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浄弓の巫女サクヤ 〜里の因習なんて無理なので御神力を使って鬼を倒しに行きます〜  作者: 一角獣
第2部 進化〜進撃の巫女姫〜

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調薬部屋での再会

おはようございます

「つ、鶴殿?!何故ここに?」

「サクヤお姉様の言われたように、国府が社と協調するため、わたくしが使者を兼ねてこちらで色々と学んでいるのです。その中の一つが調薬でして。千尋様からは多くを学ばせていただいているのです。」

「そ、そうでしたか…。」

「サクヤ殿と鶴様はお知り合いでしたか。しかし、『お姉様』とは?」


 千尋が不思議なものでも見るような目で2人を見る。


 鶴が丹の国府での出来事を多少盛って説明する。


「そういうことでしたか…。」


 千尋は鶴を困惑した顔で見つつ、サクヤに話しかけた。


「ところで、サクヤ様はなぜこの様なところに?」

「あぁ、失礼しました。実は私の母様も薬師でして、私も調薬をするのです。こちらの里ではどのような調薬をされているのか気になり、見せてもらえるよう宮司にお願いしたのです。」

「そうでしたか。ですが、特別変わった調薬をしているわけではありません。今は鶴様に傷薬の調薬を教えていたところです。」

「同じ傷薬でも里が違えば調薬も異なるかもしれません。もし宜しければ調合を教えていただけませんか?もちろん、私の知る調合もお教えします。」

「わかりました。では、鶴様。先程教えた通り、調薬してみてください。」

「畏まりました。」


 鶴は慣れた手つきで薬草を選別し、順に薬研に入れて煎じていく。


「随分手慣れておられますね。調薬を始めてどのくらいになるのですか?」

「はい、かれこれ半年くらいになります。千尋様の指導が良いのです。」


 鶴は謙遜して答えつつも、手は休めない。


「加える薬草は以上です。何か違いがありますか。」

「はい。この調合は、私が以前母様から教えられた物と同じですね。今はこの薬草を外して、代わりに『安登穏の実』を入れています。」

「『安登穏の実』ですか?聞いたことがありません。」

「赤犬の社の御神体である御山で採取できるもので、今は私の薬草園で栽培しております。ここと梟の里はそう離れていないので、こちらの御山でも採取できるかもしれませんね。因みにこちらがその実を使った傷薬(御力入り)です。」


 サクヤは腰袋から取り出した薬を作業台の上に置くと、おもむろに小太刀を抜いた。そして、迷う事なく自らの左腕に傷を付けた。


「きゃー!サクヤお姉様!何をなさるのです!」


 千尋も声は出さないがドン引きしている。


「いや、傷薬の効果を確認してもらおうと思って…。」


 サクヤは血を拭うと、傷薬を指に取って塗り込む。


 塗った端から傷口は塞がり、傷跡すら消えてしまう。


「はぁ?!何それ!どういうこと?」

「えぇ!?サクヤお姉様、とうとう神の領域に達っされたのですか!」

「…これは…治癒の御力ではないのか?」


 伊三郎がサクヤ方を見遣るがサクヤは伊三郎の言葉を否定する。


「いえ、確かに御力は籠めてあるのですが、あくまで傷薬の効果であって、治癒の御力ではありません。」


(治癒の御力は薬も使わず怪我や病気を治すけど、薬は薬。御力を籠めても限界があるからね。御力を籠めたら効果が上がるのは確かだけど。)


 皆がドン引きする中、サクヤは続ける。


「治癒の御力ではありませんが、この薬に御力が籠めてあるのは確かです。御力によって効果を高めることができるんですよ。」

「いや、それは、治癒の御力が籠めてあるのでは?」

「違います!」


 サクヤは断言するが、誰もその言葉を信用していない。


「あのですね、皆さん破魔の矢に御力を籠めることはなさってますよね?」

「鶴様と千尋殿は里の出身ではないのでできませんが、私や社の者は皆やっています。」

「私は社で鬼防寮という新設された寮の頭をしています。皆が武具への付与は違う御力だと認識していたので出来ていませんでした。でと私はこの二つは同じだと思っておりまして、実際そのつもりでやっておました。」


「へ?」


 伊三郎の目が丸くなる。


「で、実際に同じ感覚でやってもらったら皆できるようになったのです。それと同じで、薬にも破魔の矢と同じように御力を籠めれば、効果の高い薬ができるのです。」


 伊三郎は言葉をなくしていたが、千尋は疑問を口にした。


「ならば、御山で採れるような貴重な薬草を使わずとも、効果の高い薬になるのではないですか?」

「いえ、やはり御山で採れる薬草方が、御力を籠め易い、というか、籠めれる量が多いのです。少し実験してみましょう。」


 サクヤは鶴が作った薬に御力を籠めた。そして、さっきと同じように左腕を切る。


「あ〜!またそのようなことを!」


 鶴が叫ぶがサクヤは気にせず作業を進める。


 傷口に鶴の薬を塗ると、傷は塞がったものの傷跡は残った。


「きゃ〜!傷跡が残っているではないですか!」


 サクヤは鶴の反応に少し疲れを感じたが、黙って持参した薬を塗って傷跡を消した。


「このくらい効果に違いがあるのです。」

「いやいや、傷が塞がるだけでもとんでもない効果です!そちらの薬が規格外なだけで…。」

「それに、私達は御力がないので、そのようなことはできません。」


 鶴の言葉を受けて、サクヤは徐ろに鶴の手を掴む。

 そのまま、鶴が作り置いていた薬に手を持っていき、サクヤは手を重ねたまま御力を籠めた。


「身体の中に熱のような物が動いているのが判りますか?それが御力です。そのまま熱を薬に流してみて下さい。」


 サクヤは環にしたように御力を鶴の中で動かした。


「これが…御力?このまま薬に流し込む…。」


 鶴は言われるまま身体の中の熱の動きを手の平に持っていく。

 薬がぼんやり光ると鶴はガクリと崩れる。すかさずサクヤが支え、御力回復薬を鶴に飲ませた。


「できましたね。今のが御力を籠めたということです。初めてのことですから、力量が尽きたのでこのようになりました。今飲んだのは御力回復薬ですから、少し休めば治ります。」


 伊三郎は信じられない物を見た衝撃で言葉も表情も失っている。


「千尋殿もやってみましょう。この里に3年も住んでいれば力量は十分に満ちていますので、後は力量の器がある程度あれば、御力が使えるはずです。」


 千尋は青い顔で怯えているが、サクヤになされるまま、鶴と同じことをやらされた。


「ほら、千尋殿も御力が使えました。これで『安登穏の実』かそれに代わる物があれば私が持参した薬が再現できますよ。明日にでも宮司に相談して、御山に入らせて貰いましょう。」


 サクヤは笑顔で3人に提案したが、3人共呆気にとられて言葉が出なかった。




 調薬を終え客間に案内されるサクヤを見送った千尋と鶴は、茫然自失のままであった。


「あれは…神の御業でしょうか?」

「あのようなこと人が出来るわけがありません。間違いなく神の御業でしょう。」

「つまり、サクヤ様は…。」

「神様、或いは神様のお使いではないでしょうか…。」


(とんでもない人を連れてきてしまった…。ヌシ様はこのことを承知されていたのですか?)




 社務所に戻った伊三郎は宮司の部屋に入る。しかし、何をどう説明すればいいか頭の整理がつかない。


「どうしたのだ?伊三郎。」

「それが、何と説明すればよいのやら…。先程サクヤ殿を調薬部屋に連れて行ったのですが、そこでサクヤ殿が薬を使用しまして…。」

「それは調薬部屋に行けば試しに薬を使ってみることもあるだろう。何か体調を崩すことでもあったか?」

「いえ、サクヤ殿は持参した傷薬の効果を見せてくださるために、自らの腕に刀で切傷を作られるまして…。」

「なんと無茶な!女子の体にそのようなことをするとは。」

「それが、その傷薬を使うと傷が塞がっただけでなく、傷跡すらなくなったのです。

「なんだそれは?あれか、ガマの油がなんたらとかいう、胡散臭いやつか。」

「いえ、そのような如何様なものではありません。最初は治癒の御力ではないかと思ったのですが、それはサクヤ殿が否定されました。鶴様の作った薬でも御力を籠めれば似たような効果が現れたのです。しかも、鶴様と千尋殿を御力が使えるようにしてしまわれました。」

「はぁ?いや待て、御力を使えるようにしたとはどういう意味だ?」

「サクヤ殿が鶴様の手を通して御力を鶴様に籠め、鶴様の中の御力を押し出したとおっしゃられていたのですが、よく分かりませんでした。しかし、その後鶴様一人でも薬に御力を籠めることができるようになりました。」

「…。そんな無茶苦茶なやり方初めて聞いたぞ。そんなことが本当にできるとは到底信じ難いが。」

「しかし、実際この目で見、2人は御力を使えるようになったのです。サクヤ殿に言わせると、薬に御力を籠めるのも、破魔の矢に御力を籠めるのも同じだと…。」

「そのような無茶が赤犬の社では罷り通っておるのか…。」

「赤犬の社全体の話かどうかは知りませんが、サクヤ殿が頭を務める寮では、皆付与ができるようになったと…。」

「赤犬の社では一体何が起きているのだ?」

「あと、傷跡まで消す傷薬の材料となる薬草を採取するため、御山に入る許可を得たいとのことです。」

「御山か…。」

「当社の薬師の技量を上げる為にも、サクヤ殿に同行させるのは悪い話ではないと思いますが。」

「そうか…、そうだな。分かった。許可しよう。」

「ありがとうございます。では、明日の朝サクヤ殿にお伝えします。」

「其方も同行するのか?」

「その予定はありませんが、した方が宜しいでしょうか?サクヤ殿がいるなら、護衛は必要なさそうですが。」

「いや、サクヤ殿を信用していないわけではないが、動向を確認して報告してほしい。」

「分かりました。」


【お詫び】

ここ最近、1話あたりの文字数が少なくなっております。

本業をこなしながらの執筆ですので、1話も書けない日も少なくありません。毎日更新を心掛けていることもあり、1話に掛けれる時間も限られており、文字数を稼ぐ為に不要な文章を挿入できるほどのスキルもありません。

 よって、今後も1話当たりの文字数はかなり前後することになるとは思いますが、何とか毎日更新を続けていこうと思っておりますので、温かい目で見守っていただければと思います。

 現在の目標として、第2部完結までは毎日更新できるよう頑張ります。

 今度とも宜しくお願いします。

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