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小説の先にある世界  作者: 藤咲玲


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第148章:【学園学食の日常】

クラス分けが発表され、私――シャルロットとニーナはAクラス、ソフィアとリゼットはBクラスとなった。


クラスこそ離れてしまったものの、授業以外の時間や放課後は、自然といつもの4人で集まって過ごしている。


そして、やってきた昼食の時間。


私たちは学園が誇る広大な大食堂へと足を運んでいた。


「――見てちょうだい、今日のメニューもなかなかの充実ぶりですわね」


この学園の学食は少々特殊だ。毎日日替わりで異なるメニューが提供され、その月ごとの献立表が事前に発表される仕組みになっている。噂によれば、これは姿を現さない例の理事長様の強い拘りらしく、*『学生の健やかな成長と探究心のため、学食のメニューは毎日異なるべきである』*という理念のもと運営されているのだとか。


(ふぅ……調理師の方々の苦労を思うと、少々大変すぎやしませんかしら?)


メニューは毎日のセットメニュー(Aセット・Bセット・Cセット)に加え、単品メニューが3種類、さらに日替わりのデザートまで自由に選べる仕様になっている。


支払いは学園の受講証を通す形の後払いで、月締めで各実家へ一括請求される仕組みだ。そのため、実家の財力に物言わせる貴族の生徒たちが金額を気にする必要は基本的にない。


「あ、あの……シャルロット様。私、Cセットのパンとスープだけにしようかと思います……。実家に請求がいった時、お父様の顔が青ざめそうで……っ」


「ニーナ、何を言っているの。特待生である貴女の食事代くらい、学園の奨学金枠でちゃんと控除されますわ。しっかり栄養を摂りなさいな」


「ひぇっ、本当ですか……!? よ、よかったぁ……」


おどおどとトレーを持つニーナをなだめつつ、ソフィアとリゼットも合流して料理を選び終える。


学食の内部は圧倒されるほど広い。6人掛けの立派な木製テーブルが整然と並び、端から端までは100メートル近くありそうな大空間だ。昼時ともなれば数百人の生徒でごった返している。


「シャルロット様、あちらの席が空いていますわ」


ソフィアが差し示した中央寄りのテーブルへ向かおうとした時――ふと、私の視線が食堂の『端』にとまった。


喧騒から離れた窓際の静かな席。

そこに、ポツンと一人で座っている生徒がいた。


――あの、新入生代表のアレン。


仕立ての良い制服を綺麗に着こなし、端正な顔立ちを崩さず、静かにスープを口へ運んでいる。周囲の生徒たちは彼の漂わせる圧倒的な近寄りがたさに気圧されているのか、一定の距離を保って誰一人近寄ろうとしない。


「……あの方、いつも一人でお食事をとっていらっしゃるの?」


私が小さく呟くと、Bクラスの事情に通じているリゼットが小声で教えてくれた。


「ええ。Bクラスでも噂になっていますわ。講義が終わるとすぐに姿を消してしまって、誰とも交流を持たないのだとか。休み時間もずーっと難解な手記を読み込んでいるそうです」


「友達がいらっしゃらないのかしら……? あんなに端正なお顔立ちで、生徒会業務も完璧にこなしていらっしゃるのに」


ソフィアも不思議そうに首をかしげる。


(多忙を極める生徒会の重責を背負い、一人静かに孤独に耐えながら食事をとる優等生……)


私の目に映る彼は、まさに学園の影の功労者であり、孤高の天才そのものだった。


まさか彼が、「一人で静かに自著(『小説の先の世界』)の展開について思いを巡らせながら、優雅に学食のBセットを楽しんでいるだけ」だとは、この時の私は知る由もなかったのだ。


「……少し、気になりますわね」


私は扇の端で唇を隠しながら、遠くの席でポツンと一人、完璧な作法でパンをかじる彼の姿を、じっと見つめてしまうのだった。


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