第77章:超特級決済のキャッシュインと、不具合報告のログ
朝の光が差し込むギルド。昨夜デプロイした9件のマルチタスクの成果物をカウンターへ一括して吐き出すと、受付嬢のキャパシティは完全に上限を超えた。
「えええええっ!? 空間の歪みが消失……古代アーマーがスクラップ、さらに毒霧の飛竜まで……!? ひと、一人で一晩のうちに、本当に全部処理したんですか……っ!?」
悲鳴に似たログを吐き散らす彼女を(手のひらをヒラヒラ)とあしらい、俺はスマートにキャッシュインを要求する。
バックヤードの総出で行われたコードレビューの結果、提示されたリワードは、俺の想像を遥かに超える莫大な資産アセットだった。
「ア、アレンさん……こちらが今回の全依頼の合計報酬となります……!」
カウンターに積み上げられたのは、鈍い輝きを放つ大金貨と金貨の山。
【リワード獲得】:
大金貨3枚、金貨15枚
(銀貨450枚相当)
金貨15枚 = 1,500万円
大金貨3枚 = 3,000万円
合計 = 4,500万円
現代日本の感覚に換算すれば、およそ4,500万円。これまでの「銀貨数枚」というデッドラインの脆弱性から、一気に数段上の経済的階層へとレイヤーアップを果たした瞬間である。
ちなみに聖金貨は1億だ。
「ふむ、正当な出来高払いだな」
満足感と共に金貨をインベントリへ格納した俺は、そのまま懐から『1枚の不審なログ』を取り出し、カウンターへピシャリと叩きつけた。
それは、昨夜の依頼ボードに紛れ込んでいた、あのSランク依頼書――「黒曜龍」の【緊急隔離命令】だ。
「おい、決済のついでに一つバグレポートだ。この仕様書、明らかに設計が狂っているだろう」
「えっ……? あ、あああっ!? それ、ギルドマスターが間違えて一般掲示板に掲載しちゃった国家存亡レベルの超特級依頼……っ!」
顔面を蒼白にする受付嬢に対し、俺は冷徹なシステム監査のトーンでクレームを叩きつける。
「西南の古代遺跡で覚醒した黒曜龍の討伐、成功時はSSランク認定……。内容がおかしい。世界をフリーズさせる特大のグリッチに対して、設定されている基本リワードが完全に割に合わん。こんな低予算では、命のリソースを張って受託することなど論外だ」
「……え?」
俺の辛辣なコメントに、受付嬢が文字通りピキリとフリーズした。
彼女の脳内ログとしては「あまりの恐怖に怒っている」と解釈したのだろうが、俺の本音はただの『コスト対効果』の論理エラーに対する指摘だ。
「では、何か? 報酬が『十分』であれば、アレンさんはこの世界の終わりみたいな依頼を……受けてくださる、と?」
「当然だ。要はリクエストに対する対価の仕様。これ以外の、追加のインセンティブ次第だな」
「い、いやいやいや! 金額の問題じゃなくて、相手は神話級の怪物なんですよ!? 追加の報酬って、これ以上何を望むっていうんですか……っ!」
「クライアントの全財産を担保にしてもらうか、あるいは世界のシステムを根底からハックできるレベルのアセットでも用意してもらわねば割に合わんと言っているんだ」
カウンター越しに、金額のレイヤーを巡って受付嬢と激しく論理衝突展開へ。
周囲の冒険者たちも、決済直後に国家転覆級のバグを値踏みし始めた漆黒羽織の男を前に、完全に息を呑んで硬直していた。
【クエスト進捗】:
9件のマルチタスク、完全決済!
【現在の総資産】:
大金貨3枚、金貨15枚、銀貨数枚
(経済的レイヤーが大幅向上)
【中二病充足率】:
140%
(ギルドを巻き込んだ価格交渉)




