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正義が勝たないデスゲームから脱出しよう【R15】  作者: かざみはら まなか


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522.弟は、無断欠勤を繰り返した尾長さんと上司の田浦さんと連絡先を交換済み。俺の自惚れは、俺の視野の狭さを疑わせなかった。

「弟さんは、後輩の尾長さんと上司の田浦さんに、自宅の固定電話の番号を教えましたか?」

とカガネ。


「教えていません。」

と弟。


考え込みたくなる俺とは対象的に、冷静に質問を続けるカガネ。


「田浦さんと尾長さんに、固定電話以外の連絡先も教えていませんか?」

とカガネ。


「尾長さんとも田浦さんとも、スマホの連絡先は交換しています。


仕事を教えている期間に、無断欠勤する尾長さんの件で田浦さんや尾長さんと連絡をとっていたので。」

と弟。


仕事を教えている期間に、弟と後輩の尾長さんが一緒にいることは、不自然ではない。


弟や尾長さんが、上司の田浦さんに報告する形なら、尾長さんと田浦さんが弟の情報を交換して共有することを業務の一貫にできる、か。


「弟さんから仕事を教わっている期間の無断欠勤は、弟さんから尾長さんに連絡を取る理由になる。逆もまたしかり。」

とカガネ。


「交換した連絡先が、使われている連絡先かどうか確認するための無断欠勤か?」


「尾長さんは、職場に来て仕事をすることが社会人としての当たり前じゃない人だったから、出勤する気になれなくての無断欠勤もあるかも。」

と弟。


尾長さんの無断欠勤は何回もあったのか。


「仕事はせずに給料だけもらう魂胆か。」


「さあ?話題にはなったけれど、尾長さんがどういう枠で採用されているのか、俺の周りで知っている人はいなかったよ。」

と弟。


「田浦さんが採用されたときの話はどうですか?」

とカガネ。


「田浦さんは、試験を受けて就職した人だと聞いています。他部署には、田浦さんの同期の人もいます。」

と弟。


「ショウタ。尾長さんが弟さんの後輩として市役所に入った時期と、弟さんと尾長さんの上司になる田浦さんの異動時期が同じなのは。」

とカガネ。


俺も、認めざるを得ない。


「ユキミの勤務先である市役所は、ユキミにとって安全な場所ではない、か。」


弟が今日まで無事でいたのは、支援団体が実行に移していなかっただけだ。


再会した弟が無事だったことに間一髪間に合ったと安堵するより。


食うか食われるかの瀬戸際に立たされているという危機感の方が先にくる。


今日まで弟が無事だったのは、弟が無事というカードを俺に切るためだったのではないか?


今日のタイミングで、帰省してきて良かった。


俺の帰省が、もっと遅かったら?


そう遠くない未来で、俺は、手遅れになった現実を受け入れることになっていたと思う。


俺は、自身が生き延びることに気を張っていた。


しかし。


自分以外がどうなっているかなど、考えていなかった。


俺の視野は、俺自身が考えているよりも狭かったという事実が俺に突き刺さる。


判断材料が揃っていても、判断を誤る人の中に俺自身も含まれるのか。


正義が勝たないデスゲームと関わりを持つまでの俺は、失敗らしい失敗をしたことがない。


正義が勝たないデスゲームを経験し、正義が勝たないデスゲームに参加した経験を糧に変えたという自覚が俺にはあった。


正義が勝たないデスゲームを経験していない人達とは一味違う経験をして、一皮むけたという自負も、俺のなかで生まれていた。


俺の中に生まれた自負は、俺が知ろうとしてこなかった世界を知った気になったときに芽生えたもので。


自惚れと言い換えても差し支えないものだったと今なら分かる。


いい気になって、自分勝手な解釈をし、理解から遠のいていたと気付いたからには。


見ているものの解釈を巻き戻していく、か。


一人で生きてきた気になっていたが、思っていたよりも、俺は一人で生きていなかった。


一人でなかったのは、俺だけではなかった。


実家に帰り、弟とお父さんお母さんの話をして。


誰かの親だったり、誰かの子どもだったり、恋人だったり、友達だったり、同僚だったり。


生きることの繋がりに気付いた。


北白川サナと北白川サナの家族が受けた仕打ちが、支援団体のやり口だ。


支援団体は、人が生まれてから生きていく上での必要な繋がりを辿って消していく。


北白川サナがタケハヤプロジェクトの学生とうまくいかなかった一番の原因は。


家庭の事情もさることながら、支援団体の暗躍だ。


タケハヤプロジェクトの学生の中にいた支援団体のスパイによって、タケハヤプロジェクトの他の学生との繋がりを断たれたことが、北白川サナが孤立する決定打となった。


北白川サナへの襲撃は、支援団体が糸を引いていて。


タケハヤプロジェクトの学生の中にいるスパイが、北白川サナへの救援を潰した。


味方であるはずのタケハヤプロジェクトの学生に助けてもらえず、タケハヤプロジェクトの学生から見捨てられたと思い込ませて、北白川サナを手中におさめた支援団体は。


用済みになるまで使い潰してから、希望だけ持たせて正義が勝たないデスゲームに放り込み、使い道のなくなった北白川サナをこの世から消し去っている。


支援団体に使い潰された北白川サナは、無念の内に亡くなった。


正義が勝たないデスゲームを脱出するために、北白川サナの無念の死に手を貸した俺は。


正義が勝たないデスゲーム脱出後、北白川サナの遺族と顔を合わせた。


支援団体がどんな風に北白川サナを追い詰め、北白川サナの家族に犠牲を払わせたか。


俺は、自分の足を使って確認した。


北白川サナが、自身の利用価値が下がったときに支援団体にどう扱われるかという問題に希望的観測を持ち続けなければ。


北白川サナと北白川サナの味わった辛酸は、いくらかマシだったか?


北白川サナが支援団体に使い潰されたのは、北白川サナと支援団体という組み合わせだからか?


違う。


支援団体に使い潰されるのは、北白川サナに限らない。


判断材料は山程あったのに、気付かずにいたのは、俺だ。


俺や俺の家族が、北白川サナの立ち位置に置き換わることがあるなど、俺は考えていなかった。


俺が、俺自身の価値を見誤らないというだけでは、戦うのに不十分だ。


人と人との関係性を無視しては、支援団体に勝てない。


俺自身に価値があるから俺の意識していないものまで大丈夫、とはならない。


俺が自身の社会的な価値について理解したのは、正義が勝たないデスゲームを経験した後。


物を知らず、自覚もなかった、正義が勝たないデスゲームに参加する前の俺と、正義が勝たないデスゲームに参加した後の俺の価値を比べたなら、前者はないも同然。


俺の家族や俺の家族が親しくしている誰かの安全を保証するために引き換えにできるものが、俺にも俺の家族にもなかった以上、俺が不服を述べる相手は内部にいない。


結論。支援団体が全部悪い。


支援団体がタケハヤプロジェクトに介入しなければ、佐竹ハヤトは今も元気だった。


支援団体にタケハヤプロジェクトに介入することを良しとした大人がいなければ。


多くの人が支援団体に引っ掻き回されずに済んだ。


佐竹ハヤトと仲良くなってからの俺には、正義が勝たないデスゲームに参加する前から公安がついていた。


正義が勝たないデスゲーム脱出後に、公安と歩調を合わせて動いている俺に、支援団体が直接手を出してこなかった。


俺や俺の家族はそう簡単に脅かされないと思い込んだ俺は、危険が及ぶ可能性について考えることがなくなった。


俺が思考を止めている間に、時間は過ぎていった。

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