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バグ・ジャック  作者: 火羅陽
第1章「すぺしゃるすーぱー大作戦!」

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018 すぺしゃるすーぱー大作戦 Ⅴ

「〈反撃魔法カウンター〉」


 魔女は不気味に微笑しながらその魔法を唱える。唱えた単語は"カウンター"。どこか不安な気持ちを抑えて、シーナは魔法を魔女へと放った。

 しかし、魔女は手に握られた魔石を割り、赤色の防御魔法シールドを展開する。

 普通の防御魔法では、シーナの魔法を受け止める事は不可能だ。シーナの魔法はこのメンバーの中でも火力は頭ひとつ抜けている。

 だからいける…と思ったがそんな淡い期待は誰にも届かなかった。


「?!」

「"魔法を生滅させる刃(アンガレット・ラゾタ)"」


 赤色の防御魔法シールドはシーナの魔法を反射した。それをケルナーが間一髪でじゅつを使い、相殺する。


「〈治療完了 意識覚醒 成功〉」

「…!」


 ケルナーの恤がエネルギーの生滅を始めた瞬間、ダストは覚醒する。ダストは訳が分からない様子だったが、やがて全てを思い出したかのように立ちあがる。その様子を見ていた魔女は1度、目を細めるがすぐ元に戻る。


「チッ…なんつー威力…だ…」

「ケルナッ…!」


「迎えに来たよ…お姫様?」


 ケルナーが、魔女の反撃に全身全霊を掛けていると、シーナの真横から聞こえてはいけない声が聞こえる。それは魔女が側にいるという決定的な証拠だ。その言葉にシーナは…固まってしまった。

 しかし、そんなシーナに魔女は止まりもせず手を伸ばしてくる。シーナは首筋にナイフを当てられているような感覚に陥る。


(ヤバイ…このままじゃ、でも、もう…)


ドゴッ


 そんな鈍い音が辺りを支配する。それは人が体当たりで吹き飛ばされた音だった。シーナは宙に浮いてることに気づき、右腰がズキズキと痛む。

 そして、魔女は初めて呆気にとられたような表情をする。しかし、伸ばした手は止まらずに…シーナを吹き飛ばしたダストに伸ばされる。手先が顎に当たった瞬間、魔女が詠唱する。


「〈催 眠 魔 法(マドルファーゼ)〉!」


 魔法を掛けられた途端、ダストは魔法に暖かく包まれる。まるで、それは親が赤ちゃんを寝かしつけるように優しく意識を落としてくる。その久しぶりの人の暖かさを感じダストは頬に水滴をつたらせ、膝を地に落とした。


「ダスっ!!」


 気づけば、ダストは目を瞑りながら立ち上がっていた。重心を低くし、腕を前突き出しし、まるで武術の達人のような構えをとる。そして、瞬く間にシーナの元に移動し、右手で握られた拳を突き出した。


パリッ


 拳が〈防御魔法シールド〉を貫通させ、ガラスが砕けたような音が鳴り響く。拳を突き出したのは、魔女ではなく、目を閉じたままのダストだった。

 拳が命中したのはシーナ、魔法で攻撃を防ぎきれず城壁まで吹き飛ばされる。

 この時、僕、レイ・カルシスは何をすればいいか分からず頭が真っ白になっていた。


(…どうしようどうしよう…魔女に攻撃するべきか?今の戦況はケルナーは致命傷は見当たらないが意識不明…シーナも傷はおっていないが強い打撃により激痛により、戦闘不能。そして…ダストは魔法に操られた。1対2の完全不利な状況…)


 状況の分析をしても思いつくものは何も無かった。これが詰みなのか、とレイは両腕を上に上げようと思った瞬間、思ってもないことが起こる。


「レイ…クリムの治療を」

「っ!?」


 大きな影が魔女を覆う。それは、巨人とも思える様な大男だった。それは魔女の味方ではなく、レイの最強の援軍だった。

 魔女は振り向きざまにその大男と目を合わせる。魔女は今までの驚いた表情が嘘だったかのように目を大きく開き、有り得ない物を見るような目で大男のカルシスを凝視する。

 しかし、魔女は表情とは裏腹に体はしなやかにカルシスの短剣を避ける。一撃目は首、2撃目は首を狙った右手の短剣を空中で持ち替え、胴体を斬ろうとする。


「〈総てを切り裂く刃(ザン・ラゾタ)〉」


 短剣が月の光をそのまま反射したように発光する。短剣が光速で斬撃を飛ばし、魔女の服にかすれる。


「〈魔弾ガレント〉」


 無数の魔弾がカルシスを襲う。だが、大男の軍服に命中する事はなかった。その外見に似合わない短剣を四方八方に揺らし、ひとつの踊りのように魔弾を弾く。

 魔弾を半数程弾き斬り終わった所でカルシスの靴に魔力が込められ、淡く光り出す。


「〈飛翔魔法フラング〉 Shoot」


 発射の詠唱を唱え、魔女の元へ一直線で飛んでゆく。魔女は、仁王立ちで眉ひとつ動かさない。そして短剣が魔女へと近付く。

 残り5m、4m、2m、1m…その間合い、それはカルシスの狙い通りだった。

 カルシスは手を離し、短剣を文字通り"発射"させる。その速度は、飛翔魔法が遅く見えるほど早く、見ることすら難しい。もはや短剣と呼べるものではなく投げ槍のようになっている。


「………〈真空空間ノンセカリティ〉!」

「…っ!」


 槍が魔女との距離を激的に近づけたが突然バグが起こったかのように真下に落下してゆく。

 カルシスは1度、魔線を読み解き落ちていく短剣を掴み取る。掴み取った勢いで短剣を振るう。気付けば、左手にも同じような短剣が握られている。しかし、魔女は少し頬の端を持ち上げながら攻撃を捌く。

 拉致があかないためカルシスは1歩足を引く。


「…若作りが上手いな、魔女」

「どういたしまし、て!」


 弾速の速い魔法が魔女の背中から弧を描きながらカルシスへと向かう。

 カルシスは焦ることなく、冷静に防御魔法で防ぐ。


「…まるで子供を相手してるように、攻撃も分かりやすいのに、何故かこちらの攻撃はあたらん」

「攻撃がわかりやすいんだよ…お互いに」

「…ひとつ、貴様に問う…貴様の右目はナニが見えてる?」

「…」


(勘ぐられてる…か…この人間、まだ60パーセントも出してない…早めに倒さないと面倒くさいことになる)


「なに、今のは忘れていい…どうせ私が貴様を殺すだけだからな」

「あはは!いいねぇそう来なくっちゃ!」


 無邪気な子供のような声を上げる魔女。また、カルシスも微笑しながら2個の短剣を握りしめる。形は歪で半円のような形をした刃。

 静寂を破ったのは大男…カルシスだった。その巨体に似合わぬ速さに魔女は驚くことも無く、軽々とステップを踏むように片足を1歩前へ動かす。魔女の足が地に着いたその時、カルシスは加速し、魔女との距離はわずか1mもない位置まで移動。


 ヒュンッ


 風を斬る振動が耳に届く。カラスの毛のように少し青みがかった黒色の髪に剣先が触れる。魔女は、相変わらず微笑を浮かべながらカルシスの右腕を掴む。カルシスは左手にも握られている半円刃を魔女へと放つ。ビリビリという音と共に魔女の服が布のように裂ける。


「なっ!」


 魔女はカルシスの腕を支点にぐるりと上に回避、右腕にある半円刃を防御魔法を付与した膝に挟み込み、カルシスが左手の刃を光らせた瞬間に風を起こし、離れる。


("体を麻痺させる短剣(コルセルテ)"触れただけで筋肉を痙攣させる魔道具ねぇ…)


短剣を遠くに投げ飛ばしながらそんなことを考える。


arrowアロウ


 無数の光の矢が魔女を襲う。魔女は防御魔法を展開せず、魔弾をカルシスに飛ばしながら矢をかわす。

 カルシスは短剣で捌きながら近づいて行く。魔女は魔法の矢を爆走しながら、体をうねらせ殆ど全てを間一髪の所でかわす。その動きはまるで二足歩行をした猛獣のようで、不規則かつ捉えずらい。


「なによ…これが…魔女?こんなの野生児じゃない…」


 痛みを抑えながら2人を見ていたシーナがポツリと呟いた。その呟きはシーナを治療している僕にしか聞こえず、僕は黙ってカルシス達とは違う方向を見ている。


「…シーナさん…おやすみなさい」

「…え…なに…いっ…ZZZ」

 

 魔法でシーナを眠らせ、地に静かに落とす。

 その後、おかしくなったダストがシーナ達の元へと走ってゆく。レイはしゃがんでいた腰を上げ、その銀髪の髪をなびかせる。それは今までのレイの雰囲気とは打って代わり、とても、大人しそうには見えなくなっていた。


「〈―――〉」


 レイが口を動かしてすぐ銃を発砲したような音が鳴り、ダストの体は丘のいただき付近に移動していた。


「こんな姿見せられないな…」


 レイはその酸化した軍服の袖を数秒見つめ、魔女の方へと走り去っていった。


 向かった先ではさっきの肉弾戦と一変して、魔法戦へとなっていた。熱、電気、風、光など、様々な魔法を使い、相手を攻めていくカルシス。攻撃の先には、すべて相手と同じ魔法を使って相殺する魔女の姿があった。

 速度や強度は増していき、次は違う魔法同士が衝突、魔女は光の破片のような魔弾を放ち、その魔弾はジグザグと変な挙動を取りながらカルシスの元へ飛んでゆく。


 カキンッ


 甲高い金属音が響く。魔女の魔弾はカルシスが的確に〈防御魔法〉を展開し、突き刺さった。魔法で手に負えない魔弾は


「〈大魔法ステシアル 起動〉」


 カルシスの短剣の鍔に繊細な魔法陣が浮かび上がる。それに、魔力が注入されて白く塗りつぶされていく。

 魔女は舌打ちしながら距離を詰めていく。魔法を使っているのか1歩1歩が離れていて、一瞬でカルシスの目の前に来る。


「〈魔弾・熱(フィアガレント)〉」


 レイの炎の魔弾は疾風の速さで魔女の左肩へと向かって行く。その威力は高くは無いものの致命傷には絶対なる程で、魔女は左手を魔弾に掲げ、その手から直接〈防御魔法〉の様な物を展開する。


「終わりだ」


 その瞬間、カルシスが魔女に1歩踏み出し、短剣を横へ振りかざす。いくら魔女でも、魔法を展開しながら別の魔法を使いカルシスの刃を避ける事はできない…と高を括る。

 魔女へ刃が命中する瞬間、魔弾が着弾し、小爆発を起こしながら辺りを黒煙で包む。


 沈黙がとても長く感じた。魔女を倒せた?カルシスはどうなった?そんな事が頭の中を空回りする。なにも集中出来ない。しかし、まだ生きてる可能性がある。しかし、心では分かっていても、さっき使った魔法のせいか、精神はすり減っていた。

 黒煙が薄く、薄く、薄く…気付いたら僕は冷や汗を流しながら恐ろしいものを見る目でそれを見ていた。


「あ…」


 乾いた声が口から漏れる。やられたという感情が強かったがいつの間にか「なぜ?」という疑問に変わっていた。

 視界には、魔女が無傷でカルシスの短剣を持ち、腹部に突き刺していた。カルシスの短剣"体を麻痺させる短剣(コルセルテ)"は血液を通じて筋肉を痙攣させるため、もう口を動かすのも難しいだろう。

 なぜ、魔女は捨てたはずの短剣を握っているのか、カルシスの持っていた短剣は的中していないのか?疑問は沢山出てくるが答えてくれる人は誰もいない。


「…!」


 いいやそんなことを考えてる暇はない。今考えるのは目の前の敵を殺すこと…それだけで容量は充分だ。


相手はドラキュラ以上の代物、世界最古の魔女


 "洗脳の魔女"なのだから…

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