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浄弓の巫女サクヤ 〜里の因習なんて無理なので御神力を使って鬼を倒しに行きます〜  作者: 一角獣
第2部 進化〜進撃の巫女姫〜

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馳遊馬の姉弟子

おはようございます

 里に帰ったサクヤと千代は、造作の集落近くに持ち帰った木を植えてから社に報告に行った。


 社は初詣の参拝客を迎える為の準備が総出で行われていた。


 一旦鬼防寮に顔を出してから宮司のところへ行こうと山兵部に来たが、そこはもぬけの殻。全員駆り出されたようである。


 仕方ないのでそのまま宮司のところへいくと先客がいた。



「サクヤ、戻りましたが…お客様がいるようなので、報告は後程に…、」

「サクヤか。丁度よい、入れ。」


(え〜、いいのにぃ。)


 応接室に入ると、手前に座る宮司の前に、馳遊馬と大きな女が並んですわっている。

 応接室は装束でも座りやすいよう、テーブルはないが椅子が用意されている。

 椅子座っていても判るくらいその女は大きく、馳遊馬より明らかに大きい。

 そう、背が高いというより大きいという表現がしっくりくる。けっして横に太いわけではないが、霊長類最強と言われても疑わなくてよいほど筋肉質なのがわかる。


「こちら、馳遊馬殿の兄弟子?この場合姉弟子かな?まぁ、そういう感じの方で…、」

龍子たつこだ。宜しく頼む。」


 宮司が紹介する前に女は名乗った。

 大柄で筋肉質、眼光も鋭いのだが、何処か不思議な上品さがあり、所作も育ちの良さを感じた。顔も印象より整っていて美しい。


「乾のサクヤです。」

「サクヤ殿、こちらは私の姉弟子にあたる龍子です。腕は間違いありません。今回の話をしたところ非常に乗り気でして…。」

「あんたが噂のサクヤさんか。早速手合わせを願いたいもんだねぇ。」

 

 不気味に笑いながら舌なめずりをする龍子だが、サクヤは不思議と邪気を感じなかった。


「今回は初詣の準備を手伝うために戻っただけですから、そんな暇はありません。因みに龍子殿の獲物は?」

「私は前備さ。槍も太刀もお手の物さ。」

「なるほど。では小平太が相手をするでしょう。小平太で相手にならないようなら、私とやっても手応えがないかもしれません。私は小太刀を使いますが、専門は弓ですし、私の戦い方は少々特殊ですから。」

「へぇ~、そりゃ愉しみだ。あんた結界術も使うんだろ?」

「はい。それだけではないですけど。因みに龍子殿は御力を使われるので。」

「血筋的には使えるかもしれんがな。下界の生活が長いから、力量が満ちてないので使えないな。」

「そうですか、それはもったいないですね。ここで生活していれば使えるようになるかもしれませんから、満ちた頃に手合わせをしてみましょう。」

「そうかい、それは楽しみだ。」


 挨拶を終え、立ち上がった龍子はサクヤより頭1つ背が高い。

 サクヤも自分より背が高い女を初めてみたので少し驚いた。なにしろ馳遊馬より少し高いのだ。



 馳遊馬と龍子が退室した後、竜三が部屋に入ってくる。


「サクヤ、初詣の準備より、新年の奉納神楽の稽古をしてくれ!」

「えっ?!そんなつもりはなかったのですが…。」

「それがだなぁ…、なんでも皇太子様がお忍びで観に来られるそうだ。」

「来るのが判っている段階でお忍びでもなんでもないじゃないですか。」

「朝廷の関係者から、非公式で警備の依頼が来たのだ。どうしてもサクヤの舞が観たいらしい。」

「なんでまたそのような話に…。今回帰還するかなんて決めてもなかったのですが…。」

「依頼が来た段階で、帰還させる手筈をしていたのだが、帰ってくると聞いてな。」

「そういうことでしたか…。わかりました。明日は顔を出します。」

「頼んだぞ。」


 竜三は言うだけ言って部屋を出て行った。



「ちょっと…、なんで皇太子が来るかも答えずに言うだけ言って…。」

「ああいうやつだ。

 なんでも宿場町で其方の神楽を観て魅了されたらしい。」

「あんなところをほっつき歩いてる皇太子ってなんなんでしょうね…。」

「流石にほっつき歩いていた訳ではないだろうが、確かにあのようなところで皇太子が神楽を観ているというのは違和感しかないな…。」

 

 つい溜息が出てしまったサクヤだったが、報告をしていないことに気づいた。


「遅くなりましたが、一旦帰還しました。懸念材料でした結界の広域展開は、現行の護符では難しいことがわかりました。ただ、護符の質を上げることで籠めれる御力が多くなることがわかりましたので、まだ改善の余地があると思います。紙の素材となる木を持ち帰りましたので、造作の集落近くに植樹しました。三賀日が終ればまたあちらに戻ります。」

「そうか、ご苦労だったな。藤馬にも伝えておこう。」

「そういえば藤馬殿は?」

「皇太子案件で国府に行っている。」

「そうですか…。なんだかすみません。」

「ついでに馬を貰ってくると息巻いていたぞ。自分も乗れるようになりたいらしい。」

「ふふ、藤馬殿も馬の魅力に魅せられましたね。宮司もどうですか?」

「勘弁してくれ。」




 宮司のもとを去ると、サクヤは帰宅した。


「ただいま帰りました。」

「あら?サクヤおかえり。流石に正月は帰ってくるのね。」

「うん。新年の挨拶くらいはしないとね。」

「明日は餅つきよ。手伝える?」

「どうだろう?神楽の稽古もあるしなぁ。」

「貴方も忙しいわねぇ。お役目ならそちらを優先しなさい。どうせ近所総出でやるんだから、こっちは手が足りてるから。」

「うん、ごめんね。」

「いいわよ。で、梟の社はどうだった?」

「うん、新七の強化版がいた…。」

「そ、それはヤバそうな奴ね…。大丈夫なの?」

「今の私の力量はあの頃とは違うからね。

 そういえば薬草園はどう?」

「ちゃんと結界が機能しているかはよくわからないわ。なんせ冬で虫がいないから。でも、ちゃんと私も出入りできるわよ。」

「そちらが懸念材料だったんだけど、それなら大丈夫そうね。こんど御力を籠めておくわ。あちらの御山で見つけた薬草の種も春には撒きたいしね。」

「本当に忙しいわね。休む時間はあるの?」

「神楽は2日で、元旦にお役目があるか聞いてみるわ。なければないで御山にも行きたいしね。」

「…ねぇ、やっぱりあの山犬、カイって言ったっけ?アカイヌヌシ様なの?」

「…なんで?」

「ただ懐いているから会いにいくってのもね…。ご報告に上がるってことなら腑に落ちるもの。」

「母様は鋭いね。ただ、他に知っているのは千代だけだから、内緒にしておいてね。」

「わかった。もしかして梟のヌシ様にも会ったの?」

「母様…。ここだけの話、私、神様達の間で有名人になっているらしいの。完全に便利屋扱いにされているから、この先も母様の心配の種になると思う。先に謝っておくわ。」

「…相変わらず規格外ねぇ。今更そんなことで驚かないって思っていたけど、やっぱり驚くものね。

 それと神様の御役に立てるなんて巫女冥利に尽きることよ。貴方が謝る必要なんてないわ。しっかりお役目を全うしなさい。ただ、無理はしちゃ駄目よ。無理なものは無理って言いなさい。」

「ありがとう。代わりに社のお役目を免除してもらっているから大丈夫。神楽は想定外だったけどね。」

「竜三さんは強引だからねぇ。今度魅了しておこうかしら。ちょっとは大人しくなるかもよ。」

「母様、目が恐いよ…。」



 

 翌日は神楽の稽古に合流し、舞の息を合わせる。出演は1演目だけなので午前中には終わった。


「元気そうね。もうここにいる時間より他所に行っている時間の方が多いんじゃない?」

「安澄も元気そうね。そう言われればそうかもね。」


 秋の間は湖の国、冬は丹の国で過ごすことになりそうで、確かに殆ど里にいないことに気付かされた。


「そんなに忙しくても色々いい男を呼び込んでいるんだから、流石よね。」

「…何の話?」

「あら?誤魔化すの?馳遊馬って人と蒼士郎って人。2人ともかっこいいじゃない。なのに、囲うだけ囲って本人はここにいないって、中々やるなぁって感心してたのよ。」

「囲ってなんかない。あいつらは鍛錬に来ているだけだ。私じゃなくても相手はできるだろ。まだ小平太の方が強いんだから。というか、単純に近接戦闘だけなら私より小平太の方が強いしな。」

「へぇ~、知らぬ間に小平太の株が上がってたのね。」

「なんだ?株って。」

「まぁいいわ。人のことより自分の心配をしないとね。なんでもサクヤを観るために皇太子様まで来るらしいじゃない。私も負けられないわ!」


 言うだけ言って安澄は去って行った。


(いったい何処がお忍びなんだ…。)


今日か日が変わる頃に短編をあげたいと考えています

「浄弓の巫女」のスピンオフ的なお話です

そちらも是非読んでください

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