第75章:レガシーコードの強制破砕と、過剰装甲のデバッグ
迷宮の空間バグをアイロンがけした俺は、そのままの足で隣国アルカディアとの国境付近へと座標を移動させた。
次のタスクは、Aランク依頼の2件目――「古代の呪術アーマー」の破壊だ。
数百年前に破棄されたはずのレガシーアーマーが、何らかのグリッチで再起動し、周囲の物流ラインを脅かしているらしい。
「大層な鉄くずが、往来を遮断しているな」
荒涼とした国境の丘。そこに、赤黒い呪怨のノイズを排出しながら佇む、全高3メートルはあろうかという巨大なフルプレート・アーマーがいた。
俺の接近を検知した瞬間、アーマーの頭部スリットが赤く発光し、身の丈を超える大剣を引き抜きながら、地響きを立てて突進してくる。
一般的なパーティであれば、前衛が盾で衝撃を分散し、後衛の魔導士がデコンパイルを試みる実質的な高負荷プロセスだ。
だが、俺の空間操作のログに言わせれば、ただの「重すぎる物理アセット」に過ぎない。
「フッ……レガシーシステムが、現代の最新フレームに勝てると思ったか?」
俺は背中のカスタム大刀の柄に手をかける。
先ほどの迷宮で身に付けた「孤独な上位調停者」のロールプレイをキャッシュしたまま、わざわざ大刀を抜く瞬間のモーションエフェクトを空間の屈折率ハックで0.5秒ほど遅延させ、極限まで格好良くセルフパッチを適用する。
※ 観客席は、やはり国境の荒野なので完全な空席だ。
大剣が俺の脳天を叩き割る寸前、俺は空間操作を発動。
アーマーの持つ大剣の質量、および突進の運動エネルギーのベクトルを、そのままアーマー自身の『内側』へとリダイレクトさせて固定する。
そこへ、最速の抜刀――ただの物理的な一撃を叩き込んだ。
「――『圧壊』」
ギギィィィンッ……!!!
内側からの自重反転と、俺の大刀から放たれた空間の圧縮圧力が完全に同期した。
古代の呪術アーマーは、自らの過剰な装甲値を処理しきれなくなり、内側からペシャンコに潰れ、凄まじい金属音と共にただの平たい鉄くずへとスクラップ化した。
「ふむ、演算通りの物理破砕だな。装甲をいくら厚くしようが、システム自体の脆弱性をハックされれば一撃だ」
俺は流れるような動作で大刀を鞘へと納め(ここでも0.5秒の残像エフェクトを無駄に付与)、飛び散ったドロップアイテムをアイテムボックスのインベントリへと全スタックした。
「セカンドステージも極めて順調。残るAランクプロセスはあと1件――家畜を脅かす『毒霧のワイバーン』の暗殺のみだな」
漆黒羽織の裾を優雅に翻し、俺は夜霧の立ち込める次なる座標(被害のあった村の山林)へと、音もなく姿を消した。
【クエスト進捗】:
Aランク②:古代の呪術アーマー
(物理破壊完了)
【中二病充足率】:
125%
(演出エフェクトの自作により微増)
【次なるターゲット】:
Aランク③:
毒霧の飛竜
(隠密暗殺)




