2人共、当社の基準で考えたらとんでもない力量の持ち主ですから、悲観的になる必要なんて全くないと思いますよ。」


 2人は顔を見合わせて苦笑いした。赤犬社は基準が可怪しいだけだと痛感させられたのだ。



 それからは順調に習得が進む。


 ある程度基礎を身に付けたところで、力量を活かして新右衛門と孫四郎の研究に協力することになった。


「いやぁ、2人では力量が不足して、思うように実証実験が出来なかったので、御二方が協力してくれれば非常に助かります!」



 新右衛門は2人の手を取って歓迎する。


「ここには結界術を使える人間がいませんので、浄化の広域展開で実験をしましょう。」

「待って下さい。御力で出来ないことを出来るようになるのが護符の良い点なのでは?でしたら、結界術の護符で広域展開をした方が良いのでは?」

「そこはですねぇ、使えない御力でやると力量の消費が倍以上になるので、まずは広域展開の限界点を探るのが現段階での課題でして、それを結界術に応用するのは次の段階になると考えているのです。」

「なるほど。わかりました。」



「文様のこの部分を伸ばせば…、いや、ここを伸ばすと方法性が…。」

 

 新右衛門が1人でブツブツと呟いているが、伊都と蒼衣にはよく判らない。


(文様かぁ…。紙に直接御力を書き込めたら楽なんだろうけど…。そもそも、誰がこんな文様で御力が発動できると考えたんだろう?御力を発動せずに、頭で考えた条件を紙に描き出せればいいんだけどな。)


 伊都はそんなことを考えながら、紙にイメージを描く想像をしてみる。


「何を考えてらっしゃるのです?」

「わっ!」


 蒼衣が伊都の後ろから声をかけた。考えに没頭していた伊都は、不意に声をかけられ驚いた拍子に、御力が紙に微力流してしまう。


「えっ!?なにこれ?」


 伊都が持っていた白紙の紙に、何処かで見たような文様が現れる。


「これは禊祓の文様ですね。でも、今まで見たことない組み合わせというか…。これは何ですか伊都さん?」


 新右衛門が興味津々で伊都に迫る。


「い、いえ、ただ、頭に描いた禊祓の範囲指定を紙に写し出せたら便利だなぁって考えてたら、蒼衣さんに声をかけられた拍子に少しだけ御力が流れてしまって…。そしたら紙に文様が現れたのです。」

「それって再現可能ですか!そしてこの紙に祝詞を書いたら発動できるのですか?試してみて貰えますか!」

「ちょっと落ち着きましょう新右衛門殿。」

 

 孫四郎が新右衛門を窘める。


「失礼しました。でも!これは画期的なことです!これが再現できるなら、広域結界術への道筋が見えてきますから!」

「ですが、使えない御力に関しては頭で想像することもできませんから、使える御力に限られますよ。」

「それでも一度作って貰えれば、文様を再現すればいいのですから、活用範囲は大幅に広がります!」

「確かにそうですね。取り敢えずこの護符で上手くいくか、試してみます。」

「待って下さい!先に書き写しておきます。その間にもう一枚作っておいていただけますか?」

「分かりました。」


 新右衛門が文様を書き写す間に、伊都はもう一度白紙に文様を写し出す。


「上手くできました。蒼衣さんもやってみませんか?」

「えっ?私が…できるのかな?」

「御力を使うまでの段階を頭に浮かべて、発動しない程度に少しだけ御力を紙に流すんです。」

「…やってみます。」


 蒼衣も白紙を持つと、言われたようにやってみる。


「で、できました!」

「凄い!これなら色んな人の色んな御力が再現できるかもしれません!これは本当に画期的な出来ごとです。後は、この護符と書き写した護符がきちんと発動すれば…。」

「試してみましょう…。」


 伊都は自分で新たに作った護符に祝詞を書き込み、御力を籠めた。


 少し離れた位置に置いた禊石は狙い通り浄化された。


「成功です!続いて書き写した方もお願いします。」


 次は蒼衣が同じように御力を籠めた。


「これも成功です!やりました。これは歴史的偉業ですよ、伊都さん!」

「いえ…、私が思うに、この文様は元々この様にして描かれたものではないかと思うのです。でないと、最初にこの文様を描いた人の意図がわかりませんから。」

「なるほど…それはそうかもしれません。しかし、長きに渡って失われていた方法です。それを再発見したのであれば、歴史的偉業に変わりはありませんよ!」

「そうですぞ、伊都殿。」

「凄いですよ伊都さん!」

「いえ、ありがとうございます。これで、少しでも力になれたのなら安心です。」

「今度サクヤさんにも結界術の護符を作ってみてもらいましょう。」

「いえ、それは千代さんの方がいいと思います。サクヤさんは感覚で結界術を使っていますから、何となくですが、上手く出来ないのではないかと思うのです…。」

「確かに…。」

「まあ、試すだけ試してみて、駄目なら千代さんにお願いしてみましょう。」



 伊都と蒼衣は、思いがけない護符の作成方法を見つけたので、予定より早く帰還することになった。孫四郎も一緒に帰る。


 護衛の山兵が迎えに来るまで、残りの検証を続け、護衛と共に帰還した。


 

 かくして梟社では、サクヤに続いて、伊都も畏怖の対象になったのだった。


【設定裏話】

サクヤの力量が100とした場合、伊都が60〜50、千代が50〜40、藤馬と小平太、蒼衣が40〜30と言ったイメージでいます。


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