第66章:クナイとアルミナの最適化装備
食料のスタックを完了した俺が次に向かったのは、いつもの鍛冶屋だ。旅に出る以上、物理的な迎撃・処理プロセスを最適化するためのハードウェア、すなわち武器と防具のアップデートは外せない。
暖簾を潜ると、相変わらず不機嫌そうな顔をした親父が、火床の前でハンマーを握っていた。
「親父、頼んでおいたカスタムパーツの回収に来た」
カウンターに無造作に置かれたのは、俺の設計思想をそのまま形にした、異形のツイン・ダガー。
基本形状は、投擲時の空気抵抗と貫通力に優れた東洋の「クナイ」。だが、そのヒルトの部分には、人間工学を無視して指を通すための強固なホールが4つ穿たれている。
近接格闘(CQC)における最凶の打突器具、メリケンサックのハイブリッド構造だ。
「殴る、切る、刺す、の全レンジに対応したマルチバリアント・ウェポン。
人型エネミーや小型獣とのクローズド・クォーター(狭所)における格闘フレームにおいて、これほど手数のバリエーションを担保できる刃物はないからな」
さらに重要なのは、その刀身の仕上げだ。表面には、世界に存在する超硬質素材から抽出した酸化アルミニウムによる薄膜技術、すなわち『アルミナコーティング』を施してある。
これにより、耐摩耗性と防錆性は極限まで跳ね上がり、血脂による切れ味のデバフを完全にシャットアウトする。
仕上がりを確かめるように、両手に持った一対の異形クナイを逆手に構え、親指でそのアルミナの黒い肌をそっとなぞる。
鉄の匂いと、静まり返った鍛冶屋の空間。窓の外を見やれば、夕闇が迫り、薄赤い月が昇り始めていた。
ふっ、と脳内のスイッチが、一回りする。
懐かしい「あの頃のローカルバッファ」に接続される。
「……今宵の月は、血に飢えているようだ」
ふと口を突いて出た完璧な中二病(黒歴史)フレーズ。
「あぁ? 何だって?」
親父が怪訝そうに耳を傾ける。
「いや、なんでもない。環境光のスペクトルが波長の長い赤色にシフトしている、というただの光学的な私見だ。……完璧な仕事だ、親父。これで『世界の仕様』を狩りに行く」
俺は代金をスマートに決済すると、完成したばかりの凶器をアイテムボックスのインベントリへ「スッ」と格納した。
背後で親父が「おいアレン! 服は買っていかねぇのか! 聖女様が『あの見窄らしい服をどうにかして!』って泣きながら街の仕立て屋の全在庫を買い占めてたぞ!?」と叫んでいたが、そのノイズが俺の耳に届く前に、俺は既に次の座標へと歩き出していた。
【武器】:アルミナコーティング・ナックルクナイ×2(新規取得)
【防具】:(※要選定・アップデート待ち)




