第20章:魔法学園編 第10話:魔法の未来と「アレン」の変革
「全10回にわたる特別講義も、今日が最終日だ」
静まり返った講堂。初日のような反発や困惑は、もはや誰の顔にもない。講師が教壇から見下ろす生徒たちの眼差しは、魔法という名の神秘ではなく、真理を渇望する探求者のそれに変わっていた。
「この9日間で、私は諸君が信じてきた常識を徹底的に破壊した。15歳で止まるマナの限界、詠唱という名の無駄なプロセス、杖への過剰な依存、そして属性魔法の非効率さ。ローブの神話すらも否定した。君たちのプライドはズタズタかもしれない。だが、それは空っぽになった器に『未来』を注ぎ込むための儀式だった」
講師は黒板にただ一言、『理解』と書いた。
「彼は世界の物理法則、重力や熱力学、空間の成り立ちを『理解』し、その理に最小限のマナを流し込んで結果を書き換えている。杖というオペアンプも、詠唱という外部メモリも必要としない。なぜなら、彼の脳と肉体そのものが、世界と直接リンクする最高精度の演算装置として最適化されているからだ」
講師の声が講堂に響き渡る。
「諸君のマナの総量は15歳でピークを迎える。内包型のエネルギーとして、それは変えられない生命の限界だ。しかし、絶望するには及ばない。魔法を構築する『世界の法則への理解』と『プロセスの最適化』には、一生涯、限界というものが存在しないのだから」
ダンッ、と教壇を力強く叩く音が鳴る。
「現代魔法の枠を打ち破れ。四大元素のその先、失われた『法則系』の魔法は、神の奇跡ではなく、極限まで最適化された科学の果てにある。高価な杖に頼るな。冗長な言葉にすがるな。世界そのものを観察し、その歯車の構造を解き明かせ。それこそが、君たち自身の力で次世代の魔法を切り拓く唯一の道だ」
講師は黒板の文字を全て消し、静かにチョークを置いた。
「真の魔導師への扉は、今開かれた。これからの君たちの研鑽に期待する。……全講義を終了する」
講義終了の鐘が鳴っても、誰一人として立ち上がろうとはしなかった。沈黙の後、やがて万雷の拍手が講堂を包み込んだ。生徒たちの手にはもはや、見栄えのために飾り立てられた杖は握られていなかった。




