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浄弓の巫女サクヤ 〜里の因習なんて無理なので御神力を使って鬼を倒しに行きます〜  作者: 一角獣
第2部 進化〜進撃の巫女姫〜

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迷える森のサクヤ

おはようございます

今回も短いお話になりますが、切りが良いので…


「困った…。」


 サクヤは森で彷徨っていた。御神域内の森で知らない場所などないサクヤが、森で迷うのにはある事情があった。


(あの妖魔…、まさか、妖術で道に迷わすとは思わなかったな…。)


 例によって1人で御神域内を巡回していたサクヤは、少し前に、遭遇した妖魔を倒そうと弓を構えたが、先見の御力で見えた景色は見知らぬ森を歩く自分だった。

 見えた景色の意味がわからなければ、折角の先見も意味をなさない。


(妖魔は倒し損ねるし、ここがどこだかわからないし…。というか、あれは本当に妖魔だったのか…?)


 妖術は解けているので見えている景色は現実の景色だが、見慣れない景色だから赤犬の御神域ではなさそうだ。


(だけど、御神域と同じような結界内にいるようだな。とりあえず山を下りてみよう。まさか飛ばされた訳ではないだろうから、そう遠くにはきていないはずだ…。)


 

 サクヤは山を下ってみたが、里や集落は見えてこない。


(逆に登って上から見た方が良かったか?とりあえず川沿いに下ればなんとかなるとは思うけど…。)



「そこの方、何処から参られた?」


 サクヤは驚いた。まったく気配を感じさせないまま話しかけてきたのだ。


(妖か…嫌、人の気配だ。何者だ?)


「赤犬の里から来たのですが、道に迷ってしまいまして…。」

「ほう、赤犬の里から…。ここは梟の社の御神域ですよ。」

「えっ!?確かに国境に近い場所を巡回してはいたのですが、それほど歩いてはいないのに…。」


 赤犬の里と梟の里では直線距離でも歩いて丸1日以上かかる。ほんの半刻歩いた程度で迷い込む距離ではない。


「何か気になることでも?」

「妖魔に遭遇したので退治しようとしたところ、妖術による幻覚を見せられたのだと思います。ただ、それ程移動したわけではないので、まさか梟の社の御神域にいるとは思いませんでした。」

「…そうでしたか。それは難儀しましたね。しかし、もうすぐ日も落ちる。今から赤犬の里に帰るのは危険です。梟の里に参られませんか?」

「宜しいのでしょうか?道さえ教えていただければ暗くとも帰れるとは思うのですが。」

「女子一人で山道を歩くのはやめたほうがよいでしょう。そういえば紹介が遅れました。私は福呂の千尋と申します。」


 千尋はサクヤよりも背が高い、狐目細面の女で、歳の頃は二十代半ばといったところか。


「『福呂』ということは宮司の一族の方でしたか。私は乾のサクヤと申します。宜しくお願いします。」

「おや、貴方がサクヤ様でしたか。一度お会いしてみたいと思っていたのです。このようなところでお会いできるとは、犬も歩けばなんとやらですね。」


 千尋は口に手を当てて笑う。どこか怪しくもあるが美しい女であった。


 サクヤは素直に付いて行きながら、さっき会った妖魔について聞いてみた。


「先程話した妖魔に心当たりはありませんか?」

「いえ、私は薬草採取のためよく山に入りますが、そのような妖魔に会ったことも、山兵から話を聞いたこともありませんねぇ。」

「そうですか…。」



 会話が続かないまま、梟の里に辿り着いた。

 以前クーマ騒動のときに梟の社の兵と一緒に戦ったことはあったが、社を訪れたのは初めてだった。


「ここが、梟の里。静かな社ですね。」


 梟の社は林の中に突然現れる。大きな神木に囲まれて建っており、いくつもの楠が口を空けたような穴を作っていた。


 社務所に案内されると千尋が応接室に通す。


「こちらでお待ち下さい。今宮司を読んできます。」



 暫くして部屋に入って来たのは宮司と伊三郎であった。


「これはこれは、ご無沙汰しております、サクヤ殿。」

「(たしか…)伊三郎殿、突然このような形で訪れることになり申し訳ありません。」

「難儀なことでしたな。私が宮司の尋衛門です。」

「お初にお目にかかります、乾のサクヤです。この度はお世話になります。」

「折角の機会だ。ゆるりとしていきなさい。赤犬の社には使いを出しておくので心配は要らぬ。

 そういえば、熊騒ぎの時の礼もしておらなんだな。改めて礼を言わせていただこう。」

「いえ、大したことはしておりません。」

「ははは、あれ程の妖魔を簡単に倒せる程の方は、あれを大したことないと言えるのですな。」

「蜂蜜に毒を入れて弱らせたところを倒しただけですから。」

「なるほど、サクヤ殿は策士であられるのだな。お若いのに落ち着いておられる。」

「ありがとうごさいます。ところで、千尋殿は?」

「あぁ、調薬部屋に行ったのだろう。薬草を採取して帰ったからな。」

「千尋殿は薬師なので?」

「元は他国の薬売だったのを息子が気に入ってな。嫁にとってここに住むようになったのだ。もう3年くらい経つな。」

「そうでしたか。私も母様が薬師ですので、調薬を教わってきましたから、他国の薬師がどのような調薬をされるのか気になりまして。」

「そうでしたか。では行ってみてはどうかな?伊三郎、案内してあげなさい。」

「畏まりました。」

「ありがとうございます。」



 サクヤと伊三郎は応接室を出て調薬部屋に向う。調薬部屋は社務所を出て、社殿の西にある薬草園と併設されていた。

 梟の社は、拓けた土地というより、森の中に建物が点在している。上手く森と調和が取れた、自然に対する畏敬を感じる社だった。

 日が落ちたので薬草園の様子は伺えなかったが、整然と植えられた数々の薬草がかなり大規模な薬草園を埋め尽くしていた。


「こちらが調薬部屋です。」

 

 伊三郎が内側に声をかけ戸を空けた。


「失礼します。」

「サクヤお姉様!」

「えっ?!」


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