第32章:剣術修行編 最適解としての装備
演習での動きが洗練されていく中で、ガルド教官は突然、剣術の型から離れて私を街の装備屋へと連れ出した。
「戦い方は理解した。だが、アレン、貴様は道具選びの基準を間違えている」
店内に並ぶ革鎧や鎖帷子、そして多様な形状の剣を前に、俺は思考を巡らせる。これまでは「魔力を効率よく流す」ための軽装ばかりに目が行っていた。
「いいか、防具に金を惜しむのは、自らの命を安売りするのと同じだ。最上の防具は、一撃を許しても致命傷を回避し、反撃の機会を我々に与える。それは単なる防御ではなく、攻撃を完遂するための必須条件だ」
教官は俺の体型と動きを確認し、一組の堅牢な革製のチェストアーマーと、要所に鉄板を仕込んだ篭手を手に取った。
一見して重厚だが、関節部の可動域を一切殺していない。重心を体幹に集中させるための精密な設計だった。
「そして剣だ。長い剣はリーチで優位に立てるが、懐に入り込まれた時の回転が遅い。逆に短い剣は、接近戦では無敵だが、間合いの外からは手も足も出ない」
教官は二振りの剣を並べた。
ロングソードと、短めのブロードソード。
「己のリーチと、得意とする間合い、そして想定する敵のサイズ。それら全てを計算し、最も『ロス』のない長さを選べ。武器は身体の延長だ。扱いきれない長さを誇るな」
俺は教官の言葉を噛み締め、手持ちの資金のほとんどを投じて、機能美を極めた防具と、手に馴染む重心の剣を選び抜いた。
装備を身に着けると、重さが身体にフィットし、むしろ身軽にさえ感じる。高い買い物だったが、これこそが「効率」の答えだ。
「投資した分、必ず生き残って回収しろ。それがプロの装備術だ」
店を出る際、教官の言葉が背中に刺さる。
魔法の知識に頼り、安易な解決策を求めていた頃の俺はもういない。道具一つにも理由があり、それを管理する責任がある。
俺は新しい装備の重みを確かめながら、戦場での立ち回りを脳内で再構築した。次は、これら全てを実戦――対人戦や、あるいは未知の脅威である獣との対決で試す時だ。




