第70章:支払猶予の土下座パッチと、破綻寸前の分散処理
西南の隣街へ到達した俺は、まず生存のためのセーフハウスを確保するプロセスに入った。
短期的なキャッシュフローを考慮し、10日間の滞在枠を予約。だが、ここで現世の厳しい物理ロジックが俺のフロントエンドに牙を剥く。
「……前金として銀貨5枚を支払う。残りのリソースは後日、必ずやキャッシュバックしてみせよう」
俺は宿の主人に対し、東洋の神秘にして最強のデバフ解除パッチ――『土下座』という儀式を厳かに執り行った。
プライドの減衰など、合理的な生存戦略の前には些細なエラーログに過ぎない。主人の呆れ顔を引き換えに、どうにか10日間のルート権限を奪取することに成功した。
猶予は10日。即座に資金流動性を改善すべく、俺はダッシュで冒険者ギルドへとエントリーした。
掲示板の前に立った俺は、思考リソースの演算を一切挟まず、目の前にある依頼書をランダムサンプリングに10枚、バリバリと豪快に剥ぎ取る。
「えっ!? ちょっと、アレンさん!? 一人で10枚なんて規定違反ですし、そもそも無茶ですよ!」
受付嬢がエラーログを吐いたPCのように目を見開いてびっくりしている。だが、大丈夫だ。俺のステータスは無限に近い。
「問題ない。仮にプロセスの処理が不可能な場合は、規約通りのペナルティを全てこちらでプロキシすると言い渡す」
クールに言い放ち、ギルドの処理サーバーのフリーズを置き去りにして宿へと帰還。
さあ、効率的なマルチタスクのルーティングを組もうと、机の上に剥ぎ取った10枚のタスクを並べた。
――その瞬間、俺の論理回路が完全にフリーズした。
【タスク一覧】
・Aランク:3枚
・Bランク:2枚
・Cランク:3枚
・Dランク:1枚
・Sランク:1枚 ─── !?
「……あぁ」
思考のスタックオーバーフロー。
完全に、バグったかもしれない。
最高位の特異災害クラス(Sランク)が、無作為サンプリングのノイズに紛れ込んでいた。
銀貨数枚の男が受けていいタスクではない。
【クエスト進捗】:
未着手(タスク10件ホールド)
【生存フラグ】:
絶望的なエラーコード
(Sランク検出)
【現在の精神状態】:
ウラシマ効果で過去に戻りたい




