第69章:無名国の変身プロセスと、隣街への経済的デプロイ
旅のリソース・デプロイを完遂した俺は、いよいよこの街を離れるフェーズへと移行する。
目指すチェックポイントは、ここから西南に位置する隣街だ。そこに一度、一時的なデバッグセーフハウスを構築する予定である。
ちなみに、その隣街からさらに西南へと座標を進めると、高度な魔術文明を誇る「魔法帝国アルカディア」の領域へと突入する。隣国の基本データに関しては、すでにギルドのアーカイブから最低限のログを引き出し、脳内にインポート済みだ。
なお、俺が今いるこの国家だが、公式な名称はともかくとして、俺の脳内データベースには『無名国』というコードネームで仮登録してある。
理由? そっちの方が圧倒的にクールだし、物語のプロローグっぽくて俺の精神的バッファが潤うからだ。それでいい。
では、なぜアルカディアへ直行せず、わざわざ隣街に一時的拠点を設けるのか。
理由は極めてシンプルであり、かつ男のロマンの根幹に関わる重大なシステムのためだ。
「今の俺の姿は、あくまで初期段階の仮初めの記述に過ぎない。……隣街へ到達した瞬間、俺は真のヒーローへとアカウント切り替えを果たすのだ」
特注の漆黒羽織に身を包み、大刀を背負った俺が、世界のバグを狩る影の執行人として覚醒する――そんな壮大な変身プロセスを演出するために、あえて別の街をプロキシにする必要があるわけだ。
(……まぁ、本当の理由を9割ほど削ぎ落として論理デバッグすると、単純にこの段階で直行すると移動費と設備投資で『手持ちの資金が完全に底を突く』からなのだが)
キャッシュの枯渇は、システムの強制シャットダウンを意味する。まずは隣街で低リスクなクエストを回し、短期的なキャッシュフローを改善せねばならない。
綺麗に丸め込まれた中二病の言い訳を胸に、俺は無名国の門へと向かって、スマートに足を進め始めた。
【現在地】:無名国・国境付近
【目的地】:西南の隣街
(一時的デバッグ拠点)
【総資産】:銀貨数枚
(危険水域・要資金調達)




