37 大体喫茶店の飲み物は雰囲気が美味しくさせてる
更新再開☆
■ 水の都 アクウィリス 中央噴水広場 昼
「うおぉ・・・なんつーか、これは・・・」
「あぁ・・・・こりゃあよぉ」
「「すっげえな!!」」
「引っ張っといてその程度のコメントしか出んのかい!」
アキトとタクミがキョロキョロと街中を見渡し、声を揃えて感想を述べる。二人の後ろからタカヒロが素早いチョップとツッコミを入れつつも、視線は街の景色に瞳を輝かせていた。
白を基調とされたその街並みは、洗練されており、所々に水と調和された正に『水の都』と言わざる負えないであろう景観に、グリーンベルよりも人種の種類が違い、ヒューマンが多かったグリーンベルに比べ亜人や獣人が多く感じられる。人々の表情は明るく、しかしどこか忙しそうにしているのだった。
「ささ!ここが銀嶺の憩いでございます!」
笑顔で案内をした、青い鱗に角と尻尾の竜人ルトが快活に一軒の、オープンテラスの様な喫茶店を指差し、レイ達を促した。
未だ全員周囲の風景を物珍しそうに風景に夢中になりつつも、渋々と行った感じで店内へ向かった。
「あら、良い雰囲気のお店ね」
サナダは木を多く使った落ち着いた店内を起きに召した様だ。
逆に三人組は「ちょっと落ち着かねえなぁ・・・」と言いながら有名なファーストフード店が良いと言い出す始末。レイは苦笑しながら皆と一緒に席についた。
「さて、クラウス殿が来るまでの間に、レイ殿が気にしていた、我ら竜人について話すとしましょうか。」
「ん、ありがとうございます。お願いします。」
「ではでは、不肖このルトめが承りますぞ。竜人の起源は龍出流国、ドラゴディアから始まります。我らの祖である龍神様の卵より生まれたのが我ら竜人と言われておりまする。
竜人は優れた身体能力と、個体によっては飛ぶ翼を有していたりと、戦闘能力は他種よりと高いと言えます。しばらくは龍神様を祀りながら穏やかに暮らしていたと伝えられます。」
一旦お茶を飲み、少し険しい顔をしながらルトは話しを続ける
「しかし有る時、力を持ち邪なる竜人が生まれました。その竜人はヒューマンを誑かし、その牙を同族へと向けたのです。」
「どうしてです?」
「その者は生まれてから強い力を持ち、皆から持て囃され増長していたのです。そして一族でももっとも美しいと言われていた娘、名をユスティアと言うのですが、その娘に俺の嫁になれと迫った。
だが、それは拒否されました。ユスティアには想い人がすでにおり、更には嫁になれと迫る竜人には既に幾人もの嫁が侍っていたのです。
力の強いものに惹かれるのは一族的にはおかしい事では無いのですが、ユスティアはその竜人の横暴な態度や我儘な性格を嫌ったい事もあって断ったと伝わっています。」
「あらあら、どこでも恋愛は複雑ねぇ」
「そうでありますな!あのクラウス殿も何を隠そうこの銀嶺の憩いの看板娘、ミィさんが好きだとかでして!人気が高いのに、志が高くて良い事ですな!あ!ミィ殿!おかわりを所望しますであります!」
手をぴっと真上に上げながら、猫の獣人の店員にはお茶のおかわりを注文するルト。
愛嬌のある店員は長い尻尾をゆったりと揺らしながら「はいはーい」と笑顔で注文を受け、奥へ向かって行った。心做しか他の客の視線がミィと呼ばれる獣人の尻尾ならぬ尻を追って居たのだが、レイは気にせずルトへ話の続きを要求した。
「クラウス殿の恋愛事情は置いときまして・・・そしてその邪なる竜人は断られた事に怒り狂い、暴れだします。一族総出で鎮圧し、終わった時には犠牲も多かったそうなのです。
一族の長はその竜人が危険だと判断し、当時住んでいた集落からその竜人を追い出しました。
幾人かはその竜人について行ったそうなのですが、日々迷惑を被っていた他の一族は喜び、また穏やかな日々に戻った・・・筈でした。」
「おぉう・・・気になるぜぇ・・・」
アキトが手を握りながら飲み物を飲むのも忘れ、ルトの話に夢中になっていた。
「ある日、奴らは戻って来たのです。大勢のヒューマンを連れ、自身を竜王と名乗り。」
「竜王・・・・」レイは小さく呟いた。
「竜王は情け容赦無く、一族を人族と共に襲いました。女と卵を奪われ、男を片っ端から殺して回ったのです。俺に従わぬ竜人はこの世に不必要だ、と。
一族は少なくなたった皆と一緒に命からがら、洞窟へと逃げ込みました。
そして、その時有るお方に出会ったのです。」
「誰に出会ったの・・・?」
レイはわくどきしながらルトに問うた。
「名をハク、白き衣纏いし、妖狐様でした。」
良い笑顔で応えるルト。
「あらまぁ、なるほどね☆」
何かを理解したようなサナダに
「どゆこと?」
「んー?レイか?」
「あほう!昔の話しだろうが!」
いつもの調子の三人に
「「・・・・・・やはり、愚か者・・・」」
と姉妹が小声で呟いていた。三人には聞こえな方様であるが・・・
一同を見回し、一つ頷くと、ルトは店員に貰ったお茶を飲み続きを話しはじめる。
「洞窟に住んでいた妖狐に出会った一族は、懇願しました。助けてくれ、と。見返りは何でもすると。
妖狐様はこう言ったそうです『友誼を結べるなら是非も無し。』と。
深く感謝をしながら一族は妖狐様の洞窟に匿って頂きました。しかし・・・・」
「見つかった・・・・」
「そうです、レイ様。その洞窟を探し出した竜王とヒューマンは、一族が持つ『ある物』を探知し、追いかけてきたのです。」
「ある物ってなんなんだ?」
「アキト殿、それは『神器』であります。」
「「「神器??」」」
「そうです。神器であります。そして龍神様より賜りしその神器を持って居たのが・・・」
「ユスティアね☆」
「大正解であります!サナダ殿!もはや竜王の狙いが神器である事は明白であり、しかしてその事で気が付いた時には既に遅く、洞窟は囲まれていたのです。
一族はすぐに神器を竜王達に渡そうと言い出しましたが、妖狐様がそれを止めます。
『神器を悪しき者へ渡せば、世界が混沌に包まれる』と。そして妖狐様は一族を洞窟に残し、単身竜王らに立ち向かいました。
幾日も戦いの音が外から聞こえ、もはやこれ以上妖狐様だけを戦わらせないと、残った一族・・・少しの男とユスティア含む女子どもで反撃に出ようとした時、『それが起こった』のであります。」
皆聞き入っており、ルトへと視線が集中する。
若干サナダが別種の熱い視線を送っており、ルトは背中に冷たい汗を感じつつ、話しを進める。
「反撃に一族が外に出ると、妖狐様が洞窟前で仁王立ちをしていたのです。
夥しい傷、矢が多数刺さり、美しく8つあった尻尾が残り二本程になって、それでも妖狐様は
一族を守らんと、洞窟を死守するように仁王立ちをしていたのです。
その光景に皆が言葉を失っている中、ユスティアは飛び出しました。
すでに想い人を亡くしており、さらには寡黙ながらも優しい妖狐様に惹かれて居たユスティア。
なんとか妖狐様の元に辿り着いた時、彼女は突然泣き出しました。
妖狐様は、既に事切れたいたのです。眼光鋭く、敵を睨みつけながら。
ユスティアはその妖狐様を慈しむ様に、そして死地を此処と宥め妖狐様の亡骸に口づけを交わし
ました。その時です。
ユスティアは確かに聞いたそうです。『願い、聞き届けたり』と。」
「なんて綺麗で、残酷なのかしらね・・・」
サナダが呟く
「そしてその声の後、『それ』は起きました。天から雷が幾つも落ち、一族とユスティアを囲みながら揺らめく蒼い炎。天より舞い降りし黒く美しい妖狐様・・・『タマモ様』が降臨したのです」
「タマモ!」レイは驚き、自身が声を出していた事にさらに驚く。
アディとルディが心配そうにレイの元へ近寄り、世話を焼き始める。どうやらお茶を零したようだ。
「そうであります。タマモ様が降臨され、ユスティアと一族にこう告げたそうです。
『白狐の願い聞き届けたり そこな娘 命を捧げる覚悟はあるか?』と。ユスティアは
『この命はハク様へ捧げます いかようにも』と答え、一つ頷いたタマモ様は周囲に残っていた竜王
とヒューマン達を強大な妖術により退け、一族を救って頂けたのであります。
もう竜王の一族が居ない事を確認したタマモ様は一族に『友誼の証にこれを』と一つの勾玉を
お渡しくださり、そしてある場所を教えてくださりました。
ユスティアは神器を残りの一族に託し、タマモ様と神域へと去り、その後姿は見せなかったそうです」
「その、ある場所って・・・」
「この水の都アクウィリスであるな!!」
突然の大声に全員が驚いて顔を向けると、クラウスが鎧を輝かせながら立っていた。
「おぉ・・・クラウス殿、驚いたのであります・・・・」
「心臓止まったわ!」「あほかオッサン!大声すぎ!」「いつからいたの・・・?」
ルトと三人組がごちゃごちゃと文句を言いながらクラウスに椅子を差し出す。
クラウスは椅子に座りながら「いやぁ、すまんすまん」と言いながら店員にお茶を注文
若干目尻が下がっていた事にクラウス以外の全員は気が付いていたが、皆何も言わなかった。
「さて!クラウス殿の邪魔は入りましたが、これが竜人族に伝わる伝承と、この水の都を成り立ちでございました。いかがでしたか?」
「ん・・・ありがとう、楽しかった。タマモが今何歳なのか気になったけど」
「あらん☆絶対聞いちゃだめよ、レイっち☆」
「「私達にも控えて下さるとたすかります レイ様」」
「ん・・・わかった」
実はパーティーに加入した姉妹のステータスは把握出来ており
その時年齢が56である事を知っているレイは、心の中にしまう事にした。
「え?でもステータスにはごじゅぶべらっ!」
なにかアキトが言おうとして、姉妹の「手が滑りました」の掛け声と共に顔に熱いお茶をかぶる
アキトを見て、心に誓ったわけではない。けっして!
「それにしても、ずいぶん深くこの国とタマモは絡んでるみたいだな?なんかタマモに繋がる神社?とかあんのか?後神器ってどんなんだったんだ?」
タクミがアキトの惨状を見て見ないふりをしつつルトの問いかける。
アキトは床を転がりながら「うおおおおおおお」と外の水場へと横回転で向かって居たが。
何人か通行人にぶつかり「うおっ!」とか「きゃあ変態!」とか「俺のパティにてめえ!」と
何やらトラブルを発生させているが、見ないふりをした。
「あ・・・ええと、神器でありますな!それならば「これであるな!」」
「ふぇ?」
クラウスがルトの話しをぶった切りながら、首に下げていた『龍鱗』をテーブルに置くのだった。
「そんな気軽に・・・大丈夫なの?」
「大丈夫であるぞ、レイ殿。そのルトの申した伝承では一つしかなかったが、信仰が増し、力をつけた龍神様がこの国の守護者へと幾つも下賜して頂いておるからの」
「そうなのか・・・そこらへんも詳しく聞きたいもんだけどな・・・」
なんとなしにタカヒロがその龍鱗を手に持った瞬間、パーティー全員にアナウンスが響く
『■■クエストの進行を確認 アキト タクミ タカヒロのログアウト可能となります クエストの途中放棄は出来ません 職業 龍の尖兵 が開放されました』
「「「「え、えぇ〰」」」」
なんだか微妙なクエストの進行の仕方に困惑する一同。
そろそろ助けようかしらとサナダがアキトへと視線を向けると、屈強な戦士の風貌をした竜人に
土下座をするアキトが目に入ったのであった。
「前途多難ねぇ」




