24 儚さ脆さ
気圧の影響か、体調悪く遅れました・・・
その代わりに長めにしたので・・・楽しんでくらはい・・・・
■赤星の旅団 ギルドハウス
「それで、メディ、首尾はどうなんだ?急にメッセ飛ばしやがって
こっちはリアルで仕事だったてぇのによ!」
赤衣を纏った男が酒の入った瓶を乱暴に机に置きながら声をだす
「それはごめんさないね。でもね団長、見つけた(・・・・)わ」
赤髪の女はそんな男の態度を気にもせず、話を続ける
「何を、何処で、いつだ?」
「捕獲対象を発見、このグリーンベルの町で、夕方過ぎって所ね」
「この町でだと!?依頼書には辺境じゃなきゃ見つかんねぇって話だったろ?」
「えぇ。でも居た。私の【鑑定眼】で確認済みよ」
「おいおい・・・まじかよ・・・・こりゃあ成功すりゃあ昇格もんじゃねぇか?」
「うふふっ!何故か住人(NPC)が旅禍だって嘘ついていたけど、ね
まさかなんにも隠さずに町をうろついてるなんて思いもよらなかったわ」
「追跡は?」
「アレンとリョウが向かってるわ、盗賊ジョブでレベルも高いから大丈夫でしょう」
「うし!団員全員集収だ!フレンドメッセ飛ばせ!今日はフォックス狩りと伝えろい!」
「ラジャー団長っ!楽しくなってきたわね!」
「あぁ!このゲームはストレス発散には最高だ!何でも(・・・)出来るしよ!」
くつくつと笑う二人の笑い声が薄暗い部屋の中で響くのであった。
■
グリーンベル 鍛冶屋 ワッツ工房
「とりあえず出来上がるまではこれつかってろい!」
ぽんと渡されたそれに釘付けになるレイ
「あの・・・これ・・・・」
「あ?たいした事ねぇだろい!カミさんの余りもんで作ってみただけの駄作だぁ!」
「いや、レア度が・・・」
手渡されたその二刀にはくっきりと
・闇竜の無名刀二対 レア度4 (レジェンド)
と浮かび上がる情報がでており、困惑するレイ
(ダンジョンドロップでもユニークが基本最高じゃないっけ・・・?こんな
簡単に手に入る物じゃ無いような・・・・しかも闇竜って・・・・)
返せと言われる前にそっと腰にさしておく
「おう!それで我慢しとけい!」
(全然返事聞かない・・・さっき月晶石と素材渡してからずっとこんな感じだし・・・)
「あの、いつぐらいに出来ますか?」
「おう!・・・・あ?3日もありゃあ完成するからよ!適当に時間つぶして来てくれ!
カミさんがいりゃあ泊まってけって言えたんだがなぁ!」
「ん、わかりました。」
(正直他にも聞きたい事とかいっぱいあったんだけどなぁ・・・)
ハンマーを叩き、炉を見始めたワッツを置いて、レイはとぼとぼと歩き出す。
『同調律の上昇を検知 これよりプレイヤーの皆様には 空腹値が出現します
水分や食料を補給し ゲージを保って下さい 減少時にはステータス低下
並びにHPが徐々に減って行きます』
(!またアプデの変更点!?空腹値の追加・・・かぁ・・・ふうん・・・
とりあえず、月の洞窟に戻ってからタマモの所にこうかな、約束したし。
あ、泊まったり出来るのかなぁ・・・一応野営セットやら必要そうな物は買っておいたけど
それにしても、やけに食料や水を進められたのはこれが原因なのかな?)
レイはワッツの工房を訪れる前に道具屋へと向かい、月白虎で一度全額失い、タマモとの修行で
少し貯まっていたコルを散財していた。
その際に、冒険者なら絶対に必要だ!と干し肉やら水筒やらを買わされていたのだった。
(あっ!砥石!・・・まぁいっか!)
三日したらまた来るのだし、最悪ログアウトして一日経てばこちらの世界では三日という事
も有り、レイはあまり深く考えずに北門を目指す。
(それにしても、夜でも賑わってるんだなぁ・・・)
街灯は明るく、舗装された煉瓦を照らす。行き交う人々は多く、皆楽しそうに食事をしたり
装備を見せ合ったりとしていた。
(プレイヤーかな?あのアナウンスが入ったのも今日だし、皆沢山遊べて嬉しいんだろうな!
僕もだけど!)
実際ネットニュースではトップ記事に上がっており、世界を驚かせ、更にラヴィアン・ワールド
の熱を加速させているのだが、レイは未だログアウトをしていない為知らない。
姉がその記事を読んで、ゲームの世界ならば三倍一緒に居られると知ってしまった事を
レイはまだ知らない。現実での接触を禁止されている姉のフラストレーションをレイはまだ知らない。
「こんな時間に外へ行くのか?身分証はあるか?」
夕刻の時とは違う門番へと仮の身分証を渡しながら応えるレイ
「んと・・知りあ・・・いや、ダンジョンに行くので!」
「そうか!嬢ちゃんは冒険者か!腕輪もちゃんと・・・ついてるな!よし!
気をつけて行って来い!」
最初は怪しんだ目をしつつも、何かに納得した様な門番に門を開けて貰い、レイは月の洞窟
へと向かう為に草原地帯を突き進んだ。
(轍道・・・多分街道かな?ら辺はキャンプが多いなぁ・・・あの赤髪の子が言ってたけど
旅団?の人が増えてる影響なのかな?起こしちゃ悪いし、離れてちゃちゃっと進もう!)
腰つきランタンを装着し、駆け足でリアラ湖へと到着、地図を確認し森の中へと入る
(あれ・・・?月の祭壇・・・?名前変わってる・・・?)
月の洞窟だった名称が月の祭壇へと変わっているが、場所は同じ位置に存在し
レイは困惑しつつもダンジョンへと向かった。
(気のせいだと思ってたけど・・・・見られてる?)
町を出た辺りからちりちりを感じる視線。
魔物か何かだと思っていたが、森に入っても感じる視線に違和感を覚える。
(早くダンジョンに入って勾玉を使おう!)
ぎゅっと首飾りの勾玉を握りしめながら、不安に駆られ夜の森を走る。
(足音!近づいてくる!僕より・・・早いっ!)
木々や草を揺らす音が段々と近づき、レイの耳がぴくんと反応した。
(後もうちょっとで着く!早く!・・・・っっ!)
右足に違和感を感じ、視線を下げると、矢が貫き細い右足から血が湧き出て居た。
対ペインスキルの効果で鈍い痛みと痺れに押さえられているものの、バランスを
失い転倒してしまう。
(やられた!矢!・・・・PK(人間)かっ!)
すぐさま周囲を見回すも、深い闇が森を支配しており、ランタンの効力も木々に
遮られているのか余り見えない。
(まずい!・・・・どうする?・・・とりあえず起き上がらなきゃ・・・!?
動かない・・・!?麻痺!?)
視界内に映るHPゲージの横に麻痺と出血のバットステータスが表示されており
レイの体力は三分の一程削られていた。
混乱していると、木々の合間から鈍く光りが見え、風切り音を立たせながら
矢がレイへと飛翔していた。
「うっ!・・・・ぐぅ!」
辛くも見をよじり、肩口に突き刺さった矢
徐々に、そして明確に減るHPに背中から冷や汗が滲む
(リスポーンは良いけど!・・・刀や勾玉がドロップしたらまずい!
絶対二度と手に入らないだろうし・・・タマモとの約束が守れない・・・!)
なんとか逃げようと藻掻いていると、暗がりから声が届いた
「はぁい!レイちゃあん!つっかまえたぁ!」
「・・・・メディ・・・・さん?」
現れたのは赤髪の・・・大人の女性だった。
「背が・・・?なんでこんな・・・?」
「うふふ・・・それはねぇ・・・・」
「おい!遊んでねぇで早俺達にまわせよ!」
メディの周りから何人も赤衣を纏う集団が現れ、レイを囲む。
「あぁん!こうやってネタバラシして獲物の絶望顔を見るのが最高なんじゃない!
今回は依頼で仕込みが全然なんだから、ちょっとは楽しませてよねっ!」
「今回はミスリルに上がれるかどうかがかかっているんだぞ?それにあの方のお抱えに
なるチャンスってんだ。我慢しろ。」
「はぁ・・・今度の狩りは楽しませてよね?」
「あぁ、お前の目は特別だからな」
大柄な男とメディがため息をし、一歩さがると他の赤衣達を纏う男が出てきた。
「レアユニークの【鑑定眼】持ちは羨ましいねぃ」
小柄な赤衣がやれやれと方を揺らす
「お前だって、【阻害結界】のスキル持ちじゃねぇかよ、アレン」
黒髪の赤衣が小柄な男を小突きながら
「おいおい、リョウ、それはマナー違反だぜ?」
「良いじゃねぇかよ!団員と獲物しか結界には入ってねぇし!」
「ま、それもそうか・・・だんちょー!それにしてもこんな上玉、楽しむよな(・・・・・)?」
大柄な男にアレンとリョウと名乗る男が懇願する様に問いかける
大柄な男は酒をあおりながら
「たりめぇだろ?こんな機会現実じゃぜってぇねぇ。本当に最高のゲームだ。」
いやらしい笑みを浮かべながら向けられる視線に、レイは言いようも無い
粘土質な、身体全体を縛る様な嫌な何かと、体温がざがっていく感覚を覚える。
「「いやっほぉ!まずは服はいじまおうぜ!」」
ハモリながら小柄と黒髪が向かって来る。
必死にレイは手を動かし、メニューからログアウトしようとするも灰色となっていて出来ず
勾玉を使用しようとするも効果は発揮される事は無かった。
「おい!メディ!ちゃんと現地人なんだな!?」
近寄る二人を余所に大柄な男が声を上げる
「いえぇす!接触時のブロックは入らなかったわ!安心して?」
「そうか、じゃあ楽しむとするか! ヤスタケ!ちゃんと周囲を見張っとけよ!」
「へいへい、俺は最後いいんで、団長達で楽しんでくだせぇなっ!
それにしても、メディは良い趣味してんよなぁ・・・普通同性ならいやがんべ?」
少し離れた位置から声が上がる。どうやらまだもう一人隠れて居たようだ。
「あらヤスタケ、そんな事無いと思うけど?失礼ね?
あたしは綺麗な物が汚れるのが好きなの、自分はごめんだけど、本当に見るのは滾る(・・)のよ」
「御大層な趣味でこって。へへへっ」
「さあてとぉ!よっと!」
「ぅ・・・あっ!」
遂にレイの服を掴んだ小柄な男が着物を乱暴に剥ぎ取って行く
「おっ下は何もつけてねぇのか?そそるねぇ・・・」
はだけた部分から露出する白い肌に目の色を変え始めた二人
(どうして!こんな!?GMは?・・・・いやだ!いやだ!)
悲鳴すら上げられない喉を鳴らし、レイは必死に抵抗するも
麻痺の状態異常に加え、男二人の膂力はレイを凌駕しており、抵抗は虚しく意味をなさない
遂にレイの着物が剥ぎ取られそうになった時、後ろからメディが声を上げる。
「ちょっと反応うすくない?痛み耐性持ちかもよ?リョウ、『アレ』やってみてよ」
「おけおけ」
手を止め、黒髪の男が詠唱を始める
『闇の精霊よ 偽りを 真なる闇で暴き出せ』 【スモール・ペイン・インベイション!】
レイの身体が黒い霧に包まれる
(なにこれ!?・・・きもちわるっ・・・・あっ!!!)
「あぁぁぁぁあああああっっ!!」
激痛が右足と肩から溢れ出す。
チリチリと脳が痛みを検知し、堪らず溢れる声
「大当たりね!これがなきゃねっ!」
口笛を鳴らしながら醜悪な笑みをメディが浮かべる
「へへっ!このほうが犯してるって感じがやべえよなあ!」
「おう!あっちじゃ捕まっちまうが、ここなら出来る・・・まさによぉ」
『『『最高のゲーム!』』』
(これじゃ・・・あの時と一緒・・・・僕はやっぱり・・・・まだ・・・)
痛みにかすれ行く意識の中、過去を幻視し始める
あの暗い部屋で向けられる悪意と視線
今向けられるそれら(・・・)はそれを彷彿とさせ、レイの瞳からは自然に涙が溢れ出す
「演出もこってんなぁ、やっぱラヴィは高いだけあるぜ・・・」
「俺なんて親に借金だぜ!」
「あぁ、リョウはジャパンのハイスクールだったものね?」
「動画とかじゃ味わえないこのリアルさ!最高に気持いいしな!
ほんとアレンの【阻害結界】さまさまだぜ!」
泣き始め、動かなくなったレイを見下ろしながら赤衣の集団は愉悦に浸る
「実際問題プレイヤーじゃGMが来ちまったからなぁ、この裏技はまだ見つかってねぇし
しばらくはこれでボロ儲け!しかもこんな上玉を好きに出来る!クエスト達成で金と経験値!
一石二鳥どろじゃねぇなあ!」
「っうぅ!!」
大柄な男が横たわるレイの腹部へ蹴りを入れる。
呼吸器がつまり、息が出来くなる。
「じゃあはじめっか!」
装備を外し始める男達
「今日は楽しんで朝に館に届けに行くぞ!おい!ちゃんとHPは確認しとけよ!
減ったら薬草と麻痺薬使うのわすれずにな!」
「あいよだんちょー!」
小柄な男がレイへと覆いかぶさろうとす。
「俺、一番の「おい!誰だ!俺達をっ・・・・・ぎゃっ!」・・・・ん?」
ごきり、と鈍い肉を断つ音が森の中に響く。
ガサッ!ガサッ!と一歩、一歩此処に居るぞと主張するかの如く
ゆっくりとその人影は段々と近寄る。
「おい!てめぇなにもんだ!俺達赤星の旅団に手ぇだして無事で済むと思ってんのか!?」
尚も歩を辞めない偉丈夫を警戒し、距離を取り始める赤衣の集団
「真田の名に誓い 振るうは我が拳」
「ちょっと!何言ってっ!・・・・ひぃっ!!ばけものっ!!」
女装をした偉丈夫が、身体の筋肉を漲らせ 阿修羅の如き面を出現させる。
「おどれらぁ!!生きて返さんぞ!!」
(まー・・・・ちゃ・・・・・・)
その偉丈夫を視界入れた途端に、レイは胸が暖まるのを感じ、緊張の糸が
途切れる様に意識を手放した。
一瞬見えた偉丈夫は、優しい瞳をレイへと向けていた。
「おい!近接だ!俺が抑える!詠唱入れ!」
大柄の男が手斧を取り出し、偉丈夫の対面に立つ
男二人はすぐさま大柄の男に隠れる様に動き、詠唱を開始
少し離れていたメディは弓を偉丈夫へと発射させた。
「笑止」
偉丈夫は後頭部に迫った矢を見ず(・・)に手掴みし、その巨躯を消し
闇の中から女性の悲鳴と肉を立つ鈍い音が響く
「っ!おい!詠唱まだか!?」
冷や汗を感じ始めた大柄な男が叫ぶ
【ダークショット!】 【ファイアボール!】
詠唱を終えた二人から、闇の球体と火球が偉丈夫へと襲いかかる
「ふんっ!」
偉丈夫が拳を振るうと、魔法は拳圧によってかき消され、霧散させられた
「うそだろ・・・・?魔法だぞ!?」
「耐えてみせよ 越えてみせよ 我が修羅の拳を」
ゆっくりと近寄って来る偉丈夫に圧力に焦りを感じたのか
小柄な男が短剣を構え突進し始めた。
「くそっ!くそっ!せっかく良いとこだったのによ!クソゲーかよ!!」
「おい!まて!魔法・・・・を・・・・」
後ろから飛び出した団員へ声をかけるも、小柄な男の背からは
太く逞しい腕が生えていた。
「ちっ!おい!アレン引くぞ!結界を俺達に張れ!」
アレンのユニークスキルである【阻害結界】
様々な事象を阻害する結界を張る事が出来、その使用方法は多岐に渡る。
最初は攻撃をまともに防げない物であったが、使い込み、習熟するに連れて範囲と能力を向上させた。
現在は半径10メートル程を半球状の覆う結界を作り出す事が出来、レイを襲う為に使用したのが
認識阻害の結界であった。
一度に展開出来る結界は一種類のみであり、範囲を広げると効果は下がり、逆に狭めると結界の
効力は上昇する。
大柄の男はアレンの能力を熟知しており、またアレンも大柄な男の指示に即座に対応を始める。
【阻害結界!】
対象を自身と団長に設定、効果は攻撃の阻害を選択
以前ダンジョンボスに追い詰められ、対象を狭めて使った際は、一撃で死亡していた攻撃を
何度も防いだ事の有る結界であった。
団長と呼ばれる大柄な男は、自身に結界が張られた事を確認し、声を張り上げる
「よし!引く・・・・ぞ?」
何発からもらうだろうが、逃げ切れると確信していた男の視界に、理解出来ない・・・
否、ありえない光景が去来する。
「レベル30のボスの攻撃を防ぐ結界だぞ・・・・おい」
震える手に気が付かないまま、大男はそれへと告げる。
アレンの首を持つ偉丈夫へと。
「あら・・・?なぁんか柔らかいのにあたったけど、何か塗ってたのかしら?
まぁクソ外道のわりには、良い色の血をしてるわね」
未だ修羅の如き面をした偉丈夫は、噴水の様に首から血を噴き出させ
ゆっくりと倒れるアレンを横目にしながら語る。
「んで、あなたがリーダー?」
「あぁ・・・そうだよ、化け物。」




