017 すぺしゃるすーぱー大作戦 Ⅳ
「人類の敵は…ここで僕たちが止める!」
「ははは!あはははは!!君たちみたいな人間に負けると思ってるの?」
大袈裟に笑う魔女を僕たちは警戒しながら凝視する。一見するとただの少女だが、魔線を観ればすぐわかる。あのブレを狙ってやる…それは高い技術が必要だ。こいつは自分達より強いと…自然に身体が縮こまっているのがわかる。
僕達が相手の動きを伺おうと、目の前の敵を凝視し固まっていると魔女はきょとんとした表情で首をかしげた。
「早く来ないの?そうしないと……
あっもう遅いか」
魔女の言葉が途切れた瞬間、魔女の周りが一転する。ドクンと心臓が高鳴る音が地面から天へと鳴り響く。何が起こったのかはすぐに分かった。
(この結界は魔族!それもドラキュラクラスの!?)
薄く赤に染まった結界内には、緑色の肌をした魔物でもあり、人間でもある腐人間がいた。
腐人間、昔流行ったZOMBIE病に掛かった人が、最終的に陥る脳が腐った人間。魔力で脳が作られており、ほとんど魔物になりかけている人間である。
「この、魔ほ…は?!魔族の技…〈硬結結界〉…からだが、っうごか、な」
「く、そ…」
〈硬結結界〉、そんな言葉がシーナの口から漏れていたがそれは上級魔族が使う"賉"の一つだ。人の身体を数秒間硬直させる結界を創り出す。
「マド」
「〈結界破壊魔法〉」
パリン
ガラスが弾けたような音が当たりを振動させる。それと同時に赤暗かった空間は無くなり、いつもの薄暗い夕方の世界に戻る。
「〈跳躍魔法〉!」
ダストの靴が淡く光り輝く。自身の鞘に手をかける。鍔の先には刃は無い。
次の瞬間、周囲は白く照らされる。気付けば、鍔には両刃の大剣が握られていた。子供をゆうに超える大きさのとにかくでかい剣と呼ばざる得ない代物が創りあげられていた。
1歩、それだけでダストと大剣は宙に浮き、一気に腐人間の方へと詰める。
「"〈座標表示〉"」
一筋、光の線が腐人間の首へと飛びつき、ピタッと止まる。
「なっ!」
「困るな〜そいつを殺さないでくれ、ボクの大事なともだちなんだ」
魔女は有り得ない事に剣を手の平で止め、押し返す。そしてそのまま、ダストに触れようとしてくる?!
「〈風斬魔法〉」
僅か1秒、それだけで剣を創造し、凝縮された風の刃を放つ。放たれた刃はダストと魔女の間を切り開く。
ダストは気を取り直し、3回程バックステップをし、剣を構える。
一方魔女は驚く事もなく、1歩下がり、僕らがいる地を見渡す。さっきまではただの少女だったのに、今では全身が震えている。「殺されるかもしれない」という恐怖が頭の中を駆け巡り、全身から冷や汗が湧いて出てくる。
「引け」
「ぁぁあああぁ」
腐人間が魔女の言葉に頷き、大股で森の中へと戻ってゆく。僕が全力で走れば余裕で追いつく速度だ。でも、追いかけることは出来ない。追いかけたものから殺す、と脳内に直接伝達されている気がする。
「はぁ、予想外、予想外…結界魔法をあんなに早く壊されるなんて…やるじゃん」
さっきまでの雰囲気が一瞬で消え去る。魔女の声はそれほど緊張感のない、まるで心の底から褒めている無邪気な子供のような声だった。
あとシーナの頬が少し緩んだのは見なかったことにしておこう。
「さてさて…いきなりですがー君達にはサプライズがあります!」
その瞬間、背筋が凍るのを実感した。悪寒がする。
「パチン!(手を叩く)〈魔弾〉!」
とてつもない数の正四面体の魔弾が宙に出現する。そいつらは、こちらに視線を飛ばし、飛んでやってくる。
「っ!〈防御魔法〉」
自身の前に三重のシールドを展開する。魔弾は風を切りながらシールドへと突進する。パリンとガラスとガラスがぶつかったように2つの音が重なり合う。
「思ったより硬いな〜」
「〈爆発魔法〉」
「え…?あ、まっ…」
ドカーン
魔女の足元から多くの熱エネルギーが放出される。辺りは火山のように暑くなり、とてつもない光と煙を出している。
「ゲホッゲホッ…煙た〜…はぁ…昔じゃこれで終わったんだけどなー」
「「〈跳躍魔法〉!」」
2人の剣士が瞬く間に魔女の所へと近づいた。しかし、魔女は守るわけでも反撃する訳でもなく、避けた。
「な!」
「は?」
その行動はダストの頭をパニックに陥いらせるには十分すぎる誤算だった。
(魔法を使って横やら上へ避けたならまだわかる。でもこいつは何をした?魔法を使わず剣と剣の間をすり抜ける…ほんとに人間かよ、魔女っていうのは)
そう、僕の目にも魔女はおかしく見えた。剣と剣の間僅か30cmも無いところを飛んでふたつの剣の速さに合わせて、宙返り、着地。
だが僕たちは勝ちを確信していた。
「〈光線魔法〉!!」
「〈反射鏡〈ミラー〉〉」
瞬間だった、ダストの剣先からは眩い光が漏れだし、その焦点はやがて、ひとつになる。
剣先から極太の光線が魔女の腹を狙って、放たれる。しかし、魔女はまるで予測していたように、事前に避ける。その様子を見ていたダストは目を細める。
しかし、魔女はダストの事は見ずにシーナを横目で捉えている。
避けられた光線はシーナが作った反射鏡に反射して、目に見えない速度で魔女を撃ち抜く…はずだった。
魔女は見てからは絶対避けれない光線を、避けたのだ、ありえないことに。しかも、狙いは完璧、全て上手くいった連携攻撃だ。
「あぶなっ…でも良いものが見れた…〈光線魔法〉」
その言葉を発し、右手の指先に光が輝き出す。それはダストではなく魔女の指先からだ。
その時、ダストは攻撃姿勢に入っていてがら空きだ。
「「〈防御魔法〉!」」
〈防御魔法〉をシーナと僕の二人で展開する。シーナが頭に三重、僕が心臓に二重の〈防御魔法〉を展開する。
魔女の指先に光が溜まり、ダストの光線より細い光線が放たれる。狙いは腹で、僕の〈防御魔法〉の下側をぶち壊し、右横腹を威力の弱くなった光線が貫通させる。
横腹には、少し風穴が空いている。
「ガハッ!…」
吐血し、そのままダストは気絶してしまう。あのままだと最悪、出血多量やショック死も有り得る。
「シーナさん、ケルナーさん…1分、時間を稼いでください」
「分かった」
「…了解、ダストのことは任せたよ」
2人は1歩前に出て、僕に背中を見せてくれる。やっぱり自分より大きい背中を見ると安心する。こと人達なら大丈夫って信じることが出来る。
「…ふぅ…〈手術 開始〉!」
「…回復ねぇ………ちょっと見たいな(ボソッ)」
「〈風斬魔法 起動〉」
見えない風の斬撃が魔女の元へと走って行く。
「〈風起魔法〉〈魔弾〉、ごめんね」
小さい風と突風を起こし、斬撃と相殺され、魔弾がダストの方へと一直線に進んでいく。
シーナは魔法陣を作っていて、ケルナーは斬撃を更に3つ飛ばし、〈防御魔法〉を使う暇は無さそうだ。
でも準備は完了した。
「〈簡易防御結界…起動、痛み除去…完了、菌削除…完了、身体の複合開始……〉」
カキン カキン(防御結界で弾く音)
「〈風起魔法〉〈風起魔法〉拉致があかないなっと、あぶなっ」
風の刃が魔女へと絶え間なく突撃する。不可視の風の刃は魔女の防御魔法を一撃で破壊するほどの威力がある為、魔女は相殺の魔法を放つが、速さで剣には勝てない。
しかし、魔女もやられっぱなしではいられない。絶え間ない攻撃の合間に〈魔弾〉を作り、全員に攻撃を入れている。
「…!…〈爆発魔法〉!!」
皆が息を吸うことを忘れる。いや、察しただけかもしれない。息をすれば火傷で死ぬという事に。
気温が上昇…上昇…火山の火口付近のように辺りは熱くなり、所々空気が歪んでいる。
シーナが爆発させる地点は自身の手のひらから魔女への噴火バズーカ。シーナの得意な魔法応用だ。爆発を直接当てるのではなく、落石や熱気を十分に当てることができる殺意マシマシの攻撃魔法だ。
「……はは!
〈 反 撃 魔 法〉」




