第26章:剣術修行編 剣術講義、その厳しき現実
学園の演習場に、鈍い衝撃音が連続して響く。
俺はベテラン教官ガルドの前に立っていた。元騎士団長だという彼の前には、他の学生たちが整列し、交代で型を披露している。いよいよ俺の番が回ってきた。
ガルドは何も言わず、木剣を構えた。俺は見よう見まねで、腰を落とし、教官の構えを模倣する。
「……構えがなっていない」
教官の乾いた声と同時に、脇腹に鈍い衝撃が走った。木剣の峰で叩かれたのだ。
痛みが肩から肘へと伝わる。俺は反射的に剣を振り回すが、ガルドは最小限の動きでそれを避けると、今度は俺の手首を打ち抜いた。
「防御が遅い。剣筋が読まれていることにすら気づいていないのか」
ガルドの木剣が、俺のガードを易々と弾き飛ばす。
俺の動きは、ガルドから見れば「ただの素人」に見えるのだろう。教官が示す重心移動や、足の踏み込み。一度見せられただけの動きを、俺は必死にトレースする。しかし、踏み込もうとすると、どうしても足がもつれる。
魔法を禁じられた演習場では、俺の持つ知識や計算能力など、この圧倒的な経験値の前では何の意味も持たなかった。
「……もう一度、お願いします」
俺は息を切らし、構え直す。
ステータスウィンドウが視界の端で光るが、今の俺には何の役にも立たない。体力が15だろうと力(15)だろうと、剣術の「型」という基礎が身についていなければ、ただの壊れやすい肉の塊だ。
ガルドは容赦なく打ち込んでくる。
防御するだけで精一杯だ。魔力循環を維持しようとする集中力すら、この身体的な負荷の前では維持が困難になりつつある。
魔法は奇跡ではない、という理論は正しい。
だが、剣術もまた魔法ではない。積み上げた時間と、数千、数万回の反復の上にしか成立しない、極めて泥臭い技術の蓄積だった。
俺は一時間足らずで、全身打撲に近い状態になった。
かつて自分が書いた小説の設定のように、一足飛びに強くなることなどあり得ない。現実の厳しさが、今の俺を容赦なく叩き伏せている。
周囲の学生たちが、苦悶の表情を浮かべる俺を見てひそひそと笑っているのが聞こえる。だが、そんなことはどうでもいい。
ガルドの剣の軌道だけは、脳裏に焼き付いている。
まずはこの「素人」の身体を、最低限の剣士の肉体へと作り変えなければならない。




