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浄弓の巫女サクヤ 〜里の因習なんて無理なので御神力を使って鬼を倒しに行きます〜  作者: 一角獣
第2部 進化〜進撃の巫女姫〜

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おはようございます

 第1班である、サクヤ、蒼士郎、龍子、馳遊馬は第2班の出発の2日後に里を出発した。

 行程が第2班より短いので、遅めの出発である。

 因みに伊都と蒼衣は第2班と同じ日に、山兵の護衛を着けて、徒での出発である。


 鬼防寮の金策や、瑞の国府からの礼もあり、鬼防寮の乗馬には余裕が出てきたのだが、護衛の山兵は馬に乗れないので、伊都達は徒となった。

 その分鬼斬り3人も馬での移動が可能になっている。

 鬼斬り達はサクヤが不在の間に乗馬の訓練に勤しんでいた。因みに風磨も短期集中練習で早足程度ならなんとか乗れるようになった。



 サクヤ達第1班が向う櫛の国は2度目の訪問である。

 前回は徒での移動だったので、馬での移動となる今回はかかる日数も短い。

 とは言え、懐かしい顔も見たいので、一泊目は絢音と静の酒蔵に泊まらせて貰えるよう先触れを出しておいた。


 男も多い騎馬での移動とあり、前回のように野盗にチョッカイをかけられることもなく、順調に乃美の宿に到着した。

 乃美の宿から少し川上に上り、絢音の酒蔵に向う。


「以前来た時より道が広く綺麗になっているな。」

「そうなのか?」


 以前来た者が自分しかいないことに気づき、「あぁ。」と零す。



「いらっしゃいませ。サクヤさん。お元気そうで何よりです。」

「お久しぶりです。今日は世話になります。」


 サクヤは絢音の出迎えに笑顔で応じた後、班の面々を紹介した。


「さ、さ。遠慮なく入ってください。大したおもてなしはできませんが、静さんも待ってますよ。」

「有難うございます。失礼します。」



 広間に通されると、既に夕餉の用意ができていた。夕餉というより歓待といっていい豪華さに、サクヤは恐縮してしまう。


「こんな豪華な食事を…。なんだか申し訳ありません。」

「いえいえ、サクヤさんにはお世話になってますからね。このくらいはさせて貰わないと。」


「お久しぶりね、サクヤさん。」

「静さん、ご無沙汰…えっ!?」

「フフフ、びっくりしたでしょう?」

「静さん!どうしたんですか、そのお腹…。もしかしてご懐妊…?」

「ふふ、恥ずかしいわ。」

「もしかして、例の酒問屋の…?」

「そのまさかでね。まあ、流れでそうなったら授かっちゃってね。こうなった以上はって…。」

「お、おめでとうございます!本当にびっくりしました。里のご両親には?」

「勿論報告済みよ。無事産まれたら会いに来ると思うわ。」

「そうなのですね。」



 懐妊中の静は、現在仕事を休んで酒問屋の方で暮らしている。

 今日はサクヤ達がやってくるとのことで、顔を出したのだった。


 静は流石に飲めないが、夕餉の席では綾の泉と綾の露が振る舞われる。

 絢音が乾杯の挨拶を簡単に済ませ酒宴は始まる。

 サクヤは一口飲むと、酒の変化に気が付いた。


「絢音さん。この酒は綾の泉ですよね?仕込み水が変わりましたか?」

「いえ、今まで通りの湧水ですが、どうかしましたか?」

「御神力が弱くなっている気がします。」

「えっ?!そうなのですか?」

「本当に?私が妊娠が判る前に飲んだときまでは変わらなかったけど…。」

「確か、湧水の出る山の上には祠があると言っていましたね?最近誰かお参りに行きましたか?」

「いえ、仕込みを開始する秋の終わりにお参りに行って以来です。もうすぐ甑倒し(こしきだおし)ですので、蔵人が帰る前に皆でお参りに行く予定だったのですが…。」

「もしかしたら御神域に何か問題があるのかもしれません。明日にでも確認に行ってみましょう。」

「有難うございます。私も同行させてください。」

「では、明朝参りましょう。」


 少し神妙な雰囲気となった酒宴だったが、サクヤが御神域の修復の為の旅の途中であり、何かあっても修復できると聞いて絢音も安心したようだ。



「ところで静さん。」

「なんでしょう?」


 静はにこやかにサクヤに応える。


「静さんの母様と私の母様が従兄弟同士だと御存知でしたか?」

「うん、一応。うちでサクヤさんの話題になったとき、母が教えてくれたわ。」

「そうだったのですね。じゃあ、私達の高祖母のことは?」

「一応聞いているわ。」

「そうですか…。因みに静さんは結界術が使えたりしますか?」

「結界術?いえ、私の御力は違うわね。基本秘密にしているのだけど、サクヤさんになら…。」


 静はサクヤの耳元で囁く。


「相手の動きを一時的に止める御力よ。」


「そ、それは…便利そうですね。そんな御力があるなら、なぜ山兵にならなかったのですか?」

「サクヤさんが入るまで、私も含めて巫女が山兵になるなんて誰も考えていなかったもの。

 前にも言ったでしょ。サクヤさんなら里の因習も変えてくれるんじゃないかって。サクヤさんは物事を変える力があるからそう思ったのよ。」

「そうだったのですね…。

 しかし、便利そうな御力ですね。私も同じ血筋なんだからできたりしないかなぁ?」

「どうでしょう?サクヤさんならできるかもね。」

「今度試してみよっかな…。」

「ただ、サクヤさんの場合、その御力を使うまでもなく瞬殺できるでしょ。サクヤさんの攻撃を回避できる敵なんてそうそういないもの。」

「あ…。

 でも、霊徳童子に有効かもしれないから、試す価値はあると思います。」

「そうね、武器は多いに越したことはないものね。」



「なんだい?難しい顔して、2人で悪巧みかい?」

「違いますよ、龍子さん。そう言えば龍子さんの御力って聞いたことがなかったですね。」

「あぁ、御力か。斬撃を飛ばす御力さ。」

「そうなんですね。それも便利そうです。」

「サクヤさんの基準はいつでも便利かどうかだね。」

「不便な御力なんてあってもしょうがないじゃないですか。」

「合理主義者だな。確かに私も実戦向きな御力で安堵してるんだがな。」

「そうですよね。便利なことにこしたことはないと思うんですけどね。」




 翌朝、サクヤ達は絢音を伴って祠があると言う裏山に登る。

 

 そこまで高い山ではないので、四半刻(30分)もかからなかった。


「ここが祠です。」

「これと言って呪物らしき物は見当たりませんね。御神域に御力を流してみましょう。」


 サクヤは祠の前で地面に手をつき御力を流してみる。


(これか…。)


「欠損があるようです。補修しておきましょう。」


 サクヤは結界を補修して不足していた御力も出しておいた。



「すまぬな。助かったぞ。」


 声のした方を見ると、祠の上に白い蛇がトグロを巻いていた。


 サクヤは素早く膝をつき頭を垂れた。


「御降臨頂き恐悦至極にございます。赤犬の社の巫女、乾のサクヤにございます。」

「そんな畏まらなくてもよい。このような小さな祠の主だ。神産みのサクヤ殿に頭を下げていただくほどの者ではない。」

「か、神産みのサクヤ…なんですかそれは?」

「噂になっておるぞ。其方が桜の精霊を主にしたと。」

「またですか…。その話は誤解です。私はお手伝いをしただけでございます。」

「ふむ、噂に尾鰭が付くのはよくあることだの。じゃが、ここの神域を直してくれたことに変わりはない。何か礼ができたらいいのじゃがのう。」

「いえ、礼には及びません。それより、この御神域は何故欠けたのでしょうか?特に原因となるような物は見当たらないのですが。」

「それがのう、元々ここの主は別の者がおったのじゃが、よそに移ってしまってのう。その神に頼まれて儂は最近ここの主になったのじゃが、儂の神力ではこの神域を維持するのが大変でなぁ。とうとう欠けてしもうたのじゃよ。」

「そういうことでしたか。では暫くは私が時々訪れて御力を籠めることにしましょう。この規模なら数年に一度籠めておけば問題ないと思います。ヌシ様も十年もすれば御神域に見合った御神力になられるでしょうし。」

「そうしてくれると助かる。流石神産みのサクヤ殿じゃ。」

「その呼び名はおやめください。私はここから湧き出る水に御神力が含まれなくなるのが困るだけで、私的な事情ですから、そのような大したものではありません故。」

「ということは…、綾の泉に含まれる御神力は、サクヤさんの御力ということになるんですね…。」

「いやいや、ちょっと待って下さい!私は不足分を賄うだけで、御神力はあくまでここのヌシ様のものです!」

「う〜ん、儂はこの神域を維持するので精一杯じゃから、零れ出る神力は確かにサクヤ殿の物かもしれんのう。」

「ヌシ様までそのような戯言を!」

「いや、事実なんじゃがのう。」

「ははは、サクヤさんが規格外とは聞いていたが、なるほどこりゃ納得だ。もうサクヤさんが籠めるのは御力じゃなくて御神力でいいんじゃないか?」

「龍子さんまで!そんな不敬なことは言わせません!」

「ここの主である儂が認めとるのだから、問題ないと思うがのう?」

「…」


 サクヤは返す言葉を失って呆然とする。


 後に絢音は蔵の湧水を『咲耶水』と命名したのだった。

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