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浄弓の巫女サクヤ 〜里の因習なんて無理なので御神力を使って鬼を倒しに行きます〜  作者: 一角獣
第2部 進化〜進撃の巫女姫〜

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厩舎

おはようございます

 一旦龍神の社に帰還したサクヤ達は、翌朝赤犬の里に帰る旨を宮司に伝えた。


「そうか。急なこととは思うが、雪の心配もある。帰るなら早い方が良いだろう。」

「長きに渡る滞在、色々お世話になりました。」

「いや、我等も学ぶことが多かった。また、迷惑もかけたしな。また遊びに来てくれ。」

「気が進みませんが、考えてはおきます。」


 顔は笑顔だったが、笑っているようには見えなかった。宮司も笑顔で返したが、少し引きつっていた。


「蒼衣殿と蒼士郎殿はどうする?後から来てもいいが。」

「いや、雪が心配だ。一緒に行こう。」

「そうか。だが、来たところで、今更何を学ぶのだ?」

「此度の鬼との対戦で、己の不足を痛感した。用兵から槍術まで、まだまだ学びが足らん。」

「勤勉なことだ。馳遊馬、其方はどうする?」

「私達も一緒に鍛錬させてもらえないだろうか?騎重郎も含め、鬼と対峙するのにもっと腕を上げたい。」

「そうか、好きにしろ。その代わり滞在にかかる費えは自分持ちだぞ。」

「ぐっ…。わ、わかった…。」

「あのぅ、もしかして私達もですか?」

「いや、蒼衣殿達には世話になっているし、当然こちらで持つ。」

「ありがとうございます!」



 

 翌朝、サクヤ達は出立した。馬での帰路となるので、途中に2泊するだけだ。


「くそっ、俺達は徒なのに…。」


 騎重郎が悔しがっていたが、サクヤは相手にしなかった。


 途中国府に寄って白銀童子の左腕の入った木箱に結界を張った。


「世話になった。また白銀山攻略の際は宜しく頼む。」

「その時には霊徳童子を倒せるくらいの強さを身につけたいものだ。」

「サクヤ殿ならそれも叶おう。」


 輔殿と国府兵は隊列を組んで一礼してサクヤ達を見送った。

 因みに将軍は、報告のために先に帰ったらしい。


 途中は茶店の裏の祠や、国境の北の山に参拝して、お供えをしたりしたが、至って順調な旅となった。

 そして、予定通り3日で赤犬の里に帰還した。



「よく帰った。将軍の命での鬼の討伐までご苦労だったな。」

「やはり奴等は強いです。まだまだ鍛錬がたりませんでした。」

「そうか。サクヤがそこまで言うなら余程強いのだろうな。」

「あと、予定通り蒼衣殿と蒼士郎殿をお連れしました。それから、馬を連れ帰りましたので、厩舎と馬場の手配をお願いします。」

「左馬介から聞いていた。馬場は整備中だが、厩舎は仮設だが準備できている。」

「ありがとうございます。」

「詳しい報告は後日でよい。明日は皆に休暇を与えるから旅の疲れを落とすがいい。」

「助かります。では、龍神社の2人はお任せしてもよいでしょうか?」

「藤十郎が世話しよう。客間は用意しておる。」

「ありがとうございます。では、私達は失礼します。」



 

「なんだか、サクヤが随分大人しい気がするが…。」

「霊徳童子の強さを思い知らされたからでしょう。道中も静かなものでした。」

「そうか。明後日からの鍛錬は厳しいものになりそうだな。」

「おそらくそうなるでしょう…。」



 サクヤは家に帰る前に厩舎に立ち寄った。湖の国産の大型の馬は、走るのは速いが登坂に弱いため、社がある門前町まで上がれない。

 川沿いの拓けた土地にある供物の集落に建てられた仮設の厩舎は、仮設と言わずそのまま完成といっていいほどの立派なものだった。

 現在は集落の奥の未開墾地をならして馬場を建設中で、厩舎もそちらに移設する予定らしい。

 仮設の厩舎はまだ一部が建設中で、その作業を行う男達の中に懐かしい顔があった。


「哲太、元気そうだな。」

「サクヤ!…いや、頭。ご無沙汰しております。」

「哲太、やめてくれ。ただでさえ普段から肩書で呼ばれることなどないのに、同期の者に呼ばれるのはむず痒い。話し方も従来通りでいい。」

「そうか…。とはいえ、話し方が変わったのはサクヤもだろう。」

「これはお役目柄、必要に迫られた結果だ。母様には今でも叱られている。」

「そうか、大変だな。」

「そちらも精が出るな。私が馬を連れ帰った為に、余計な仕事をさせたようだな。」

「いや、仕事があるのはいいことさ。それに馬も可愛いしな。」

「なんだ?顔に似合わず馬を可愛いとか言うんだな。」

「相変わらず失礼な奴だな。だが、馬がいれば機動力も上がるのだろう。これまで以上に忙しくなるんじゃないのか?」

「そうかもしれないな。だが、それがお役目だ。それに、奴を倒すにはまだまだ鍛錬が必要だしな。」

「これだけの物を作ったんだ。見合うだけの働きはしてもらわなければな。」

「哲太の言う通りだ。励まねばならんな。馬達を宜しく頼む。」

「俺は大工で馬の世話をするわけじゃない。馬が快適に過ごせる厩舎を造るだけだ。」

「そうだったな。だが、可愛いがってくれているのだろ?」

「五月蝿いなぁ。まぁ、任せておけ。」

「あぁ、任せる。」


 久しぶりに哲太と話したサクヤだったが、何となく重たかった心が軽くなったような気がして、自然と笑顔を返した。


 そんな2人のやりとりを見ていた同僚達に、哲太が妬まれたり冷やかされりしたのは言うまでもない。



 

「ただいま、母様。」

「お帰り。随分長いご招待だったわね。」

「ご招待というより、半分以上お役目だったからね。」

「えっ!?また鬼を討伐してたの?」

「あれ?聞かされてなかった?左馬介が浄化薬を取りに来たでしょ?」

「あぁ、あれはそういうことだったのね。まさか浄化薬を鬼退治に使うとは思わないじゃない。」

「そう言われるとそうなんだけど、使い方次第で鬼には有効な武器になるから。」

「はぁ、すっかり物騒な子になったわね。

こんな子に育てたつもりはなかったんだけど…。」

「じゃあ父親に似たのかもね。」

「帝に近しい方が物騒な人ってのも問題よね。」

「そりゃそうだけど。頼りないのも困るでしょ。」

「そりゃねぇ、殿方には逞しくあってほしいけど、娘には求めてないわ。」

「それはご期待に添えず申し訳ありませんね。」

「期待はしてないから、命だけは大切にしなさい。必ず生きて帰りなさいよ。」

「うん、わかってる。

 そうだ、私馬を貰ったの。今度母様も乗ってみない?」

「馬…。う〜ん、機会があればね。」

「余り乗り気じゃなさそうね。」

「ちょっと恐いじゃない。」

「でも、旅をするのに馬に乗れたら凄く楽だよ。」

「そうかもしれないけどねぇ。」

「それに、龍馬は凄く優しくて、可愛いからきっと気に入ると思う。」

「龍馬?馬の名前よね。」

「うん。龍神の里で貰った馬だから龍馬。」

「意外と安直ね。わかった。取り敢えず会ってみるわ。」

「うん。馬場ができたら行ってみよう。」



 翌日、例によって薬草園の様子を見てからアカイヌヌシに会いに行った。


「まったく、何処の神も節操がない。」

「確かにヌシ様と違って、簡単に御現れになりますね。」


 これまた例によって、サクヤはアカイヌヌシを撫でながら報告をする。


「でも、私が他所の神様に会ったことをよくご存じですね。」

「ハクコナリヌシが態々伝えて来た。」

「ハクリ様もよく御神域から出られるのですね。」

「あやつはいつもフラフラ出かけて、我の話をほうぼうでして回っておる。迷惑なことだ。」

「その辺りはコトハ様も嘆いておられました。」

「奴も元気なようだな。その結界術も奴からか?」

「いえ、途中で出会った狸の神様にさずかりました。」

「まったく、そんなにホイホイ授けていては有難味がなくなるではないか。しかし、結界術を授けれる狸…。そのような者、記憶にないな。」

「そういえば名は聞いてませんね。御神域もそれ程大きな神様ではなかったので、強力な神様ではないのでしょうか?」

「う〜む、とはいえ結界術を授けれる者などそうはいない。今度ハクコナリヌシに聞いてみるか。」

「そうですね。いつか欠けた結界を直しにいかなければなりませんし。」

「そんな約束までしてきたのか。で、そんなことできるのか?」

「今は無理です。そのうちできるようになったらというお話でした。」

「まぁ、其方ならできるようになるやもしれぬな。」

「精進します。」

「今後はどうするのだ?」

「特にこれといった予定はありませんが、そのうち将軍に強力して白銀山の制圧に赴くことになると思います。」

「そうか。他の社に行く予定はないのか?」

「今のところは。何故ですか?」

「我もまた旅に出たくてな。」

「正体を隠すのが大変なのですが…。鬼防寮の面々は神様と幾度か会っています。ヌシ様もソロソロ正体を明かされてもよいのでは?」

「うむ…、考えておこう。」

「お願いします。正直面倒なので。」

「其方は率直過ぎる!」


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