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小説の先にある世界  作者: 藤咲玲


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第78章:仕様変更のネゴシエーションと、半年スプリントの強制デプロイ

 「せ、せせせ、聖金貨……1億枚ぃぃぃぃっ!?」


 受付嬢の喉から、裏返った悲鳴が響き渡った。


 ギルド内の喧騒は完全にゼロ。聞き耳を立てていた周囲のベテラン冒険者たちも、手にしたジョッキや武器を床に落とし、そのまま文字通りフリーズ(機能停止)している。


 聖金貨。それは通常の金貨(1枚あたり100万円相当の資産)のさらに上に位置する、世界最高峰の超高額通貨であり、国家間の取引や歴史的なアーティファクトの売買にしか使われない伝説の貨幣だ。それが1億枚など、世界経済が確実に破綻する。


 受付のエレナが完全にキャパシティ(処理能力)をオーバーし、ぐるぐると目を回しながらカウンターへ沈んでいく。一般の窓口では処理不能(権限不足)と彼女の脳内ログ(思考)が判断した、まさにその時。奥の重厚な扉が開き、このギルドの最高責任者――ギルドマスターが青い顔をして、こちらへと足早に駆け寄ってきた。


「ア、アレンくん……! 冗談はそこまでにしてくれ! 聖金貨1億枚など、世界中の全財産をかき集めても足りん!」


「フッ……ようやく上のレイヤー(上級管理者)が出てきたか。いいだろう、ならば仕様変更(再交渉)だ」


 俺は(フンス)と特注の漆黒羽織の襟を正し、冷徹なシステム監査人(せこく図々しい)の視線をギルドマスターへと注ぐ。


「現実的なリソースにデノミネーションしてやる。――お前たちのレベルに合わせて、桁外れな要求を現実的な数字に修正してやるという意味だ。要求する基本報酬は、聖金貨30枚(30億円相当)。

 ただし――これには『システム要件(前提条件)』がつく」


 俺は懐から取り出した羊皮紙(追加仕様書)を、カウンター越しにマスターの眼前に突きつけた。


「黒曜龍討伐のメインプロセスは俺が単独で受け持つ。その代わり、以下の支援環境を完璧に構築・準備しろ。


 一、周辺地域からの避難誘導班の確立。

 二、万が一の負傷者に備えた救護班(バックアップ)の配置。

 三、戦域を維持するための討伐支援軍隊の編成。

 四、および俺の稼働を支える救援物資の常時供給。

 以上だ。メインは俺がやる。貴様らはその動作環境を整えろ」


 ギルドマスターは、提示された追加要件のあまりの生々しさに額から滝のような汗を流し、ガタガタと指を震わせた。


「な、何を言うんだアレンくん! 聖金貨30枚の予算確保も、それだけの規模の軍隊や物資の準備も、もはや一国だけで担えるものではない! 各国の同盟支援や予算申請、国際会議のプロセスを踏めば、どれだけ早くても最低『1年』はかかる……!」


「却下だ。1年も世界を放置すれば、パッチ(対処)が間に合わずに物理崩壊する」


 俺は漆黒羽織の裾を冷酷に翻し、ドスの利いた声をギルド全体に響かせた。


「――なら、半年でやれ。 期限は6ヶ月。あらゆる超法規的措置(特権アクセス)を使い、のマルチタスク(多国籍)で並行処理しろ。それが、俺がこの黒曜龍をデリート(討伐)してやる最低条件だ」


「は、半年で国際同盟軍の編成を……っ!?」


 カウンター越しに、不可能と言われたデッドライン(検討期間)を巡ってギルド上層部と激しく論理衝突(揉める)展開へ。


 周囲の冒険者たちも、国家や世界のシステム(経済)そのものを強引にハック(搾取)し、半年間のデスマーチ(突撃会議)を命じた漆黒の英雄の威圧感に、完全に言葉を失って硬直していた。


【クエスト進捗】:

 Sランク「黒曜龍」受託交渉:完了

 ⇒ 聖金貨30枚+国際支援環境の構築を命令

【開発期間《納期》】:

 6ヶ月(超短期スプリント指定)

【中二病充足率】:

 160%

(世界を相手にデスマーチを強いる黒の管理者)


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